不治の病に冒され究極の選択を決心した母親と、その息子の絆を描いた人間ドラマ。『愛されるために、ここにいる』のステファヌ・ブリゼ監督がメガホンを取り、長年にわたって折り合いが悪く、互いにきちんと向き合ったことがない母と息子が過ごす最後の時間を静かに紡ぐ。尊厳死を望む母親の決断に苦悩する息子役に、『すべて彼女のために』などのヴァンサン・ランドン、厳格な母親を舞台でも活躍する『人生は長く静かな河』のエレーヌ・ヴァンサンが演じる。
あらすじ:麻薬密売が原因で服役していた中年男アラン(ヴァンサン・ランドン)は、出所後年老いた母親イヴェット(エレーヌ・ヴァンサン)が一人で暮らす家に身を寄せる。しかし再就職も思うようにいかず、昔から確執のある母と何かと衝突してばかりいた。そんなある日、アランは母親が末期の脳腫瘍に冒され死期が近く、スイスの施設で尊厳死を実行しようとしていることを知る。
<感想>この映画は、尊厳死という最も今日的なテーマを含む、最も古典的な親と子の話である。全く色合いは違うけれども、今年のアカデミー賞外国語賞を取った「愛、アムール」を想起させます。
人生の最期を迎える老女を通して、人とその愛について問いかける、フランスの新鋭ステファヌ・ブリゼによる人間ドラマ。
脳腫瘍の老齢の母親のところに、人生に失敗した中年の息子が身を寄せる。残された時間を共有する二人の繊細な演技を、カメラはシンプルに切り取って行く。二人のカットで切り返すスタイルが、「自殺幇助協会」の男女が訪れる場面では、彼らを挟んでテーブルの両端で向かい合う母子の穏やかなパンで、交互にフレームに入れていく手法。
長年こじれていた親子関係が、どちらかの死に直面したからといって、その日から急に修復できるわけでもない。残酷なようで、実に身につまされるシチュエイションである。子供にとって、自分の意思を持ち始めて来ると、親というものがうっとうしくなるものだ。それも中学生くらいになると、さらにそれが強くなってくる。親子の絆と良くいうけれど、それは親子の確執の始まりなのかもしれませんね。
だから、目の前にリミットが迫っているというのに、不器用すぎるやり方でしか歩み寄れないのだ。不器用すぎて、愛犬の命まで危険にさらすなんて、中々ハードコアですね。ですが、彼らにとっては、一つ一つが、言葉を介さないコミュニケーションとなり得ていたのではないでしょうか。無言の車中でも会話は成立していたと思うのだが。
ここでは、日常の行為が、とてつもなく観客の胸をかきむしる。とりわけ、犬に食べさせる料理を、淡々と作る場面。省略にも物語にも、逃げない映画の中での恐ろしいことといったらない。
いい歳をしてまともな仕事にもつけない息子に、母親は苛立ちを募らせる。息子はあれこれと小うるさく言う母親が疎ましい存在にしか思えない。母と子がいがみ合いながらも、内心では相手を想いやっているというシンプルでクールな物語です。
アランはボウリング場で出会ったクレメンという女性と深い仲になるが、二度目に会った時、職業を聞かれて口ごもり、気まずくなり別れる。むしゃくしゃした日々を過ごすアランは、母親と大喧嘩したあげく仕事も辞めてしまう。
映画は、世の中にこんなシステムがあるのかという事実を教えてくれる。演出もそっけないほどに淡々と進んでいき、ラストは襲撃的にやってくる。
しかし、母子の心理に深入りしない分、味わい深い感じがした。自分らしい最後、母親のイヴェットを演じたエレーヌ・ヴァンサンが、身を持って映画の中で示しています。役者たちがまたいいんですよ。それにしても、ラストの「自殺幇助協会」というNPOは、スイスに実在するそうで、無知な私には衝撃的でした。
2014年劇場鑑賞作品・・・46 映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング
あらすじ:麻薬密売が原因で服役していた中年男アラン(ヴァンサン・ランドン)は、出所後年老いた母親イヴェット(エレーヌ・ヴァンサン)が一人で暮らす家に身を寄せる。しかし再就職も思うようにいかず、昔から確執のある母と何かと衝突してばかりいた。そんなある日、アランは母親が末期の脳腫瘍に冒され死期が近く、スイスの施設で尊厳死を実行しようとしていることを知る。
<感想>この映画は、尊厳死という最も今日的なテーマを含む、最も古典的な親と子の話である。全く色合いは違うけれども、今年のアカデミー賞外国語賞を取った「愛、アムール」を想起させます。
人生の最期を迎える老女を通して、人とその愛について問いかける、フランスの新鋭ステファヌ・ブリゼによる人間ドラマ。
脳腫瘍の老齢の母親のところに、人生に失敗した中年の息子が身を寄せる。残された時間を共有する二人の繊細な演技を、カメラはシンプルに切り取って行く。二人のカットで切り返すスタイルが、「自殺幇助協会」の男女が訪れる場面では、彼らを挟んでテーブルの両端で向かい合う母子の穏やかなパンで、交互にフレームに入れていく手法。
長年こじれていた親子関係が、どちらかの死に直面したからといって、その日から急に修復できるわけでもない。残酷なようで、実に身につまされるシチュエイションである。子供にとって、自分の意思を持ち始めて来ると、親というものがうっとうしくなるものだ。それも中学生くらいになると、さらにそれが強くなってくる。親子の絆と良くいうけれど、それは親子の確執の始まりなのかもしれませんね。
だから、目の前にリミットが迫っているというのに、不器用すぎるやり方でしか歩み寄れないのだ。不器用すぎて、愛犬の命まで危険にさらすなんて、中々ハードコアですね。ですが、彼らにとっては、一つ一つが、言葉を介さないコミュニケーションとなり得ていたのではないでしょうか。無言の車中でも会話は成立していたと思うのだが。
ここでは、日常の行為が、とてつもなく観客の胸をかきむしる。とりわけ、犬に食べさせる料理を、淡々と作る場面。省略にも物語にも、逃げない映画の中での恐ろしいことといったらない。
いい歳をしてまともな仕事にもつけない息子に、母親は苛立ちを募らせる。息子はあれこれと小うるさく言う母親が疎ましい存在にしか思えない。母と子がいがみ合いながらも、内心では相手を想いやっているというシンプルでクールな物語です。
アランはボウリング場で出会ったクレメンという女性と深い仲になるが、二度目に会った時、職業を聞かれて口ごもり、気まずくなり別れる。むしゃくしゃした日々を過ごすアランは、母親と大喧嘩したあげく仕事も辞めてしまう。
映画は、世の中にこんなシステムがあるのかという事実を教えてくれる。演出もそっけないほどに淡々と進んでいき、ラストは襲撃的にやってくる。
しかし、母子の心理に深入りしない分、味わい深い感じがした。自分らしい最後、母親のイヴェットを演じたエレーヌ・ヴァンサンが、身を持って映画の中で示しています。役者たちがまたいいんですよ。それにしても、ラストの「自殺幇助協会」というNPOは、スイスに実在するそうで、無知な私には衝撃的でした。
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