100歳を超えてなお現役の映画監督である、ポルトガルの巨匠マノエル・デ・オリヴェイラ監督が手掛けた家族の物語。ある日、こつぜんと姿を消した息子の帰りを待ちわびる老夫婦と義理の娘の質素な日常を淡々と描く。『楽園からの旅人』などのマイケル・ロンズデール、『ふたりのアトリエ 〜ある彫刻家とモデル』などのクラウディア・カルディナーレ、『クロワッサンで朝食を』などのジャンヌ・モローらが共演。
あらすじ:小さな港町で帳簿係をしている年老いたジェボ(マイケル・ロンズデール)は、妻のドロティア(クラウディア・カルディナーレ)、息子ジョアンの妻ソフィア(レオノール・シルヴェイラ)と慎ましく暮らしている。ジョアン(リカルド・トレパ)は8年前にある事件を起こし失踪していて、ドロティアはずっと嘆きながら帰りを待ちわびているが、ジェボは妻には何かを隠しているようだ。そこにジョアンが何の前触れもなく帰宅する。ずっと不在だった息子の突然の帰宅に家族は動揺するが、貧困の中で暮らす父やその友人を罵倒するジョアンは、再び事件を起こす…。
<感想>100歳を超えた現役最高齢の映画監督として知られるポルトガルの巨匠であるマノエル・デ・オリヴェイラが贈るヒューマンドラマ。監督キャリア81年目の作品というだけで気が遠くなるようだ。
このような密度の濃い、そして形の整った作品を発表するというのは、むしろ空恐ろしいくらいである。しかも、ここ二十年来、年に1本のペースだというのだから、とても人間業とは思えない。ですが、撮りたい画面だけ撮っているその姿勢が、映画をますます大胆に未知の領域に導いている様が凄まじく感じられた。
ポルトガルの作家の1923年の戯曲を、自らの翻訳でフランス語映画に仕立て直したのだそうである。何とも古典的な物語が、まるで舞台劇でもあるかのように、ほぼ全てのシーンが小さな家の屋内で撮られ、限られたスペースで、最小人数の会話劇と、各シーンの構図は巧みに変わり、家族間や知人といった登場人物たちの関係性や、距離感の違いをとらえて、ミニマムながら最高にスリリングな作りになっている。しかし、台詞回しがダラダラと長くて眠気をもようしてしまう。会話劇ではなく、ただ、自分の台詞を長々と言っているような感じで、好き嫌いがあるでしょう。
マイケル・ロンズデールの妻役が、クラウディア・カルディナーレで、その立ち振る舞いを見るだけでも失神しそうになる。そして、コーヒーを飲みにジェボの家を訪れる友人たちにジャンヌ・モローと、老女優たちの共演にも見るだけの価値はあると思いますね。
疾走した息子の妻がお馴染みのレオノール・シルヴェイラで、三人で暮らす部屋が映画の大部分を占め、最小限のキャメラ・ポジションで人物の出入りを捌き、最大の驚きを与えるラストシーンにも、まるで狐につままれた感じがした。
父親のジェボは、久しぶりに帰って来た息子ジョアンの眼の前で、会計帳簿を記入し、ところが、このカバンを息子が持ち去ることを見通してかのように、大金の入ったカバンをロッカーにしまう。そして、皆が寝静まった頃に、息子はカバンを盗み逃走する。
次の日、父親は息子の不始末を自分が盗んだと警察に逮捕されるのだが、これは、父親の息子に対する愛情の現れなのか、それとも、自分も金に困って会社の金を盗んだということなのか。愛する妻に息子が盗んだと言わないでおくれと、嫁のソフィアに懇願する父親。犯罪歴のある息子を庇いながら甘やかしている父親だからこそ、幾つになっても犯罪から逃れられない息子で終わってしまいそうだ。
何とも古典的な物語が、沈着かつ的確に描写され、これはもういぶし銀の芸とでもいうほかない。もっとも一般向けとは言い難いけれど。
実の息子が犯罪者となり逃亡中で、家族を省みないなかで、養父母と暮らす嫁のレオノール・シルヴェイラと舅である年老いたジェボ(マイケル・ロンズデール)との共犯的で慈愛に満ちたツーショットは、まるで邦画の「東京物語」のようにも感じた。
2014年劇場鑑賞作品・・・252 映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング
あらすじ:小さな港町で帳簿係をしている年老いたジェボ(マイケル・ロンズデール)は、妻のドロティア(クラウディア・カルディナーレ)、息子ジョアンの妻ソフィア(レオノール・シルヴェイラ)と慎ましく暮らしている。ジョアン(リカルド・トレパ)は8年前にある事件を起こし失踪していて、ドロティアはずっと嘆きながら帰りを待ちわびているが、ジェボは妻には何かを隠しているようだ。そこにジョアンが何の前触れもなく帰宅する。ずっと不在だった息子の突然の帰宅に家族は動揺するが、貧困の中で暮らす父やその友人を罵倒するジョアンは、再び事件を起こす…。
<感想>100歳を超えた現役最高齢の映画監督として知られるポルトガルの巨匠であるマノエル・デ・オリヴェイラが贈るヒューマンドラマ。監督キャリア81年目の作品というだけで気が遠くなるようだ。
このような密度の濃い、そして形の整った作品を発表するというのは、むしろ空恐ろしいくらいである。しかも、ここ二十年来、年に1本のペースだというのだから、とても人間業とは思えない。ですが、撮りたい画面だけ撮っているその姿勢が、映画をますます大胆に未知の領域に導いている様が凄まじく感じられた。
ポルトガルの作家の1923年の戯曲を、自らの翻訳でフランス語映画に仕立て直したのだそうである。何とも古典的な物語が、まるで舞台劇でもあるかのように、ほぼ全てのシーンが小さな家の屋内で撮られ、限られたスペースで、最小人数の会話劇と、各シーンの構図は巧みに変わり、家族間や知人といった登場人物たちの関係性や、距離感の違いをとらえて、ミニマムながら最高にスリリングな作りになっている。しかし、台詞回しがダラダラと長くて眠気をもようしてしまう。会話劇ではなく、ただ、自分の台詞を長々と言っているような感じで、好き嫌いがあるでしょう。
マイケル・ロンズデールの妻役が、クラウディア・カルディナーレで、その立ち振る舞いを見るだけでも失神しそうになる。そして、コーヒーを飲みにジェボの家を訪れる友人たちにジャンヌ・モローと、老女優たちの共演にも見るだけの価値はあると思いますね。
疾走した息子の妻がお馴染みのレオノール・シルヴェイラで、三人で暮らす部屋が映画の大部分を占め、最小限のキャメラ・ポジションで人物の出入りを捌き、最大の驚きを与えるラストシーンにも、まるで狐につままれた感じがした。
父親のジェボは、久しぶりに帰って来た息子ジョアンの眼の前で、会計帳簿を記入し、ところが、このカバンを息子が持ち去ることを見通してかのように、大金の入ったカバンをロッカーにしまう。そして、皆が寝静まった頃に、息子はカバンを盗み逃走する。
次の日、父親は息子の不始末を自分が盗んだと警察に逮捕されるのだが、これは、父親の息子に対する愛情の現れなのか、それとも、自分も金に困って会社の金を盗んだということなのか。愛する妻に息子が盗んだと言わないでおくれと、嫁のソフィアに懇願する父親。犯罪歴のある息子を庇いながら甘やかしている父親だからこそ、幾つになっても犯罪から逃れられない息子で終わってしまいそうだ。
何とも古典的な物語が、沈着かつ的確に描写され、これはもういぶし銀の芸とでもいうほかない。もっとも一般向けとは言い難いけれど。
実の息子が犯罪者となり逃亡中で、家族を省みないなかで、養父母と暮らす嫁のレオノール・シルヴェイラと舅である年老いたジェボ(マイケル・ロンズデール)との共犯的で慈愛に満ちたツーショットは、まるで邦画の「東京物語」のようにも感じた。
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