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彼は秘密の女ともだち ★★★.5

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『スイミング・プール』『危険なプロット』などのフランソワ・オゾン監督が、偽りなき自分を受け入れ自分らしく人生を歩む勇気を問い掛けるドラマ。親友の死をきっかけにその夫の秘密を知った平凡な主婦が、奇妙な友情を育む中で人生を輝かせていくさまを描く。主人公を演じるのは、『間奏曲はパリで』などのアナイス・ドゥムースティエ。彼女の友達を『真夜中のピアニスト』などのロマン・デュリスが演じるほか、『黒いスーツを着た男』などのラファエル・ペルソナーズらが共演。
あらすじ:親友が死去し気を落としていたクレール(アナイス・ドゥムースティエ)は、残された夫ダヴィッド(ロマン・デュリス)と赤ん坊の様子を見るために彼らの家に行くと、亡き妻の服を着て娘の世話をするダヴィッドに出くわす。彼から女性の服を着たいと打ち明けられ困惑するクレールだったが、やがてダヴィッドをヴィルジニアと呼び夫に内緒で交流を重ねるうちに、クレール自身も女性としての輝きが増していく。

<感想>この映画の主人公である夫ダヴィッドに扮しているロマン・デュリスは、妻に死なれて喪失感をおぼえ、妻の洋服を着て化粧をして赤ん坊をあやすという、一見奇妙な行動をとるもんだと思いました。けれども、身近な人を失った時には、その人の生きてきた時間と空間を、誰かと共に再現したくなるものだろう。
例えば死者について身近な友人なり親族に話たり、映像を見たりして、かつて存在した温かな体温と息づかいについて思い出さずにはいられないから。

しかし、亡くなった妻の親友であるクレールにも、2人は7歳の時に出会い、手の平を切って血まみれでぴったりと合わせて永遠を誓いあうほどの特別な仲だったのだ。
だから尚のこと、心配して家を訪ねてみたら、夫・ダヴィッドの男の肉体の表面に余りにも生き生きと蘇った親友のローラの顔や、微笑み、豊かなあの金色の髪を見てしまい。
どうやら、クレールは親友のローラへの想いは、友情の柵を越え女鹿のように軽々と飛び越えているようだ。精神的にはどうも同性愛者でローラを愛していたが、肉体は異性愛者であり一応男性と所帯を持っているのだ。そんな彼女の目の前に、男の肉体を持ったローラがまるで亡霊のように復活してきたのである。

妻を亡くした夫のダヴィッドも、結局はクレールの存在を受け入れるわけ。生きていた時の妻の素晴らしさを、喜びと輝きをもって再現しあえる相手は彼女をおいていなかったからなのだ。夫のダヴィッドは、妻の死と共に抑えていた女装趣味が蘇ったと言う設定なので、アメリカその他、同性愛婚が認められようになった時代でも、異性装には何故か偏見があり、そんな男を愛してしまうクレールは大変ですが、その感情の起伏に説得力が欲しかった気がした。
やがては二人の関係も抜き差しならないものになっていくのだ。確かに、愛する死んだ妻と同化することで、「女の人生の良さ、男としては許されない生き方」を発見して、次第に違う生活に踏み出して行く。一般的には、夫のダヴィッドのことを変態、病気、という捉え方もあったようですが、クレールがダヴィッドに女の名前「ヴィルジニア」をつけて受け入れようとする。と同時に女装をした「ヴィルジニア」をからかいながら優越感を覚えるんですね。

しかしですよ、装うことで開花していくダヴィッドに影響されて、イケメンな夫・ジルの貞淑な妻だったはずのクレールまでもが、自分の心の中に秘めていた自意識過剰なほどに本能に目覚めていくのには唖然とする。ジルには「黒いスーツを着た男」のイケメン青年であるラファエル・ペルソナーズが演じている。

テニスの後のシャワー室での、2人の関係で苦悩が読み取れる。車に撥ねられ生死の堺を彷徨うダヴィッド。全体にコミカルな表現が多いので気づきにくいが、多くの犯罪が挿入されるし、女たちは殆どファム・ファタル風なのである。病院のベッドで意識不明のダヴィッドの体毛を剃り、ドレスを着せて再び「ヴィルジニア」として蘇生させようとするクレールの行為は、愛なのか犯罪なのか。

しかし、ロマン・デュリスの女装した姿は正視しがたかった。7年後のエピローグでは、夕陽の道を手を繋いで歩く長髪に細身のパンツをはいた「ヴィルジニア」と成長した娘とクレールの姿には、クレールは「ヴィルジニア」によって生まれ変わるんです。クレールは王子様であり、「ヴィルジニア」は白雪姫のようになり、つまりはお伽噺のようにハッピーエンドになるわけ。自らゲイであることを公表し、度々自作のテーマにもして来たオゾン監督であるので、この作品ではそんなに驚くことはなかった。映画全体がオゾンの世界に保護されつくされているので、何が起ころうとも驚くことはない。
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