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わたしは生きていける★★★.5

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メグ・ローゾフのベストセラー小説を基にした、異色の青春ドラマ。テロリストによる核爆発と第3次世界大戦によって混乱するイギリスを舞台に、16歳の少女が織り成す決死のサバイバルをいとことの恋を交えながら映し出す。監督は『ラストキング・オブ・スコットランド』などのケヴィン・マクドナルド。『ハンナ』などのシアーシャ・ローナンを筆頭に、『ディファイアンス』などのジョージ・マッケイ、『インポッシブル』のトム・ホランドらが結集。絶望の中でも希望をつかもうとするヒロインの姿に胸を打たれる。
あらすじ:生後間もなく母親がこの世を去るなど、複雑な家庭環境で育ってきた16歳の少女デイジー(シアーシャ・ローナン)。彼女は会ったことのないいとこたちと過ごすため、1人でニューヨークからイギリスへとやってくる。純真ないとこたちと触れ合い、自意識過剰で反抗的だったデイジーの心境に変化が生じる。やがて、いとこの長兄エディ(ジョージ・マッケイ)に惹(ひ)かれるように。そんな中、ロンドンで核爆発テロが起き、第3次世界大戦が勃発する。戒厳令が敷かれ、デイジーたちは軍によって離れ離れになってしまう。

<感想>この映画を観て思ったこと。戦争とは子供たちにとって「絶望と希望、死ぬことと生きること」そして、「生と死」なんてそんな手垢にまみれたものとは違う、胃をぎゅっと締め付けられるほど鮮烈なのだ。
16歳の彼女が、目の周りを黒く塗ってパンクファッションに身を包み、黒いマニキュア、タイツがアナだらけを穿いて反抗的なシアーシャ・ローナン。すでに美少女路線からジャンル女優への道をばく進中の彼女。次回作がライアン・ゴズリングの初監督作品だそうで、これまたクセの強い選択ですよね。

イギリスの叔母を訪ねた孤独な少女と、それを受け入れる天真爛漫な従兄弟たちと大自然。そんな彼女の心を溶かして行くのが従兄のエディ。中々イケメン青年の『ディファイアンス』に出演していたジョージ・マッケイ。
牧歌的な田園風景に、突然暴風と雨、そして死の灰が降り注ぐ。モチーフは第三次世界大戦のようだが、基本はラノベ的な青春ラブストーリーなのだ。だから、結果としては戦争の惨たらしさをやたらリアルに描写した、強烈な異色作に出来上がってしまったようだ。
第三次世界大戦という架空の戦時下を舞台にした話題のジュブナイル小説を、アカデミー長編ドキュメンタリー賞監督が描いた本作。まるで英国版「ザ・ロード」とも言うべき、美しくて残酷な臨場感に背筋が凍ります。

サバイバルものを見ている時の「自分だったらどうする?」というイマジネーションすら遮断するようなリアリティは凄いにつきます。そして、本作のもう一つのテーマは、失楽園に放り出されたアダムとイブのような初々しいラブストーリーになっているんですよ。

従弟同士の運命的な出会い、そこへ「ロンドンで核爆発が発生」という大異変が勃発。この事態でデイジーが「全部私のせい。私の行くところで悪いことが起きるの」と、自意識過剰のやさぐれた孤独な魂が、少女戦士へと変わる。映画の中で、彼女の囁きに似た声が独りよがりに自分を追い込むような感性。
そして聖母のように変化するシアーシャ・ローナンの演技には、目が離せないし、「サンシャイン/歌声が響く街」でメインキャストを演じたジョージ・マッケイがエディを演じてすこぶる良かった。でも、これって近親相姦なのでは。

ですが、戦時下を舞台にした映画とはいえ、派手なコンバットシーンはなく、少女たちは、生ごみのように棄てられた野菜(じゃがいも、ニンジン他)を拾い集め、それに畑の重労働、女子と男子の別々の区域に別れて暮らす知らない人たちとの暮らし。
そして、戦争と言うと必ず兵士たちのレイプは日常茶飯事。弱い女子たちが獣のような男たちに弄ばれ殺される。彼女たちだけではない。幼い男の子たちの避難地域では、集団で殺害されて積み上げられている山のような死体が。黒いビニール袋に包まれたその死体の中には、従兄弟のメガネっ子がいた。

こんなにも死体が出て来る映画に、希望とか見出されるのだろうか。観ていて必ず生きて家に帰るというデイジーの強い気持ちが、一緒に逃亡していた幼いパイパと共に、放射能に汚染された川や森の木の実など、生きるための最大限の物を確保するため、“生きる”という厳しさを改めて感じました。しかしながら、映像の中では小さなリュック一つで、水は汚染されて飲めないし食べ物だって出て来る時に少ししか持ってこなかった。どうやって飢えをしのいだのか描かれていないのが残念ですね。

この映画を観て、日本の我々が観ると「3.11」のイメージに近いようにもとれる。いくら避難区域に指定されても、この家を絶対に離れないと、エディが頑張ろうとするシーンなど。長い道のりを歩いて帰るデイジーの強靭な精神力に脱帽しました。
大人の勝手な争いで故郷を追われた子供たちのサバイバルを通して、未来への不安と希望を映し出している優れた作品だと思います。
2014年劇場鑑賞作品・・・339  映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング



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