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危険な関係 ★★★.5

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これまでに何度も映像化されてきたピエール・コデルロス・ド・ラクロの古典をチャン・ツィイー、チャン・ドンゴン、セシリア・チャンというアジアを代表する豪華スターの共演で映画化した文芸ラブ・サスペンス。舞台を18世紀のパリから1930年代の上海に移し、名うてのプレイボーイが仕掛ける危険な恋愛ゲームの行方をスリリングに綴る。監督は「八月のクリスマス」「四月の雪」のホ・ジノ。
あらすじ:1931年の上海。そこでは、富豪たちが享楽的な生活を謳歌していた。ある日、女性実業家のジユは、遊び友だちのプレイボーイ、イーファンに背徳的な提案を持ちかける。それは、自分を捨てて年端もいかない少女と結婚した男への復讐として、その少女を寝取って欲しいというもの。ところが百戦錬磨のイーファンにとって、その程度の相手は簡単すぎて面白味がない。そんな彼が目を付けているのは、亡き夫の遺志を継ぎ慈善活動に尽力する知的で清楚な未亡人フェンユーだった。そこで2人は、貞淑なフェンユーがイーファンの誘惑に負けるかどうかを巡ってみだらな賭けを始めるが…。

<感想>本日で上映終了とのことで急きょ観賞。ド・ラクロ作の小説は、今までに何度も映画になっている。この作品は中国映画らしいが、監督ホ・ジノは韓国人。出演者は中国と韓国の混成である。時代設定は、日本が中国東北部に満州国を作ろうとしていた1930年代の後半で、映画は、それなりに時代の雰囲気や気分を出していると思った。ですが、そのことと、描かれる恋の駆け引きの危ういスリルやサスペンスがうまく絡んでいるようには感じ取れなかった。
何とまぁ、ゲームのような恋の駆け引きをして、ゲームに買って勝負に負ける、という言葉もあるが、それはやはり敗者である。今回のプレイヤーは二人、銀行の女取締役であるジユをセシリア・チャンが、その元カレでプレイボーイのイーファンをチャン・ドンゴンが演じている。戦場は1931年の上海。
18世紀に書かれたラクロの原作では夫婦であるジユとイーファンの関係は、元恋人同士にして性別を超えた悪友のような同志のようなものに置き換わっている。これが事を複雑にさせる。

イーファンは賭けの報酬としてジユ本人を要求するが、本心からヨリを戻したがっているのか、単なる制服欲なのか、本人たちも分からなくなってしまっていることがややこしいのだ。
夫婦が自分たちの関係を維持するために、他人を利用する物語は多々あるけれど、それが悪趣味と呼ぶのか純愛と呼ぶかは紙一重ですよね。

恋愛の形も多種多様になってきた現代においては、ともすれば陳腐に映ってしまいがちなさや当て劇の格調を高めているのは、何と言ってもヒロインのチャン・ツーイーの存在感です。美しすぎる、チャン・ツーイー。「グランドマスター」でも輝いた凛とした美を併せて可憐さもあって本当に美しい。イーファンが狙う貞淑な未亡人フェンユーを演じた彼女は、顔をみているだけで、画面がもつという、最もシンプルにして得難い体験をさせてくれる。表情に、動向の一つ一つが、息を詰めて次の展開を見守っているようなサスペンスとなっているのだ。

しかし、ひとたびイーファンと結ばれた彼女は、一転して恋する女の無邪気な顔を見せる。その姿はまるでチャン・ツーイーの映画デビュー作であった、「初恋のきた道」で、ハニカミながら一途に山村を走っていた少女を思い出させます。あの時のツーイーが大好きな先生を思って、せっせと作っていたきのこ餃子は本当に美味しそうだった。ですが、せっかくの手料理は先生の元に届く代わりに、地面に飛び散ることとなってしまう。

そして、一人暮らしを始めたささやかな部屋で、フェンユーがイーファンのために心を込めて包んだ餃子は、またもや過酷な運命をたどるという展開になっています。
それまで、気高い女、可愛いらしい女としての一線を崩さなかったツーイーが、餃子の入った籠を手に屋敷を後にするとき、美しい顔をグシャッと歪めて苦しみを露わにするシーンが。彼女もまた敗者なのだ。ヒロイン二人を自立した女性として描く脚色が現代ふうですね。
旋回するキャメラと三拍子のテーマ音楽からすると、主演3人の力関係でくるくる変転する展開を期待したいところなのだが、この原作の以前の映画化作品にもまして、3人中一人だけが圧倒的権力を握っているように見えるため、ちょっと不釣り合い感じがした。
劇場シーンのサスペンス以外は、予想の枠内に収まる演出ですけど、1930年代の上海を再現した画面と、クローズアップだけで画面を支えることのできるスター3人の魅力で見せているのは良かった。
一方、モテル男とは何か?・・・プレイボーイとは何かを考えさせてくれたチャン・ドンゴンでした。ともあれ、繰り返される「危険な関係」映画化全作品を、この機会にもう一度観たくなる秀作でしょう。
2014年劇場鑑賞作品・・・86  映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング


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