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駆込み女と駆出し男 ★★★★

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劇作家・井上ひさしが晩年に11年をかけて執筆した時代小説「東慶寺花だより」を映画化。江戸時代に幕府公認の縁切寺であった東慶寺を舞台に、離縁を求めて寺に駆け込んでくる女たちの聞き取り調査を行う御用宿の居候が、さまざまなトラブルに巻き込まれながら訳あり女たちの再出発を手助けしていくさまを描く。『クライマーズ・ハイ』、『わが母の記』などの原田眞人監督がメガホンを取り、主演は大泉洋。寺に駆け込む女たちを、『SPEC』シリーズなどの戸田恵梨香、実力派の満島ひかりらが演じる。

あらすじ:江戸時代、幕府公認の縁切寺として名高い尼寺の東慶寺には、複雑な事情を抱えた女たちが離縁を求め駆け込んできた。女たちの聞き取り調査を行う御用宿・柏屋に居候する戯作者志望の医者見習い・信次郎(大泉洋)は、さまざまなトラブルに巻き込まれながらも男女のもめ事を解決に向けて導き、訳あり女たちの人生の再出発を後押ししていくが……。

<感想>原作の時代小説「東慶寺花だより」を読んでから観賞しました。江戸末期の天保の改革という極端な締め付け制作が実施されていた時代。ささやかな娯楽を取り上げられた庶民の鬱屈もたまっていることを、アバンタイトルで一気に伝えている。説明シーンにありがちなまどろっこしさは一切ない。気付いたら、主役の一人であるお吟の物語へと招き入れられている。この導入部だけでもこの映画はただものではないことが分かる。

現代とは違い、江戸時代の離婚は男性側から申し立てるもので、女性の側から求めることはできなかった。だが、そんな女性たちの救済措置として全国で2カ所のみ(鎌倉の東慶寺、群馬の満徳寺)、江戸幕府公認の「縁切寺」が存在した。離婚を望む女性がそこへ駆け込めば、御用宿の離縁調停人の聞き取り調査を経て、夫との示談がまとまらなければ寺入りに。俗世と隔離されて2年を過ごせば、晴れて離婚が成立するというシステムがあった。(資料より)

中でも、主役のお吟には満島ひかりが、眉を剃りお歯黒でもそれは美しい。そして、もう一人主役となるのが、語り部と戯作者志望の医者見習いの信次郎を演じている大泉洋である。この役者さんのいつもTVで見ている通りの、口八丁手八丁に立ち回り、軽妙なるハイテンションな仕草のこなし方で見せる熱演には感心しました。

それに、脇役といえど、御用宿・三代目柏屋源兵衛、離縁調停人を演じた樹木希林さんの年期の入った演技の巧さと存在感にいつもながらに感服しました。

その他にも、じょごの戸田恵梨香、堀切屋の主人の堤真一、東慶寺を仕切る法秀尼を演じているのは誰なのか?、・・・元宝塚の陽月華の妖艶さもいいですよね。実は彼女は秘密の部屋で、・・・隠れキリシタンだったということも。

とにかく登場人物たちの多くが立て板に水のごとくもの凄い勢いでしゃべりまくるのだ。主な舞台は離婚を望む女たちが唯一自ら離婚できる場所、鎌倉にある駆け込み寺の東慶寺。そこへ駈け込んでくるお吟をはじめとして、幾人もの女の哀しい物語が交錯しながら語られるのだ。堀切屋の主人とお吟の関係には、小説と違うので、どうしてお吟が東慶寺へ来たのかという理由に涙が零れます。

江戸時代に生きる女たちの姿が、強く美しく生き生きとして描かれているのがいい。駆け込み寺に行くのも、女にはとても勇気が必要だったと思うし、お金もいるのだ。特に印象的だったのが、浮気と仕事をしない夫を持つ刀鍛冶のじょご。始めは心に傷を負い、頑な心を閉ざしていたのが、物語が進むにつれて女性としての輝きを取り戻していくところ。彼女の女としての芯の強さを感じ、とても素敵でした。演じている戸田恵梨香の時代劇初めてだというのが信じられないくらいに、じょごの話す方言も上手でアクセントとなっている。

とにかく笑いがそこかしこに散りばめられており、医者見習いの信次郎が、東慶寺に診察に行くと、男を2年間見ていない女たちが物珍しさに覗き見をする場面と、「女性の顔を見てはならない、触ってもダメ」と言う、触診、視診不可での女性診察シーンには大いに笑わせてもらった。

それに、駆け込み女が想像妊娠をしたらしい場面では、どうやら信次郎の子供を身籠ったというのだ。みんなの立ち会いによる診察の場面では、大慌ての信次郎の様子が面白おかしくて、観ていて笑いが込み上げてきますから。
東慶寺の中では、2年の間に、下働きの女は台所仕事にお針子と、そして剣術に弓矢、なぎなたの稽古と余念がない。もしかして、夫や男どもが女房たちを取り戻しに来た時に備えてと、本当に男が乱入して来た時には、女性たちの戦いぶりも見事ですから。
そして、皆が、機関銃のように喋るリズミカルな流れには感心しきりです。セリフのテンポの良さには、この映画の様々な箇所に影響を与えていると思う。
女性が自由になれなかったり、苦しんだり、自分の生き方を改めて見つめ、本当の幸せとは何かと、いつの時代にも夫婦の有り方は簡単ではない。現代に於いても、夫の虐待や言葉の暴力、モルハラなどに耐えている女性たちにとっては、泣き寝入りなんてしないでこの映画を見て、勇気を持ってもらいたいと思いましたね。
2015年劇場鑑賞作品・・・100映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング


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