カンヌ国際映画祭パルムドールを2度受賞したベルギーのジャン=ピエール・ダルデンヌ、リュック・ダルデンヌ兄弟による社会派ドラマ。従業員のボーナス支給のため上司から解雇を言い渡された女性が自身の解雇撤回のため奮闘する姿を描き、数多くの映画祭で話題となった。主演は『エディット・ピアフ~愛の讃歌~』などのオスカー女優マリオン・コティヤール、ダルデンヌ兄弟作品常連のファブリツィオ・ロンジョーネやオリヴィエ・グルメらが共演。
あらすじ:体調が思わしくなく休職していたサンドラ(マリオン・コティヤール)は、復帰のめどが立った矢先の金曜日、ボーナス支給のため一人のクビを切らなくてはならないと解雇を通告される。ところが、同僚の計らいで週明けに職員たちが投票を行い、サンドラのためボーナス返上を受け入れる者が半分以上になればクビを回避できるという。その週末、月曜日の投票に向けサンドラは同僚たちの説得するため奔走するが……。
<感想>ヨーロッパの不況を背景にしたストーリーを通して、平凡な庶民を取り巻く厳しい現実を描き出している。職場で解雇を宣告されたサンドラが、同僚たちに“ボーナスを諦めて自分の復職に賛成してくれないか”と頼んで回るという、誰の身にも起こりうるシビアな物語。本当のタイトルは、「2日と1夜」の命をかけた戦いの記録で、これは遊びではない。再就職のクビがかかっている労働者の切実な問題なのだ。
その主人公サンドラを演じるのは、演技派の人気女優マリオン・コティヤール、監督はベルギー映画を世界レベルに押し上げたジャン=ピエール・ダルデンヌ&リュック・ダルデンヌ兄弟。
名立たる演技派と巨匠だけに見応え十分で、体調不良(鬱病)で仕事を休んでいたサンドラが、復職しようとした矢先に、一方的に解雇を言い渡されるところから映画が始まる。
16人全員にボーナス1000ユーロを支給するために、一人だけ解雇する必要があるという会社側の言い分に反旗をひるがえすサンドラ。果たして仕事仲間はボーナスを取るか、サンドラを取るか。一人の労働者の解雇をめぐって全員の意見を聞く「再投票」に向けて過酷な戦いが始まる。
この会社側の“再投票“というシステムに若干の違和感を覚えなくもないが、要するにこの映画はサンドラという一人の女性労働者が「再投票」に向けて同僚を一人一人説得していくその過程を克明に描くことにある。
そこから見えて来るのは、ボーナス目当てのギリギリの生活に強いられている労働者の過酷な現状であり、ボーナスか仲間の二者択一を迫られる彼らの切羽詰った心情であります。様々な苦しい事情を抱えた同僚たちのポートレートも描写され、仕事仲間の人生とお金を天秤にかけた生々しい人間模様が圧巻である。サンドラが、途中で泣きわめき神経衰弱のような症状になり、夫に離婚してくれとか、睡眠薬をひと瓶飲んでしまい、病院へ連れて行かれて胃の洗浄をしてもらうこともある。追い詰められたサンドラの心が、またもや鬱状態に陥り、泣くばかり。
この「2日と1夜」の奔走から明らかになるのは、サンドラの目を見張る成長ぶりと、そこには、妻に寄り添う夫との、夫婦愛や職場仲間の連帯意識が垣間見えてくるのだが、夫の妻の稼ぎを当てにしている情けなさも見て取れる。
妻が鬱病で仕事を休んで、会社からクビ宣言されるということは、日本では当たり前のようなこと。フランスだからなのか、日本では労働組合のある大手でも、赤字で会社が倒産の危機に落ちると、殆どリストラのクビ宣告を受けるのが実情。いつまでも、同僚まで巻き添えにしてまで、同僚たちも明日は我が身だと知っているから、同情の余地はない。
サンドラが時を経ずして強く逞しく成長していくあたりは、演じているマリオンの真骨頂でもあります。もちろんその絶妙な演技の陰には、緻密な演出とドキュメンタリーのような自然体の絵作りの監督の眼があることはいうまでもありません。
週末の2日間の出来事に焦点をしぼったリアルで緊迫感みなぎる映像の世界は、家族愛や人間の善意といったテーマもはらんで、そのささやかな希望が観る者の心を揺さぶらずにおかない。そして、サンドラの最後の決断が深い余韻を残す感動作に仕上がっています。
2015年劇場鑑賞作品・・・130映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング
あらすじ:体調が思わしくなく休職していたサンドラ(マリオン・コティヤール)は、復帰のめどが立った矢先の金曜日、ボーナス支給のため一人のクビを切らなくてはならないと解雇を通告される。ところが、同僚の計らいで週明けに職員たちが投票を行い、サンドラのためボーナス返上を受け入れる者が半分以上になればクビを回避できるという。その週末、月曜日の投票に向けサンドラは同僚たちの説得するため奔走するが……。
<感想>ヨーロッパの不況を背景にしたストーリーを通して、平凡な庶民を取り巻く厳しい現実を描き出している。職場で解雇を宣告されたサンドラが、同僚たちに“ボーナスを諦めて自分の復職に賛成してくれないか”と頼んで回るという、誰の身にも起こりうるシビアな物語。本当のタイトルは、「2日と1夜」の命をかけた戦いの記録で、これは遊びではない。再就職のクビがかかっている労働者の切実な問題なのだ。
その主人公サンドラを演じるのは、演技派の人気女優マリオン・コティヤール、監督はベルギー映画を世界レベルに押し上げたジャン=ピエール・ダルデンヌ&リュック・ダルデンヌ兄弟。
名立たる演技派と巨匠だけに見応え十分で、体調不良(鬱病)で仕事を休んでいたサンドラが、復職しようとした矢先に、一方的に解雇を言い渡されるところから映画が始まる。
16人全員にボーナス1000ユーロを支給するために、一人だけ解雇する必要があるという会社側の言い分に反旗をひるがえすサンドラ。果たして仕事仲間はボーナスを取るか、サンドラを取るか。一人の労働者の解雇をめぐって全員の意見を聞く「再投票」に向けて過酷な戦いが始まる。
この会社側の“再投票“というシステムに若干の違和感を覚えなくもないが、要するにこの映画はサンドラという一人の女性労働者が「再投票」に向けて同僚を一人一人説得していくその過程を克明に描くことにある。
そこから見えて来るのは、ボーナス目当てのギリギリの生活に強いられている労働者の過酷な現状であり、ボーナスか仲間の二者択一を迫られる彼らの切羽詰った心情であります。様々な苦しい事情を抱えた同僚たちのポートレートも描写され、仕事仲間の人生とお金を天秤にかけた生々しい人間模様が圧巻である。サンドラが、途中で泣きわめき神経衰弱のような症状になり、夫に離婚してくれとか、睡眠薬をひと瓶飲んでしまい、病院へ連れて行かれて胃の洗浄をしてもらうこともある。追い詰められたサンドラの心が、またもや鬱状態に陥り、泣くばかり。
この「2日と1夜」の奔走から明らかになるのは、サンドラの目を見張る成長ぶりと、そこには、妻に寄り添う夫との、夫婦愛や職場仲間の連帯意識が垣間見えてくるのだが、夫の妻の稼ぎを当てにしている情けなさも見て取れる。
妻が鬱病で仕事を休んで、会社からクビ宣言されるということは、日本では当たり前のようなこと。フランスだからなのか、日本では労働組合のある大手でも、赤字で会社が倒産の危機に落ちると、殆どリストラのクビ宣告を受けるのが実情。いつまでも、同僚まで巻き添えにしてまで、同僚たちも明日は我が身だと知っているから、同情の余地はない。
サンドラが時を経ずして強く逞しく成長していくあたりは、演じているマリオンの真骨頂でもあります。もちろんその絶妙な演技の陰には、緻密な演出とドキュメンタリーのような自然体の絵作りの監督の眼があることはいうまでもありません。
週末の2日間の出来事に焦点をしぼったリアルで緊迫感みなぎる映像の世界は、家族愛や人間の善意といったテーマもはらんで、そのささやかな希望が観る者の心を揺さぶらずにおかない。そして、サンドラの最後の決断が深い余韻を残す感動作に仕上がっています。
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