国際的に評価される鬼才・園子温監督が特撮に初挑戦した異色作。かつてロックミュージシャンという夢を抱いていたものの現在はさえないサラリーマンが、1匹のミドリガメと出会ったことから始まる奇想天外な物語を描く。主演は『地獄でなぜ悪い』に続き園監督とタッグを組む長谷川博己、彼が恋心を抱く職場の同僚役には、テレビドラマ「時効警察」以来の園組となる麻生久美子。物語の鍵を握る謎の老人役でベテラン西田敏行が出演するほか、渋川清彦、松田美由紀ら多彩な顔ぶれが勢ぞろいする。
あらすじ:ロックミュージシャンになる夢を諦めて以来パッとしない毎日を送るサラリーマン鈴木良一(長谷川博己)は、職場の同僚・寺島裕子(麻生久美子)が気になっているものの話し掛けることができない。ある日、1匹のミドリガメと運命的に出会いピカドンと名付けるが、同僚に笑われてトイレに流してしまう。すぐに後悔する鈴木だったが、ピカドンは下水道を通って地下に住む謎の老人(西田敏行)のもとにたどり着き……。
<感想>園子温監督の作品は殆ど観賞していますが、『冷たい熱帯魚」「新宿スワン」や「TOKYO TRIBE」、「リアル鬼ごっこ」など、今までは彼の野蛮なエネルギーが爆発しているような近年の作品に圧倒され続けてきました。その躍動感なるものが凄まじく感じられずにはいられなかった。ですが、それで終わりではなかったようですね。
本作では、痛みと愛が混じり合う、若い時分の苦々しい物語のようなファンタジーに出来上がっています。確かに、西田敏行演じる老人を捨てられたペットや人形たちが取り囲む地下下水道の描写は、園子温版の「トイ・ストーリー」ともいうべき空想世界かもしれないが、そこに横たわる狂気たるや、締めていた正気のネジが、知らず知らずに緩められ脱力してゆく恐怖に身震いした。
まさか、西田のおっちゃんが、魔法使いか、神様か、サンタクロースかもなんてことなのよね。子供たちは、親に買ってもらった玩具や人形、動物などを、飽きてしまうと平気で捨ててしまう。そんな廃棄された人形や玩具や動物たちの世界には正直ホットしました。すでに、存分に明示された意味などより、単純に、そこに集められているものたちの形や動きにホットさせられた。
人生、潮目が変われば大きく動く。そんな奇蹟と愛の微妙なあんばいを豪華キャストで撮れるのも成功した今の監督ならではだろう。
うだつの上がらない駄目サラリーマンに扮した長谷川博己の、振り切れた演技にまず笑い、主人公が会社で廃棄物扱いされる冒頭部分などもしつこいし、美しさを封印して挑んだ麻生久美子のあか抜けないメガネ女っぷりに驚く。
主人公が目指していた物は、ロックミュージシャンとして華々しくデビューをして、将来は日本スタジアムでコンサートをすることが夢だった。その夢がミドリカメによって叶えられ、有頂天になりペットのミドリカメ“ピカドン”のことを忘れてしまうなんて。
そんな主人公の奮闘ぶりを語るために、彼が選んだ手段の一つが何と特撮なのである。このCG全盛時代に昭和な怪獣ガメラを手作りするとは、泣けるサプライズとしか思えない。
しかも、その怪獣ガメラの名前、“ピカドン”は、ネーミングの暗黒さに反して、姿も声も性格も愛らしく、日本が捨て去った時代の哀愁さえ覚えるのだ。もしかして、本当の主人公はこのミドリガメでは、そう思ってもいいと感じた。それくらいインパクトがあった。
2020年の東京オリンピックという華々しい未来を、ただ見守っていたらいいものか、使い捨てられたものは、今はどうなっているのだろうか。大事なものを見落としてやいないか、そう私たちに投げ掛けてくる。度肝をぬぐ超展開の中に隠された、確かなメッセージを受け取って欲しい。
エンドタイトルに流れるRCサクセションの「スローバラード」の歌が抜群にいいのに、何故か「ラブ&ピース」という声が耳に残っているのは、繰り返ししつこいくらい長谷川博己が歌っているので、その強みなのか?・・・。そのしつこさが強みでもあり、臭みでもある。
2015年劇場鑑賞作品・・・167映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング
あらすじ:ロックミュージシャンになる夢を諦めて以来パッとしない毎日を送るサラリーマン鈴木良一(長谷川博己)は、職場の同僚・寺島裕子(麻生久美子)が気になっているものの話し掛けることができない。ある日、1匹のミドリガメと運命的に出会いピカドンと名付けるが、同僚に笑われてトイレに流してしまう。すぐに後悔する鈴木だったが、ピカドンは下水道を通って地下に住む謎の老人(西田敏行)のもとにたどり着き……。
<感想>園子温監督の作品は殆ど観賞していますが、『冷たい熱帯魚」「新宿スワン」や「TOKYO TRIBE」、「リアル鬼ごっこ」など、今までは彼の野蛮なエネルギーが爆発しているような近年の作品に圧倒され続けてきました。その躍動感なるものが凄まじく感じられずにはいられなかった。ですが、それで終わりではなかったようですね。
本作では、痛みと愛が混じり合う、若い時分の苦々しい物語のようなファンタジーに出来上がっています。確かに、西田敏行演じる老人を捨てられたペットや人形たちが取り囲む地下下水道の描写は、園子温版の「トイ・ストーリー」ともいうべき空想世界かもしれないが、そこに横たわる狂気たるや、締めていた正気のネジが、知らず知らずに緩められ脱力してゆく恐怖に身震いした。
まさか、西田のおっちゃんが、魔法使いか、神様か、サンタクロースかもなんてことなのよね。子供たちは、親に買ってもらった玩具や人形、動物などを、飽きてしまうと平気で捨ててしまう。そんな廃棄された人形や玩具や動物たちの世界には正直ホットしました。すでに、存分に明示された意味などより、単純に、そこに集められているものたちの形や動きにホットさせられた。
人生、潮目が変われば大きく動く。そんな奇蹟と愛の微妙なあんばいを豪華キャストで撮れるのも成功した今の監督ならではだろう。
うだつの上がらない駄目サラリーマンに扮した長谷川博己の、振り切れた演技にまず笑い、主人公が会社で廃棄物扱いされる冒頭部分などもしつこいし、美しさを封印して挑んだ麻生久美子のあか抜けないメガネ女っぷりに驚く。
主人公が目指していた物は、ロックミュージシャンとして華々しくデビューをして、将来は日本スタジアムでコンサートをすることが夢だった。その夢がミドリカメによって叶えられ、有頂天になりペットのミドリカメ“ピカドン”のことを忘れてしまうなんて。
そんな主人公の奮闘ぶりを語るために、彼が選んだ手段の一つが何と特撮なのである。このCG全盛時代に昭和な怪獣ガメラを手作りするとは、泣けるサプライズとしか思えない。
しかも、その怪獣ガメラの名前、“ピカドン”は、ネーミングの暗黒さに反して、姿も声も性格も愛らしく、日本が捨て去った時代の哀愁さえ覚えるのだ。もしかして、本当の主人公はこのミドリガメでは、そう思ってもいいと感じた。それくらいインパクトがあった。
2020年の東京オリンピックという華々しい未来を、ただ見守っていたらいいものか、使い捨てられたものは、今はどうなっているのだろうか。大事なものを見落としてやいないか、そう私たちに投げ掛けてくる。度肝をぬぐ超展開の中に隠された、確かなメッセージを受け取って欲しい。
エンドタイトルに流れるRCサクセションの「スローバラード」の歌が抜群にいいのに、何故か「ラブ&ピース」という声が耳に残っているのは、繰り返ししつこいくらい長谷川博己が歌っているので、その強みなのか?・・・。そのしつこさが強みでもあり、臭みでもある。
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