第67回カンヌ国際映画祭脚本賞、第72回ゴールデン・グローブ賞外国語映画賞を受賞した、ヒューマンドラマ。権力を振りかざして横暴な土地買収を進める市長に立ち向かう、ある自動車修理工場経営者の男の姿を見つめる。メガホンを取るのは、『ヴェラの祈り』『エレナの惑い』などのアンドレイ・ズビャギンツェフ。『マネー・ピラミッド 札束帝国の興亡』などのアレクセイ・セレブリャコフや『エレナの惑い』などのエレナ・リャドワらが出演する。濃密な人間模様と荒涼としたビジュアルの融合に圧倒される。
あらすじ:ロシア北部の小さな町で、自動車修理工場を経営しているコーリャ。住み慣れた家で、妻リリア、先妻との息子ロマと生活していたが、市長のヴァディムが彼の土地を買収しようとする。権力を武器に自分の土地を容赦なく奪おうとするヴァディムに激しい怒りを覚えたコーリャは、モスクワから友人の弁護士ディーマを呼んで市長の悪事を暴露して徹底抗戦に挑む。やがて両者の攻防は激化し、思わぬ事態を引き起こす。
<感想>祖父の代から受け継いだ土地や家屋を略奪されようとしている、自動車修理工のコーリャによる、資本主義の市長へのドン・キホーテめいた抗を軸に、アンドレイ・ズビャギンツェフ監督の最新作は展開される。
それが、コーリャと弁護士の会話や、コーリャ側の訴えをあっさりと棄却する女性裁判官による早口の判決など、どうみても市長が裏から手を差し伸べて指図をしているようなのが分かる。
コーリャの弁護士が、市長の過去の悪事を曝露すると脅すも、市長の差し金でチンピラたちを使い弁護士を殴り痛めつけ、命が惜しければモスクワへ早く帰れと脅すのだ。
悪役である太った市長が画面上で、来年の選挙に早くも不安を募らせるのだが、市長の部屋の壁にはプーチンの写真が飾られており、市長と背後の権力者が二重写しになるなどこだわりも見られる。
弁護士とコーリャの美人の妻の関係は、ホテルへ彼女が出向いて男女の関係になってしまう。その後も、続いているような、コーリャの警官友達の誕生日の河原での射撃でも、2人はこそこそと夫に隠れて逢い、抱き合い、それに感づいたコーリャが弁護士と妻を殴ってしまう。
とんでもないことで、主人公の土地の権利を主張する訴訟を起こすために呼んだ弁護士と、まさか自分の愛する妻がそんな関係になろうとは思っても見ないことで。
主人公の親父は根は善人なのだが、かなり頭が悪い上に酒飲みで品がなく、そんな風情が物語の進み方に拍車がかってくる。それでも惹きつけるのが、妻役のエレナ・リャドワの憂いのある美しさであろう。
彼女が何故浮気をしたのか、何となく女なら解る気もする。最後が、妻は自殺なのだが、夫のコーリャが妻殺しで捕まり、15年の刑に服すという。それに、ショベルカーの衝撃なコーリャの自宅を破壊する場面で終わる。
残された先妻の息子ロマが、後妻のリリアに懐かなく乱暴な口をきき、学校へも登校拒否。それに、悪ガキと廃墟で遊んでいるのだ。年頃の男子は、手が付けられない。父親がもっと間に入って家族を作ろうと努力しないと。妻のリリアは子供が欲しいと願っているのだが。
宗教的哲学的なテーマを含んだ、人間ドラマを迫力あるサスペンスタッチで描いている。名の知られていない俳優たちが、それぞれ適役を好演している。映像は美しく、海岸に打ち寄せられた巨大な怪獣の遺体のイメージは強烈で、これはクジラの骨なのか、作品のテーマを雄弁に物語っているかのごとくである。
不法な立ち退きを迫る市長の悪どさに抵抗する主人公一家。そればかりでなく、家族の中に波風が立ち不穏な空気に陥る展開は、まことに不条理きわまりない。まさに、邦題にぴったりの物語であり、過酷な世の摂理をまざまざと見せつける内容に胸が締め付けられそうになるのだ。
2015年劇場鑑賞作品・・・257映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング
あらすじ:ロシア北部の小さな町で、自動車修理工場を経営しているコーリャ。住み慣れた家で、妻リリア、先妻との息子ロマと生活していたが、市長のヴァディムが彼の土地を買収しようとする。権力を武器に自分の土地を容赦なく奪おうとするヴァディムに激しい怒りを覚えたコーリャは、モスクワから友人の弁護士ディーマを呼んで市長の悪事を暴露して徹底抗戦に挑む。やがて両者の攻防は激化し、思わぬ事態を引き起こす。
<感想>祖父の代から受け継いだ土地や家屋を略奪されようとしている、自動車修理工のコーリャによる、資本主義の市長へのドン・キホーテめいた抗を軸に、アンドレイ・ズビャギンツェフ監督の最新作は展開される。
それが、コーリャと弁護士の会話や、コーリャ側の訴えをあっさりと棄却する女性裁判官による早口の判決など、どうみても市長が裏から手を差し伸べて指図をしているようなのが分かる。
コーリャの弁護士が、市長の過去の悪事を曝露すると脅すも、市長の差し金でチンピラたちを使い弁護士を殴り痛めつけ、命が惜しければモスクワへ早く帰れと脅すのだ。
悪役である太った市長が画面上で、来年の選挙に早くも不安を募らせるのだが、市長の部屋の壁にはプーチンの写真が飾られており、市長と背後の権力者が二重写しになるなどこだわりも見られる。
弁護士とコーリャの美人の妻の関係は、ホテルへ彼女が出向いて男女の関係になってしまう。その後も、続いているような、コーリャの警官友達の誕生日の河原での射撃でも、2人はこそこそと夫に隠れて逢い、抱き合い、それに感づいたコーリャが弁護士と妻を殴ってしまう。
とんでもないことで、主人公の土地の権利を主張する訴訟を起こすために呼んだ弁護士と、まさか自分の愛する妻がそんな関係になろうとは思っても見ないことで。
主人公の親父は根は善人なのだが、かなり頭が悪い上に酒飲みで品がなく、そんな風情が物語の進み方に拍車がかってくる。それでも惹きつけるのが、妻役のエレナ・リャドワの憂いのある美しさであろう。
彼女が何故浮気をしたのか、何となく女なら解る気もする。最後が、妻は自殺なのだが、夫のコーリャが妻殺しで捕まり、15年の刑に服すという。それに、ショベルカーの衝撃なコーリャの自宅を破壊する場面で終わる。
残された先妻の息子ロマが、後妻のリリアに懐かなく乱暴な口をきき、学校へも登校拒否。それに、悪ガキと廃墟で遊んでいるのだ。年頃の男子は、手が付けられない。父親がもっと間に入って家族を作ろうと努力しないと。妻のリリアは子供が欲しいと願っているのだが。
宗教的哲学的なテーマを含んだ、人間ドラマを迫力あるサスペンスタッチで描いている。名の知られていない俳優たちが、それぞれ適役を好演している。映像は美しく、海岸に打ち寄せられた巨大な怪獣の遺体のイメージは強烈で、これはクジラの骨なのか、作品のテーマを雄弁に物語っているかのごとくである。
不法な立ち退きを迫る市長の悪どさに抵抗する主人公一家。そればかりでなく、家族の中に波風が立ち不穏な空気に陥る展開は、まことに不条理きわまりない。まさに、邦題にぴったりの物語であり、過酷な世の摂理をまざまざと見せつける内容に胸が締め付けられそうになるのだ。
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