『キツツキと雨』『横道世之介』で知られる沖田修一が監督と脚本を務め、山の中で遭難した中年女性たちの生き残りを懸けた戦いを笑いを交えて描く人間ドラマ。いきなりのアクシデントに見舞われながらも、お互いの知恵と機転で危機を脱しようと頑張る女性たちの姿を活写する。出演者は主婦をはじめ全員がオーディションで選出。日常生活とかけ離れた場所で発揮される、彼女たちの本能に目がくぎ付け。
あらすじ:7人の中年女性たちは温泉付き紅葉ツアーと銘打った旅行に参加し、それぞれが思い思いに山道の散策を楽しんでいた。だが、彼女たちの先に立って案内していたツアーガイドの姿がこつぜんと消え、7人は山中に置き去りにされてしまう。携帯もつながらず、食べる物も宿泊できる施設もない中、彼女たちはサバイバル生活を余儀なくされ……。
<感想>オーディションで選ばれたおばちゃんたちの魅力的なことといったらない。彼女たちが山中で迷うって設定がすでに秀逸ですが、そのワン・シチュエーションだけで、1本の映画に仕上げてしまうのはさすがですよね。
それに、ほぼ全員無名のキャストということも手伝って、最初は“おばちゃん”という群れにしか見えなかったのが、会話の端端からキャラクターの過去を浮かびあがらせ、それぞれにきちんと物語までつけさせる脚本の巧さに脱帽した。
沖田修一監督、常連のツアーガイドの兄ちゃん黒田大輔の、泣いているんだか笑っているのだか解らない表情も最高。
これが男たち、おじさんだとこうはいかないだろう。この映画の主人公は7人のおばちゃんたちだということで、山で道に迷ってしまい、一晩夜を過ごすことになるという。男たちだったら、果たして無事に一夜を過ごすことが出来たであろうか。
この映画は、7人の紅葉を愛でるトレッキングと温泉へ1泊のツアー旅行なのだろう。山の黄色く染まった紅葉が先に観られて、それから7人のおばさんだけの山道へと紅葉を愛でて、のんびりと撮影をしたり、歩きながらおやつを食べるおばちゃんもいる。
そうしている内に、ガイドの青年がどうやら道に迷ったらしく、昼の弁当を置いていけばいいものを、その弁当を持って道を調べて来ると言ったきり戻ってこないのだ。
暫くは、その場所で小鳥の声を聴いたり、一休みする人もいたりと、こんな大変なことになるとは思っていないのだ。そして、痺れを切らしたおばちゃんが、2組に分かれて、一組はガイドを探しに行くのと、この場所で待っているのと、2組になってと提案する。
ガイドを探しに出かけた組は、まるで「青い鳥」のようにお菓子の屑を(ポテトチップ)道に落として、帰り道を迷わないようにと。これは無駄なことですよ、そのお菓子は、後でみんなのお腹に入った方が得策ですもの。
残った組には、腰に持病を抱えて歩くのが辛いおばさんもいる。それに、山の中では、絶対にタバコを吸ってはダメなのに、水商売の女がタバコを吸い始める。それを見て、叱る腰の痛いおばさん。それに、太極拳を習っているおばさんが、暇を持て余して太極拳をする。それに習ってみんなも優雅に太極拳を真似る。垂れ下がった蔓で、それを編んでリースを造るおばんさんもいる。
そして、夕方になり、ここで野宿をすることに。すると、みんな持っているお菓子を出し合い、キノコとかクルミ、柿や木の実を取り、それに石を集めて焚火をするのだ。まさか、甘食を木に刺して火にかざして焼いて食べるとは。温かい火のぬくもりと有り合せの食べ物、そしておしゃべりに歌「恋の奴隷」を歌う人もいる。
もう、これは遭難ではなくて、キャンプをしているような、レジャーシートの上に枯れ葉を敷き詰めて布団代わりにして、7人が雑魚寝する様も圧巻ですから。でも、救援のヘリコプターが来ると期待するおばちゃんたち。TVのニュースで自分たちが映し出されるのが嫌だというおばちゃんもいる。
映画作りの行程が、そのまま女性陣の精神の解放に連なっている感じがします。女たちは、誰も「天は我々を見放した」と、悲観的にはならない。運よく雨が降らなかったのが幸いでもある。若い人が混ざってないせいもあるのだろうか、殆ど40後半から60歳くらいまでだから、人生の辛さも甘さも経験済みで、度胸が据わっている。
次の朝は、小川で顔を洗い口をすすぐ。そして来た道を戻ろうという。7人もいれば、中には自分の意見を主張するおばちゃんもいるだろうが、この映画の中では、なんだかんだと自分の言いたいことを言っても、誰かの意見が正しいと分かればそれに従うのだ。しかし、朝になっても救援のヘリの音もしないし、山狩りの消防団の人たちの声もしないのだ。
そんなことはあまり考えていないようで、みんなは、寄り道になってしまうのに、一人のおばちゃんが、滝を見て帰ろうと言う。写真を撮っている2人のおばちゃんは、大賛成で、水の落ちる方向へと耳を澄ませて降りていく。天気も良好で、もし雨が降っていればそうはいかない。そんなに大きい滝ではないが、マイナスイオンがたっぷりと浴びて、英気を養い楽しそうに太極拳をする人や、ソプラノ歌手ばりに唄いあげる人もいる。
7人のおばちゃんたち、途中で病気になったりケガをしたりとか無かったのも不幸中の幸いである。戻るということは正しいことで、そのまま上へと登って行ったなら、またもや道に迷ってしまうことになるだろう。滝の小川を下って行くと、ガイドの青年が泥だらけで嬉しそうに手を振っている。もしかして、救援を頼むことはなかったのだろう。お弁当も手に持っていないし、途中で足を滑らせて弁当を手放して川まで落ちたようである。
それに、みんなが登ってきた出発点への帰還である。入口近くまで来て、赤いトラクターのオジサンを見つけて、村まで乗せてもらうところでこの映画は終わる。彼女たちは、その後に温泉にでも入って、ご馳走を食べたのだろう。
一人で山へ登山することはないかとは思いますが、山で道に迷って遭難したら、前へと登って進まないで、来た道を引き返して見るのが正解であります。おばちゃんたちのバイタリティと、山ン中で遭難しても、今まで培った人生の知恵と工夫で何とかやりとおすという、凄いパワーを貰った感じがしました。
2015年DVD鑑賞作品・・・35映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング
あらすじ:7人の中年女性たちは温泉付き紅葉ツアーと銘打った旅行に参加し、それぞれが思い思いに山道の散策を楽しんでいた。だが、彼女たちの先に立って案内していたツアーガイドの姿がこつぜんと消え、7人は山中に置き去りにされてしまう。携帯もつながらず、食べる物も宿泊できる施設もない中、彼女たちはサバイバル生活を余儀なくされ……。
<感想>オーディションで選ばれたおばちゃんたちの魅力的なことといったらない。彼女たちが山中で迷うって設定がすでに秀逸ですが、そのワン・シチュエーションだけで、1本の映画に仕上げてしまうのはさすがですよね。
それに、ほぼ全員無名のキャストということも手伝って、最初は“おばちゃん”という群れにしか見えなかったのが、会話の端端からキャラクターの過去を浮かびあがらせ、それぞれにきちんと物語までつけさせる脚本の巧さに脱帽した。
沖田修一監督、常連のツアーガイドの兄ちゃん黒田大輔の、泣いているんだか笑っているのだか解らない表情も最高。
これが男たち、おじさんだとこうはいかないだろう。この映画の主人公は7人のおばちゃんたちだということで、山で道に迷ってしまい、一晩夜を過ごすことになるという。男たちだったら、果たして無事に一夜を過ごすことが出来たであろうか。
この映画は、7人の紅葉を愛でるトレッキングと温泉へ1泊のツアー旅行なのだろう。山の黄色く染まった紅葉が先に観られて、それから7人のおばさんだけの山道へと紅葉を愛でて、のんびりと撮影をしたり、歩きながらおやつを食べるおばちゃんもいる。
そうしている内に、ガイドの青年がどうやら道に迷ったらしく、昼の弁当を置いていけばいいものを、その弁当を持って道を調べて来ると言ったきり戻ってこないのだ。
暫くは、その場所で小鳥の声を聴いたり、一休みする人もいたりと、こんな大変なことになるとは思っていないのだ。そして、痺れを切らしたおばちゃんが、2組に分かれて、一組はガイドを探しに行くのと、この場所で待っているのと、2組になってと提案する。
ガイドを探しに出かけた組は、まるで「青い鳥」のようにお菓子の屑を(ポテトチップ)道に落として、帰り道を迷わないようにと。これは無駄なことですよ、そのお菓子は、後でみんなのお腹に入った方が得策ですもの。
残った組には、腰に持病を抱えて歩くのが辛いおばさんもいる。それに、山の中では、絶対にタバコを吸ってはダメなのに、水商売の女がタバコを吸い始める。それを見て、叱る腰の痛いおばさん。それに、太極拳を習っているおばさんが、暇を持て余して太極拳をする。それに習ってみんなも優雅に太極拳を真似る。垂れ下がった蔓で、それを編んでリースを造るおばんさんもいる。
そして、夕方になり、ここで野宿をすることに。すると、みんな持っているお菓子を出し合い、キノコとかクルミ、柿や木の実を取り、それに石を集めて焚火をするのだ。まさか、甘食を木に刺して火にかざして焼いて食べるとは。温かい火のぬくもりと有り合せの食べ物、そしておしゃべりに歌「恋の奴隷」を歌う人もいる。
もう、これは遭難ではなくて、キャンプをしているような、レジャーシートの上に枯れ葉を敷き詰めて布団代わりにして、7人が雑魚寝する様も圧巻ですから。でも、救援のヘリコプターが来ると期待するおばちゃんたち。TVのニュースで自分たちが映し出されるのが嫌だというおばちゃんもいる。
映画作りの行程が、そのまま女性陣の精神の解放に連なっている感じがします。女たちは、誰も「天は我々を見放した」と、悲観的にはならない。運よく雨が降らなかったのが幸いでもある。若い人が混ざってないせいもあるのだろうか、殆ど40後半から60歳くらいまでだから、人生の辛さも甘さも経験済みで、度胸が据わっている。
次の朝は、小川で顔を洗い口をすすぐ。そして来た道を戻ろうという。7人もいれば、中には自分の意見を主張するおばちゃんもいるだろうが、この映画の中では、なんだかんだと自分の言いたいことを言っても、誰かの意見が正しいと分かればそれに従うのだ。しかし、朝になっても救援のヘリの音もしないし、山狩りの消防団の人たちの声もしないのだ。
そんなことはあまり考えていないようで、みんなは、寄り道になってしまうのに、一人のおばちゃんが、滝を見て帰ろうと言う。写真を撮っている2人のおばちゃんは、大賛成で、水の落ちる方向へと耳を澄ませて降りていく。天気も良好で、もし雨が降っていればそうはいかない。そんなに大きい滝ではないが、マイナスイオンがたっぷりと浴びて、英気を養い楽しそうに太極拳をする人や、ソプラノ歌手ばりに唄いあげる人もいる。
7人のおばちゃんたち、途中で病気になったりケガをしたりとか無かったのも不幸中の幸いである。戻るということは正しいことで、そのまま上へと登って行ったなら、またもや道に迷ってしまうことになるだろう。滝の小川を下って行くと、ガイドの青年が泥だらけで嬉しそうに手を振っている。もしかして、救援を頼むことはなかったのだろう。お弁当も手に持っていないし、途中で足を滑らせて弁当を手放して川まで落ちたようである。
それに、みんなが登ってきた出発点への帰還である。入口近くまで来て、赤いトラクターのオジサンを見つけて、村まで乗せてもらうところでこの映画は終わる。彼女たちは、その後に温泉にでも入って、ご馳走を食べたのだろう。
一人で山へ登山することはないかとは思いますが、山で道に迷って遭難したら、前へと登って進まないで、来た道を引き返して見るのが正解であります。おばちゃんたちのバイタリティと、山ン中で遭難しても、今まで培った人生の知恵と工夫で何とかやりとおすという、凄いパワーを貰った感じがしました。
2015年DVD鑑賞作品・・・35映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング