半藤一利のノンフィクションを基にした群像歴史ドラマ大作。太平洋戦争での日本の降伏決定から、それを国民に伝えた玉音放送が敢行されるまでの裏側を見つめていく。メガホンを取るのは、『クライマーズ・ハイ』『わが母の記』などの原田眞人。キャストには『わが母の記』などの役所広司、『おくりびと』などの本木雅弘、『ツナグ』などの松坂桃李ら実力派が集結し、昭和天皇や阿南惟幾陸相をはじめとする実在の人物を熱演する。身をていして現在の平和の礎を築いた人々の思いに引き込まれる。
<感想>もうすぐお盆の8月15日ですね。70年前の日本に何があったのか。玉音放送に至るまでの終戦秘話を時系列に沿ってノンフィクション小説にまとめ上げた半藤一利の原作を映画化している。過去に1967年、岡本喜八監督によって、徹底抗戦を訴える阿南惟幾陸軍大臣には三船敏郎と、鈴木貫太郎総理に笠智衆との対峙を軸にした熱い男のドラマ。天皇は後ろ姿だけの登場。
長年の夢だったと語る原田眞人監督が、より史実に忠実な形でリメイク。岡本監督版では描かれなかった昭和天皇、敗戦処理を請け負った鈴木貫太郎総理、息子を戦争で失った阿南陸軍大臣の3人が終戦にむけて尽力する姿をスリリングに追っている。
広島、長崎に原爆を落とされてもまだ軍部は徹底抗戦を唱え、政府はそれを抑えられずにズルズルと終戦が先送りになってしまう国家としての末期状態が恐ろしい。後、一歩間違えれば、日本中が焦土(焼け野原)となり、分断国家になっていたかもしれない。昭和天皇に本木雅弘が扮したほか、阿南陸軍大臣には役所広司、鈴木貫太郎総理には山崎努ら演技派陣が重厚な演技をみせ、見応えのある群像劇に仕上がっています。
全面降伏か、本土決戦か、8月14日に、御前会議が開かれ、昭和天皇の決断で降伏が決定。自分の名前で戦争が始まり、多くの国民が犠牲になっていることに苦悩するが、天皇自らが直接的には政治に介入することはできないのだ。この経過で天皇がどんな表情を見せ、過ごしたのか。これまでになかった人間天皇を本木雅弘が演じて見事に描写しているのが素晴らしい。
私は、2006年の昭和天皇を描いたアレクサンドル・ソクーロフ監督の「太陽」を観賞したのだが、イッセー尾形の昭和天皇の演じ方に、大変感慨深く拝見して、上手い役者さんだと今でも思っております。
「太陽」
天皇制における家長の象徴である天皇が、子供である国民を思うという構図。一方では、侍従長だった鈴木貫太郎総理と侍従武官だった阿南陸軍大臣と、天皇の3人の絆や、鈴木や阿南の父親としての顔を描くなど、もちろん、戦時中は男尊女卑の時代で、女たちは家庭を守ることしか役目が無いように描かれていますが、妻としての苦悩も内助の功も少しは描かれていて、家族をテーマにドラマが再構成されていた。
それに、タイトルは1日だが、劇中で描かれるのは4か月。日本の未来を考えて奔走した人々の姿を、1945年4月に鈴木貫太郎内閣発足から、7月のポツダム宣言の受諾要求、原爆の投下、8月15日の正午、昭和天皇による玉音放送が流されるまでを描いています。
中でも、陸軍部では、全面降伏には断固反対。本土決戦で連合軍に一矢報いてから、少しでも有利な条件で和睦を結ぶことを狙っているのだ。天皇を崇拝するあまりに連合軍への無条件降伏を否定する若い畑中少佐には、松坂桃李くんが、眉間に血管を浮き上がらせ青筋を立てながら怒りを露わにする。
彼は、皇居内でクーデター起こし、本土決戦のために総決起を呼びかけ、軍部による皇居、放送局の占拠を実行するという、血気盛んな若さゆえか無謀な考えである。クーデター軍が深夜の皇居に乱入し、玉音放送のテープを奪い、全日本軍への決起を畑中たちは促そうとする。
しかし、その夜には、阿南陸軍大臣が自宅で切腹前の宴を開いていた。部下である青年将校たちと、政府上層部との板挟みになりながら、日本の将来について、そして自らの進退について一人静かに考える阿南。自分にとっては最後の夜になることが分かっている阿南が、自宅の廊下にただ座り、カメラがだんだんと引いて行くシーンは、台詞がまったく無いのにもかかわらず、阿南の静かなる覚悟と、日本のこれからを暗示させているようで背筋がゾクゾクした。音楽が、ジャズがかかっていたようなのが印象に残ってます。
そして、観客は阿南陸軍大臣の立派な自決の最期をみとることになる。
阿南の妻は、東京の大空襲を避けて、子供たちと田舎に疎開していたが、夫のことを思うあまりに胸騒ぎでもしたのだろう、疎開さきから一晩歩いて東京の自宅へと向かう。そして、朝方には自宅へ着くと、夫の遺体を見て妻としての務めを果たす、息子の戦死も、夫の立派な最期も、辛い女の無念な表情に涙が出て止まりませんでした。
終戦を迎えて日本の国を残そうと頑張った人たちがいて、そして、70年後の今の、平和な日本が続いていることを、記憶から消し去って忘れてはいけませんね。戦後生まれの若い方に、是非観て欲しいと思います。
2015年劇場鑑賞作品・・・160映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング
<感想>もうすぐお盆の8月15日ですね。70年前の日本に何があったのか。玉音放送に至るまでの終戦秘話を時系列に沿ってノンフィクション小説にまとめ上げた半藤一利の原作を映画化している。過去に1967年、岡本喜八監督によって、徹底抗戦を訴える阿南惟幾陸軍大臣には三船敏郎と、鈴木貫太郎総理に笠智衆との対峙を軸にした熱い男のドラマ。天皇は後ろ姿だけの登場。
長年の夢だったと語る原田眞人監督が、より史実に忠実な形でリメイク。岡本監督版では描かれなかった昭和天皇、敗戦処理を請け負った鈴木貫太郎総理、息子を戦争で失った阿南陸軍大臣の3人が終戦にむけて尽力する姿をスリリングに追っている。
広島、長崎に原爆を落とされてもまだ軍部は徹底抗戦を唱え、政府はそれを抑えられずにズルズルと終戦が先送りになってしまう国家としての末期状態が恐ろしい。後、一歩間違えれば、日本中が焦土(焼け野原)となり、分断国家になっていたかもしれない。昭和天皇に本木雅弘が扮したほか、阿南陸軍大臣には役所広司、鈴木貫太郎総理には山崎努ら演技派陣が重厚な演技をみせ、見応えのある群像劇に仕上がっています。
全面降伏か、本土決戦か、8月14日に、御前会議が開かれ、昭和天皇の決断で降伏が決定。自分の名前で戦争が始まり、多くの国民が犠牲になっていることに苦悩するが、天皇自らが直接的には政治に介入することはできないのだ。この経過で天皇がどんな表情を見せ、過ごしたのか。これまでになかった人間天皇を本木雅弘が演じて見事に描写しているのが素晴らしい。
私は、2006年の昭和天皇を描いたアレクサンドル・ソクーロフ監督の「太陽」を観賞したのだが、イッセー尾形の昭和天皇の演じ方に、大変感慨深く拝見して、上手い役者さんだと今でも思っております。
「太陽」
天皇制における家長の象徴である天皇が、子供である国民を思うという構図。一方では、侍従長だった鈴木貫太郎総理と侍従武官だった阿南陸軍大臣と、天皇の3人の絆や、鈴木や阿南の父親としての顔を描くなど、もちろん、戦時中は男尊女卑の時代で、女たちは家庭を守ることしか役目が無いように描かれていますが、妻としての苦悩も内助の功も少しは描かれていて、家族をテーマにドラマが再構成されていた。
それに、タイトルは1日だが、劇中で描かれるのは4か月。日本の未来を考えて奔走した人々の姿を、1945年4月に鈴木貫太郎内閣発足から、7月のポツダム宣言の受諾要求、原爆の投下、8月15日の正午、昭和天皇による玉音放送が流されるまでを描いています。
中でも、陸軍部では、全面降伏には断固反対。本土決戦で連合軍に一矢報いてから、少しでも有利な条件で和睦を結ぶことを狙っているのだ。天皇を崇拝するあまりに連合軍への無条件降伏を否定する若い畑中少佐には、松坂桃李くんが、眉間に血管を浮き上がらせ青筋を立てながら怒りを露わにする。
彼は、皇居内でクーデター起こし、本土決戦のために総決起を呼びかけ、軍部による皇居、放送局の占拠を実行するという、血気盛んな若さゆえか無謀な考えである。クーデター軍が深夜の皇居に乱入し、玉音放送のテープを奪い、全日本軍への決起を畑中たちは促そうとする。
しかし、その夜には、阿南陸軍大臣が自宅で切腹前の宴を開いていた。部下である青年将校たちと、政府上層部との板挟みになりながら、日本の将来について、そして自らの進退について一人静かに考える阿南。自分にとっては最後の夜になることが分かっている阿南が、自宅の廊下にただ座り、カメラがだんだんと引いて行くシーンは、台詞がまったく無いのにもかかわらず、阿南の静かなる覚悟と、日本のこれからを暗示させているようで背筋がゾクゾクした。音楽が、ジャズがかかっていたようなのが印象に残ってます。
そして、観客は阿南陸軍大臣の立派な自決の最期をみとることになる。
阿南の妻は、東京の大空襲を避けて、子供たちと田舎に疎開していたが、夫のことを思うあまりに胸騒ぎでもしたのだろう、疎開さきから一晩歩いて東京の自宅へと向かう。そして、朝方には自宅へ着くと、夫の遺体を見て妻としての務めを果たす、息子の戦死も、夫の立派な最期も、辛い女の無念な表情に涙が出て止まりませんでした。
終戦を迎えて日本の国を残そうと頑張った人たちがいて、そして、70年後の今の、平和な日本が続いていることを、記憶から消し去って忘れてはいけませんね。戦後生まれの若い方に、是非観て欲しいと思います。
2015年劇場鑑賞作品・・・160映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング