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ソウルガールズ ★★★

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オーストラリアの先住民族であるアボリジニ初の女性ボーカルグループ、サファイアズをめぐる実録ドラマ。1960年代末のオーストラリアで、人種差別などの壁を乗り越えながら音楽シーンで活躍していく3姉妹といとこの姿を追い掛ける。監督はテレビシリーズなどを手掛けてきた新鋭、ウェイン・ブレア。オーストラリアの人気歌手ジェシカ・マーボイや、『裸足の1500マイル』などのデボラ・メイルマンらが、ヒロインたちを快演する。夢を持つことの素晴らしさを描いた物語はもとより、魂の込もった歌唱シーンも必見。

<感想>アボリジニ版の「ドリームガールズ」と言ってもいいくらい、美味しいエキスをそのままに、いや、その上を行っていた。彼女たちにとって、シンガーは夢の職業である以上に、狭い世界や差別から飛び出すきっかけにもなっていたのである。
歌が上手いといっても限りなく普通の人に近いからこそ、アイドルグループの舞台裏を追ったドキュメンタリー的な親近感もある。
1968年、舞台はオーストラリア。先住民のアボリジニたちが、後から入って来た白人社会から迫害されていた。アボリジニの特別保留地に住むゲイル(デボラ・メイルマン)、ジュリー(ジェシカ・マーボイ)、シンシアは、小さな頃から歌うことが大好きな3姉妹。その先住民族に対する偏見や差別に怯えながら育った。中でも、色が白い子供は政府が連れて行って、孤児院から子供のいない白人の家に養子に出される。

3人姉妹と従姉妹のケイ(色が白い)と一緒にカントリーミュージックを歌いながらシンガーとして成功をつかもうと奮闘していたのだが、コンテストに出場しても、先住民族に対する偏見や差別から落選させられてばかり。意気消沈する四人だが、それを見ていたミュージシャンを自称する男デイヴ(クリス・オダウド)と出会い、彼からソウルミュージックのレッスンを受ける。
そして、彼女たちはベトナムでアメリカ兵への慰問団のオーディションを受ける。彼女たちのカントリーソングを聞き、デイヴは「君たちは黒人なんだ。黒人たちのために歌いたければソウルを歌え」と言われ特訓する。もち踊りも付けて。4人のグループの名前は「ザ・サファイアズ」。

だが、アボリジニは、見た目が黒人でも白人でも、いずれにしても悲しい運命が待っていた。そんな4人がソウルを歌うことで、当時のアメリカ黒人の差別との戦いであった「公民権運動」と重ねており、キング牧師の暗殺もあった時代。
ウェイン・ブレアというなじみのない監督だが、達者なもので、演出のテンッポはいいし、キャスティングが最高です。人種差別の真っただ中、という時代色を際立たせず、さらりと描いているのもうまい。

残念なのが、ベトナムへ慰問に行く下りがいかにも安直だし、よくぞベトナム戦争を再現したもんだ。この戦時下の珍道中は、50年代アメリカ喜劇の時ならぬ復活を見ているようです。
振り付けや衣裳を整えてパフォーマンスが磨かれていく過程を見ているうちに、慰問歌手として戦地に赴く危険に、ショウビズ界の厳しさが観てとれます。

マネージャー役のクリス・オダウドと、ゲイル役のデボラ・メイルマンとの恋物語も素敵です。ですが、後の3人の彼女たちのラブストーリーが、薄っぺらなような欠点はあります。
女の子の夢とか恋とか挫折とか、爽やかな青春音楽映画だと思っていたら、ベトナム戦争に飛び、銃弾が飛んで来る、・・・その展開には驚きますから。
それでも、リード・ボーカルのジュリーを演じたジェシカ・マーボイが歌う「What a Man」が力強くてソウルフル。4人+男がそれぞれ個々の強さと魅力を煌めかせていて、その輝きはサファイア以上です。
てんこ盛りのソウル・ミュージックとロマンスと笑いと、まことに元気のいい楽しい映画です。
2014年劇場鑑賞作品・・・82  映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング

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