視聴率獲得を重視するメディアのモラルを問い掛ける、韓国発のサスペンススリラー。爆弾テロ犯からの電話を受けたアナウンサーに待ち受ける、思わぬ運命と事件の行方を追い掛けていく。メガホンを取ったのは、新鋭キム・ビョンウ。『ベルリンファイル』のハ・ジョンウが、テロ犯との通話の独占生放送で表舞台に返り咲こうとする主人公の元国民的アナウンサーを熱演する。生々しい迫力に満ちた大橋爆破シーンに加え、リアルタイム形式の演出も物語のテンションを高めている。
<感想>やっと地方のミニシアターで上映された。2月上旬にDVDレンタルさるのにね。この映画は、脚本がいいですよね。ラジオの生放送中に、DJのユン・ヨンファ(ハ・ジョンウ)のところに電話がかかってくる。「橋に爆弾を仕掛けた。爆破するぞ」と。イタズラ電話と思ってしまうんです。
それで、「やれるもんなら、やってみろ」って電話口で言ってしまう。すると、ドーンという音がして、窓の外の橋が爆破されている。この突然の日常の瞬間が壊れるのがたまらなくいいですよね。主人公のヨンファを「ベルリンファイル」のハ・ジョンウによるサスペンス映画になっているのもいい。
それに、犯人から電話があったことを警察へ連絡しないで、犯人の電話インタビューを独占生中継するんですからね。実は、ヨンファは有名なTVキャスターだったのに、ラジオ局に左遷されてしまった事情がある。
独占中継が視聴率70%越えしたら、自分が出世する約束を上と取り決めていたり、視聴率を上げるために犯人をけしかけて、橋に残された人たちを殺させようとしたり、最後にはヨンファの曝露話を他局に売ったりするなど、本当にどういう人間なんだよ、殆ど犯罪に近いですよね。
しかし、国家が強いた過酷な労働で仲間を失ったというテロリストの要求は、大統領の謝罪。ですが、その要求に対する政府や警察の無慈悲な動きと、さらには視聴率のことしか考えていないラジオ局の思惑など、ここではテロに対峙する側のさまざまなエゴこそが赤裸々に、そして徹底した情念のほとばしりとともに、一気に描かれていくのです。
製作委員会形式を主とする今の日本映画界では、こういった題材を扱うことは不可能に近いでしょう。それだけに、お隣の韓国映画では日本映画では決して味わえない個性が溢れかえっているわけなんですね。
特にキャラクター個々のうっそうとした情念のほとばしりと、その果てに安易なハッピーエンドなどあるはずもないといったお国柄独自の伝統など。決して恨みという意味ではなく、どんなに努力しても思うようにいかない人生に対する嘆き、とでも言えばよいのかが、重く見る者の胸にのしかかってくることは多いと感じる。
だからって言うわけでもないが、それだけでもお隣の芝生に嫉妬してしまうものがあるわけで、殆ど出ずっぱりのハ・ジョンウの主観で画像とドラマを構築し、カメラは彼から殆ど離れることはないのである。
それに、キャスターの表情とテロリストの声が、ぶつかりあうことでの緊迫感も並々ならぬものがあり、そこに周囲の思惑まで絡まり合う絶妙の構成の果てに、怒涛のクライマックスを迎えるのですから。犯人側の要求には「独占生中継したかったら21億ウォン振り込め」と、それが、他局に独占されたくないから局側がお金を振り込むんですから。
それに、犯人は他のスタジオにいる女性キャスターのマイクを爆破したり、警視庁長官のイヤホンを爆破したり、盗聴や盗撮したりって、どうやって犯人が仕掛けたのかが謎ですよね。
最後に明かされる犯人側の動機も、2年前に建設現場作業員だった自分の父親が、国に抹殺されている。だが、国からはお金も謝罪もない。だから「大統領、謝罪しろ」と要求するわけ。当然のごとく政府はずっと無視し続けていた。
ラストなんて、ヨンファと犯人が対面して和解するんですから。ですが、次の瞬間に犯人が狙撃されてしまう。それに、ヨンファも撃たれそうになる。つまりマスコミと政府の情報操作で共犯にされてしまうんですよ。犯人が狙撃された瞬間視聴率なんて凄いんでしょうね。そして、ニュースでは「犯人の言っていることは全部ウソで、政府はテロに勝ちました」と言っている。
それで、ヨンファが怒って「もうこんな国に用はない」と、犯人が残した爆弾のスイッチを押してしまう。ビルが崩れるし、この展開には韓国という国の闇をみたような気がしました。この映画をみて、あのセウォル号転覆事件を思い出してしまいました。だからっていうわけではないが、脚本はいいのに、リアリティがなさすぎが惜しいですよね。
ラストもそう、日本映画ではおそらくOKが出ないもであろう。しかし、そういった韓国映画独自の描き出す基盤には、やはり恨みなどの伝統情緒が今なお深く内在していることを改めて確信したと思います。
2015年劇場鑑賞作品・・・ 6映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング
<感想>やっと地方のミニシアターで上映された。2月上旬にDVDレンタルさるのにね。この映画は、脚本がいいですよね。ラジオの生放送中に、DJのユン・ヨンファ(ハ・ジョンウ)のところに電話がかかってくる。「橋に爆弾を仕掛けた。爆破するぞ」と。イタズラ電話と思ってしまうんです。
それで、「やれるもんなら、やってみろ」って電話口で言ってしまう。すると、ドーンという音がして、窓の外の橋が爆破されている。この突然の日常の瞬間が壊れるのがたまらなくいいですよね。主人公のヨンファを「ベルリンファイル」のハ・ジョンウによるサスペンス映画になっているのもいい。
それに、犯人から電話があったことを警察へ連絡しないで、犯人の電話インタビューを独占生中継するんですからね。実は、ヨンファは有名なTVキャスターだったのに、ラジオ局に左遷されてしまった事情がある。
独占中継が視聴率70%越えしたら、自分が出世する約束を上と取り決めていたり、視聴率を上げるために犯人をけしかけて、橋に残された人たちを殺させようとしたり、最後にはヨンファの曝露話を他局に売ったりするなど、本当にどういう人間なんだよ、殆ど犯罪に近いですよね。
しかし、国家が強いた過酷な労働で仲間を失ったというテロリストの要求は、大統領の謝罪。ですが、その要求に対する政府や警察の無慈悲な動きと、さらには視聴率のことしか考えていないラジオ局の思惑など、ここではテロに対峙する側のさまざまなエゴこそが赤裸々に、そして徹底した情念のほとばしりとともに、一気に描かれていくのです。
製作委員会形式を主とする今の日本映画界では、こういった題材を扱うことは不可能に近いでしょう。それだけに、お隣の韓国映画では日本映画では決して味わえない個性が溢れかえっているわけなんですね。
特にキャラクター個々のうっそうとした情念のほとばしりと、その果てに安易なハッピーエンドなどあるはずもないといったお国柄独自の伝統など。決して恨みという意味ではなく、どんなに努力しても思うようにいかない人生に対する嘆き、とでも言えばよいのかが、重く見る者の胸にのしかかってくることは多いと感じる。
だからって言うわけでもないが、それだけでもお隣の芝生に嫉妬してしまうものがあるわけで、殆ど出ずっぱりのハ・ジョンウの主観で画像とドラマを構築し、カメラは彼から殆ど離れることはないのである。
それに、キャスターの表情とテロリストの声が、ぶつかりあうことでの緊迫感も並々ならぬものがあり、そこに周囲の思惑まで絡まり合う絶妙の構成の果てに、怒涛のクライマックスを迎えるのですから。犯人側の要求には「独占生中継したかったら21億ウォン振り込め」と、それが、他局に独占されたくないから局側がお金を振り込むんですから。
それに、犯人は他のスタジオにいる女性キャスターのマイクを爆破したり、警視庁長官のイヤホンを爆破したり、盗聴や盗撮したりって、どうやって犯人が仕掛けたのかが謎ですよね。
最後に明かされる犯人側の動機も、2年前に建設現場作業員だった自分の父親が、国に抹殺されている。だが、国からはお金も謝罪もない。だから「大統領、謝罪しろ」と要求するわけ。当然のごとく政府はずっと無視し続けていた。
ラストなんて、ヨンファと犯人が対面して和解するんですから。ですが、次の瞬間に犯人が狙撃されてしまう。それに、ヨンファも撃たれそうになる。つまりマスコミと政府の情報操作で共犯にされてしまうんですよ。犯人が狙撃された瞬間視聴率なんて凄いんでしょうね。そして、ニュースでは「犯人の言っていることは全部ウソで、政府はテロに勝ちました」と言っている。
それで、ヨンファが怒って「もうこんな国に用はない」と、犯人が残した爆弾のスイッチを押してしまう。ビルが崩れるし、この展開には韓国という国の闇をみたような気がしました。この映画をみて、あのセウォル号転覆事件を思い出してしまいました。だからっていうわけではないが、脚本はいいのに、リアリティがなさすぎが惜しいですよね。
ラストもそう、日本映画ではおそらくOKが出ないもであろう。しかし、そういった韓国映画独自の描き出す基盤には、やはり恨みなどの伝統情緒が今なお深く内在していることを改めて確信したと思います。
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