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喰女−クイメ−★★★.5

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『一命』の三池崇史監督と市川海老蔵が再びタッグを組み、有名な歌舞伎狂言「東海道四谷怪談」を題材に描く衝撃作。柴咲コウがヒロインを演じ、虚構と現実の世界が交錯しながらもつれ合う男女の愛と狂気を浮き彫りにする。『悪の教典』などの伊藤英明や『ミロクローゼ』などのマイコ、『永遠の0』などの中西美帆らが共演。身の毛もよだつような戦慄(せんりつ)の物語に背筋が凍る。
あらすじ:舞台「真四谷怪談」の看板女優である後藤美雪(柴咲コウ)の推薦により、彼女と付き合っている長谷川浩介(市川海老蔵)が相手役に選ばれる。二人はお岩と伊右衛門にふんすることになり、鈴木順(伊藤英明)と朝比奈莉緒(中西美帆)らの共演も決定する。こうして舞台の稽古がスタートするのだが。

<感想>この作品を観て男が女に感じる根源的な怖さが、すべて描かれているといっていいでしょう。男の嘘をすぐに見破る勘の鋭さ、嘘だと知りながらも顔では笑って見せる二面性、そして男が絶対に体験できない妊娠と出産、・・・。
オカルト的な恐怖とは異なる、リアルな怖さに女の情念というか、怨念のようなものが、男に虐げられ、裏切られた女の逆襲劇のような感じもしました。
劇中劇というアイデアが功を奏している。同棲中である人気女優の美雪と遊び癖のある男優の浩介が、舞台の「真四谷怪談」で共演することになり、稽古が進むにつれて、二人がどこまでが役作りなのか、本音なのか定かではない虚構と、現実が入り交じった迷宮の世界へとハマっていく。

浩介のトラブルメーカーぶりは、世間の注目を常に集める海老蔵自身のキャラクターをどこか彷彿とさせ、歌舞伎でも演目の一つである「四谷怪談」の伊右衛門の役どころなんて、海老蔵の十八番であり演技というよりも素で演じているように見えました。

また「バトル・ロワイヤル」以来ともいえる強烈なキャラクターである、美雪とお岩を演じた柴咲コウが、嬉々として熱演している姿も見ものです。それは、役者として完全に存在感をしっかりと放っていて海老蔵を喰っていましたね。
それに、浮気相手のお嬢様、梅の乳母役の根岸季衣さんの怖い顔、お歯黒しているので余計に怖かった。もう一人、生臭坊主の役がハマっている伊藤英明の、怪演が光るサイコロジカルな恐怖譚、あの真面目な役ばかり演じていた伊藤英明さん。そういえば「悪の教典」では悪党を演じていた。今回も楽しんでいるように感じられたので、いいとしましょう。

観客はいわば三重構造の劇中劇を楽しむことになります。楽屋口に置いてある「着到板」も怖さを引き立てる小道具として有効に使えていると思う。仕事を口実に梅役の若い女優と火遊びに興じる浩介、食事の用意をして貞淑な妻を装う美雪。ベビーカーを押すカップルを見ながら「子供がいると幸せかな」と何気の無い会話でお互いの腹を探り合う二人。一緒に暮らす男女の虚実なやりとりが、後半の血みどろなシーンをいっそう引き立てます。

女性の執念深さって、同性からみても凄いなって思いますね。そういった感情は江戸時代も現代も、きっと変わらないものなんでしょう。
浩介が浮気をしている女優の朝比奈莉緒との、ベッドの中で会話する「伊右衛門ってどうすれば幸せになれたのかな」と、それに対して浩介は「伊右衛門は幸せになんかなれないよ」なんて、恐怖シーン以外での男女の対愛のないやりとりが妙に印象に残ります。

インパクトのあるシーンでは、美雪がお腹の子供を風呂場で一人で堕ろすシーン。浩介が帰って来てベッドに寝ている美雪を起こす。すると下半身が血で真っ赤に染まって、顔が半分崩れてお岩のような顔。そして「私がいたらぬばかりで申しわけないことでございます」の台詞が、舞台のお岩とシンクロしているのだ。

それから、美雪の首を絞め殺す浩介。黒いビニールシートが張りめぐされ、白いベットには真っ赤な血が、それに水槽の真っ赤な金魚。舞台稽古では、梅が白い着物で何かを喰っている。それがへその緒が付いた嬰児で、観るとお岩が食っているではないか。この恐怖はなんとしたことか。それに、浩介が撮影所へ車で入ろうとすると、フロントガラスに鉄板が飛んできて浩介の首をちょん切ってしまう。その首が、楽屋で美雪の足もとに転がっているという三池流のスプラッターは、過激で血の気が引きそうになりますから。
それにしても、この映画の中でのリハーサルが行われている舞台稽古のシーンでの、大胆なセットと回転舞台の使い方の鮮やかさは見事でしたね。三池監督作品にしては、珍しいほど説明を俳したシックな造りの妄想譚です。舞台稽古にお岩と美雪の混濁した、愛の狂気と化していく境目の曖昧さは何とも魅力的でした。
結局一番怖いのは人間である、もしくは人間の心である。というのは、ホラーやサイコスリラーの定番というか、そこに着地すれば、とりあえずは収まりがいい感じになるという結論であるから。
2014年劇場鑑賞作品・・・274  映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング


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