『かいじゅうたちのいるところ』などの鬼才スパイク・ジョーンズが監督と脚本を手掛けたSFラブストーリー。人工知能型OSの声に惹(ひ)かれる主人公と、生身の女性よりも魅力的なシステムとの恋のてん末を描く。『ザ・マスター』などのホアキン・フェニックスが主演を務め、彼が恋心を抱く声の主を『マッチポイント』などの女優スカーレット・ヨハンソンが好演。近未来的な物語に息を吹き込む彼らの熱演が胸に響く。
<感想>スパイク・ジョーンズが長篇では初の単独脚本で描く近未来の風変わりなラブ・ストーリー。恋するホアキンの可愛さにノックアウトされてしまった。「ザ・マスター」では臭気迫るものだった繊細な心身の揺らぎが、全く違うベクトルでアウトプットされているのだ。
女性型OSのサマンサは、秘書機能アプリ、すなわちSiriのようなもの。例外なく首をかしげられるコメディではないのだ。「Siriに恋する話」を素直にシリアスに受け止められようか。サマンサのOSが入ったスマホは、折り畳みしき名刺入れ程度の大きさで、音声は片耳イヤホンで聞く。
私たちの明日を今とつながる生活感を見せてくれる、生活と人生を予見して見せた作品でもあります。着想が今日的で、日常描写がリアルである。このごく近未来的な生活感の描写はまことにもって見事だと思った。
私はガラケーしか持ってない希少種族だが、この映画の中で観る明日への生活感は、何故だか凄く良くわかる。主人公を演じたホアキン・フェニックスが、こんなにも明るく近未来人種を演じているのも、心地の良い驚きでした。そして、スカーレット・ヨハンソンが電脳女性なのも憎い配役でしたね。
ですが、これはまず愛の寓話と考えられる。ホアキン・フェニックス演じるセオドアの職業は、手紙の代書屋である。恋人や親などに手紙を書きたいのだが、書き方がわからない人のために、心のこもった愛の手紙を代筆するのである。セオドアは、コンピューターの音声認識を使って書いているので、まるで愛の言葉をカメラに向かって、観客に告げているように見えた。この手紙をサマンサが本にしてくれる感激のエピソードも添えてあります。
愛の言葉を使いこなす専門家であるはずの彼なのだが、同時に恋愛にしくじって苦悩する男であるのだ。幼馴染の妻キャサリン(ルーニー・マーラ)とは現在離婚調停中。彼はまだ、妻に未練があり、ひたすら昔の良かったことを思い返してばかりいる。理想の恋を夢見て追憶にひたる男なのだ。
そのセオドアのスマホに、新しいOSがやってくる。対話型の人工知能コンシェルジュ、サマンサはスカーレット・ヨハンソンの声でセクシーに話しかけてくる。舞台こそ未来だが、セオドアの置かれている立場は現代人そのもの。実体のない彼女は、音声がパーソナリティの核であり、そのキャスティングも聞きどころであり、恋愛における声の重要性を実感してしまう。
アメリカでは自分のPCと婚姻届を出そうとした男性が現れたらしいが、時代が追いついたのか、それともS・ジョーンズにとってはもはや郷愁なのか?・。
声だけで主演女優賞と獲るわけだから、スカーレット・ヨハンソンの存在感の魅惑たるや。このOSは敬虔から進化していくので、並みの人間では太刀打ちできない。恐ろしいことに人間の知覚も経験の集積に困るのだから、OSの方がよっぽどいいと思えてくる。
世界が快適なものとなればなるほど、人は孤独になってゆく。セオドアは人間的な接触を求めながらも、現実の女性には常にギャップを抱えずにはいられない。デートをしてみるのだが、結局はその相手に満足することはできないだろう。
OSのサマンサに恋する彼は、一種の自己愛とも言うべきだ。人工知能相手にえんえんと独り言をつぶやいている男。学習機能を持つサマンサは、彼の興味と好みを学び、それに合わせて成長する。世界のすべての知識を持ち、セオドアの好みを知り尽くした相手なら、何でも望みどおりの答えを返してくれるはずである。ですが、自分専用のOSサマンサだと勘違いをしていたセオドアに、驚くべき事態がやってくるのだ。
リアルにセオドアに絡んでくる女性には、元妻のルーニー・マーラや、オリヴィア・ワイルド。それに親しい隣人のエイミー・アダムスのようなとびっきりの美女ばかり。両親との関係も不明だし、職場の人間とは個人的に付きあいはない。だから、セオドアには、生身の人間との愛と人間的関係は一切手に届かないところにある。愛とは何かを知り尽くしているセオドアこそが最も孤独な存在なのである。
2014年劇場鑑賞作品・・・280 映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング
<感想>スパイク・ジョーンズが長篇では初の単独脚本で描く近未来の風変わりなラブ・ストーリー。恋するホアキンの可愛さにノックアウトされてしまった。「ザ・マスター」では臭気迫るものだった繊細な心身の揺らぎが、全く違うベクトルでアウトプットされているのだ。
女性型OSのサマンサは、秘書機能アプリ、すなわちSiriのようなもの。例外なく首をかしげられるコメディではないのだ。「Siriに恋する話」を素直にシリアスに受け止められようか。サマンサのOSが入ったスマホは、折り畳みしき名刺入れ程度の大きさで、音声は片耳イヤホンで聞く。
私たちの明日を今とつながる生活感を見せてくれる、生活と人生を予見して見せた作品でもあります。着想が今日的で、日常描写がリアルである。このごく近未来的な生活感の描写はまことにもって見事だと思った。
私はガラケーしか持ってない希少種族だが、この映画の中で観る明日への生活感は、何故だか凄く良くわかる。主人公を演じたホアキン・フェニックスが、こんなにも明るく近未来人種を演じているのも、心地の良い驚きでした。そして、スカーレット・ヨハンソンが電脳女性なのも憎い配役でしたね。
ですが、これはまず愛の寓話と考えられる。ホアキン・フェニックス演じるセオドアの職業は、手紙の代書屋である。恋人や親などに手紙を書きたいのだが、書き方がわからない人のために、心のこもった愛の手紙を代筆するのである。セオドアは、コンピューターの音声認識を使って書いているので、まるで愛の言葉をカメラに向かって、観客に告げているように見えた。この手紙をサマンサが本にしてくれる感激のエピソードも添えてあります。
愛の言葉を使いこなす専門家であるはずの彼なのだが、同時に恋愛にしくじって苦悩する男であるのだ。幼馴染の妻キャサリン(ルーニー・マーラ)とは現在離婚調停中。彼はまだ、妻に未練があり、ひたすら昔の良かったことを思い返してばかりいる。理想の恋を夢見て追憶にひたる男なのだ。
そのセオドアのスマホに、新しいOSがやってくる。対話型の人工知能コンシェルジュ、サマンサはスカーレット・ヨハンソンの声でセクシーに話しかけてくる。舞台こそ未来だが、セオドアの置かれている立場は現代人そのもの。実体のない彼女は、音声がパーソナリティの核であり、そのキャスティングも聞きどころであり、恋愛における声の重要性を実感してしまう。
アメリカでは自分のPCと婚姻届を出そうとした男性が現れたらしいが、時代が追いついたのか、それともS・ジョーンズにとってはもはや郷愁なのか?・。
声だけで主演女優賞と獲るわけだから、スカーレット・ヨハンソンの存在感の魅惑たるや。このOSは敬虔から進化していくので、並みの人間では太刀打ちできない。恐ろしいことに人間の知覚も経験の集積に困るのだから、OSの方がよっぽどいいと思えてくる。
世界が快適なものとなればなるほど、人は孤独になってゆく。セオドアは人間的な接触を求めながらも、現実の女性には常にギャップを抱えずにはいられない。デートをしてみるのだが、結局はその相手に満足することはできないだろう。
OSのサマンサに恋する彼は、一種の自己愛とも言うべきだ。人工知能相手にえんえんと独り言をつぶやいている男。学習機能を持つサマンサは、彼の興味と好みを学び、それに合わせて成長する。世界のすべての知識を持ち、セオドアの好みを知り尽くした相手なら、何でも望みどおりの答えを返してくれるはずである。ですが、自分専用のOSサマンサだと勘違いをしていたセオドアに、驚くべき事態がやってくるのだ。
リアルにセオドアに絡んでくる女性には、元妻のルーニー・マーラや、オリヴィア・ワイルド。それに親しい隣人のエイミー・アダムスのようなとびっきりの美女ばかり。両親との関係も不明だし、職場の人間とは個人的に付きあいはない。だから、セオドアには、生身の人間との愛と人間的関係は一切手に届かないところにある。愛とは何かを知り尽くしているセオドアこそが最も孤独な存在なのである。
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