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Channel: パピとママ映画のblog
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トム・アット・ザ・ファーム ★★★

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監督第3作「わたしはロランス」の劇場公開によって日本でも注目を集めるカナダの若き才能グザビエ・ドランが、カナダ東部ケベック州の雄大な田園地帯を背景に、閉鎖的な家族と地域を舞台に描いた心理サスペンス。恋人の男性ギョームが亡くなり悲しみに暮れるトムは、葬儀に出席するためギョームの故郷を訪れる。
しかし、ギョームの母アガットはトムの存在を知らず、息子の恋人はサラという女性だと思っている。トムの存在を唯一知るギョームの兄フランシスは、トムに恋人であることを隠すよう強要。当初は反発を覚えたトムだったが、次第にフランシスの中に亡きギョームの姿を重ねるようになり……。カナダの人気劇作家ミシェル・マルク・ブシャールが2011年に発表した同名戯曲の映画化。

<感想>「わたしはロランス」は観ましたがかなり抵抗がありました。まだ感想は投稿していません。この映画は、なんの予備知識もなく観ると、かなり歯がゆく感じるかもしれませんね。作品の内容に、主人公が少しは心当たりがあるものの、何故にこんな目に遭わなければならないのか?・・・。そんな人間の不安を突いて、初めから終わりまで、サスペンスと恐怖に満ちた仕上がりであった。

母親のリズ・ロワ演じるアガットが優しい慈母のように見えて、かえって怖いように感じた。兄のフランシスから精神的脅迫を受けるトム。フランシスは弟がホモセクシュアルであったことを母親に知られたくないからだ。だが、その仕打ちが徐々に肉体的なものに変わっていき、でも、トムはそこを去ることはせず、むしろマゾ的にフランシスの行為を受け入れるのだ。

トウモロコシ畑に追い詰めて、乱暴するフランシス。トウモロコシの葉は人間の柔らかな肌をナイフのような切れ味で皮膚を切り裂くのだ。血だらけになりながらも、抵抗しつつも、その場所を去ることをせずに、農場の手伝いをするトム。

かつて弟にそうしたかのように、トムと農場の納屋でタンゴを踊るフランシス。牛の出産をトムに手伝わせる。フランシスを演じているピエール=イヴ・カルディナルの暴力的な剥き出しの性的アピールが強烈で、グザヴィエ演じるトムの少年のような繊細な風貌との、危い関係性を暗示してゆくのだ。

どうやら、トムとフランシスの関係は、かつてのギョームとフランシスの兄弟のそれをなぞっているらしいのだ。まさか、兄弟で近親相姦なんてあり得るのか?・・・そんなミステリー・サスペンス的な感じを匂わす。

母親が亡くなった弟の恋人のことを聞くのだが、ホモセクシュアルのギョームに女性の恋人がいたなんて初めて耳にする。そして、トムが電話をしてサラという女性が家にやってくる。母親は葬式にも出席せず、花束の一つも持って来ないサラに不信感を抱くも、それでも息子の恋人ということでもてなすのだ。

サラは、「ギョームはみんなと寝ていたわ」という。女の悪意の兆発である。
ラストシーンでトムが車で逃げる時に、ガソリンを入れるスタンドで、一瞬出てくる口裂け男と、その背後にいる獣じみた怖い男が、アメリカ国旗を飾ったジャンパーを着たフランシスの後姿には、何か意味するものがあるのだろうか。流れているのが、カナダで育ったゲイのシンガー・ソングライターの歌、「アメリカにはもううんざりだ」というエンディング・ミュージックが流れるのも、なんだか可笑しく思った。
2014年現在、25歳のグザヴィエ・ドラン監督は、6歳で俳優デビュー、19歳のときに主演も兼ねて撮った初監督作『マイ・マザー』(2009年)でカンヌ国際映画祭の3つの賞を受賞、その後の作品も名だたる映画祭で受賞するなど、生まれながらの天才といってもいい映画人である。
2014年劇場鑑賞作品・・・363 映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング


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