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雪の轍 ★★★

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第67回カンヌ国際映画祭パルムドールを受賞した、現代トルコ映画界をけん引するヌリ・ビルゲ・ジェイラン監督による人間ドラマ。世界遺産カッパドキアを舞台に、ホテルのオーナーで元舞台俳優の主人公と美しい若妻との生活、出戻りの妹との愛憎、家賃を滞納する聖職者一家とのいざこざを描く。『ウォリスとエドワード 英国王冠をかけた恋』などのハルク・ビルギナーらが出演。雪に閉ざされたホテルの中で、次第に明らかになっていく登場人物たちの感情が観る者を作品の世界に引き込む。
あらすじ:世界遺産カッパドキアの「オセロ」というホテルのオーナーである元舞台役者のアイドゥン(ハルク・ビルギナー)は、若くてきれいな妻と、離婚して出戻ってきた妹と生活していた。思い通りに暮らす毎日を送っていたものの、冬が訪れ雪に覆い尽くされたホテルの中でそれぞれの内面があらわになっていき、互いに感情をぶつけ始める。さらに、アイドゥンへの家賃を払おうとしない聖職者一家との関係が悩みの種で……。

<感想>トルコの観光地として知られるカッパドキアだが、一度は観光で訪れて見たいものだ。ユネスコの世界遺産にも登録されているカッパドキアは、自然と人工の見事な合作といわれる。太古の昔、この地方に降り積もった火山灰が、広大な地域にキノコの群生のような奇岩怪石郡を生んだのである。

そこに、迫害を逃れてやってきたキリスト教徒たちが住みつき、岩山を掘って住居や教会をつくった。火山灰でできた岩山は掘りやすく、洞窟内は、冬は暖かく、夏は涼しくと好都合だったのだ。

二十世紀になって「自然と人工の融合」カッパドキアは、世界有数の観光地となったが、今でも洞窟住居で暮らす人もいる。近年は岩山を掘った洞窟ホテルも多く作られ、早朝、夕暮れ時には、ホテルのテラスから眺める岩山郡は、異なる星に舞い降りたかのように幻想的な光景であります。

物語は、主人公のアイドゥンは舞台俳優として脚光を浴びた後、後の半生をカッパドキアの洞窟ホテル「オセロ」のオーナーとして生きることを選んだ男である。カッパドキアの土地や家屋は父親の遺産だから、彼は若く美しい妻と、出戻りの妹と、夫婦者の使用人とともに、安楽に暮らせる身分なのだ。

外は銀世界が広がり、宿泊客も減ってくる冬の洞窟ホテルの一室で、アイドゥンは若い妻と出戻りの妹と、長い話を続ける。長い会話は退屈なようでいても、いつしか引き込まれていく。
3時間16分という大作は、仕事とは、結婚とは、財力とは、慈善活動とは、そして人生とは何かという重いテーマを投げ掛けて来るのだが、重苦しい気分にならないのは、まばゆいばかりの銀世界のせいであろう。

ホテルの客として登場する一人旅のライダーや、わさびについて語る日本人カップルも軽い息抜きとなる。

物語の中に絶望的なバイプレイヤーも登場する。それは、主人公アイドゥンの借家人で、世をすねた男は、夫の資産で慈善活動に熱中するアイドゥンの若い妻の甘ったるい善意を、札束を火に投げ入れることで踏みにじるのだ。こんな付き合い難い人物と遭遇するのも人の世の現実である。

要キャラクターとなる男女3人が、とにもかくにも鼻持ちならないタイプ。
夫婦そして妹との間で激しく口論が繰り返される。そんな連中が揚げ足取りに精を出すのだ。ああ言えばこう、相手の全存在を否定するごとき言葉、会話を196分に渡って延々と聞かされる。ただただ圧倒されます。
しかし、そうした闇がジワジワと見ているこちら側にも伝わってくるのだ。部屋に閉じこもって罵り合ってばかりいる3人を、煙を焚いて炙り出したくなる。
亡びゆく有閑階級の閉塞感、鬱屈はまさにチェーホフの世界である。彼らが外部の人間と接した時に、ドラマは思わぬ展開を見せるのです。
2015年劇場鑑賞作品・・・203映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング

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