実在したホワイトハウスの黒人執事の人生をモデルにしたドラマ。奴隷から大統領執事となり、7人の大統領に仕えた男の波乱に満ちた軌跡を追う。主演を務める『ラストキング・オブ・スコットランド』などのフォレスト・ウィテカーを筆頭に、ジョン・キューザック、ジェーン・フォンダ、テレンス・ハワードなどの実力派が結集。メガホンを取るのは、『プレシャス』などのリー・ダニエルズ。濃密なドラマとストーリー展開に加え、アメリカ近代史を見つめた壮大な視点にも引き込まれる。
あらすじ:綿花畑で働く奴隷の息子に生まれた黒人、セシル・ゲインズ(フォレスト・ウィテカー)。ホテルのボーイとなって懸命に働き、ホワイトハウスの執事へと抜てきされる。アイゼンハワー、ケネディ、ジョンソン、フォードなど、歴代の大統領に仕えながら、キューバ危機、ケネディ暗殺、ベトナム戦争といったアメリカの国家的大局を目の当たりにしてきたセシル。その一方で、白人の従者である父親を恥じる長男との衝突をはじめ、彼とその家族もさまざまな荒波にもまれる。
<感想>本作は1950年代のアイゼンハワーから80年代のレーガンまで、ホワイトハウスで7人の大統領に仕えた、ユージン・アレンをモデルにしたフィクションである。実際のユージン・アレンは、トルーマン時代から在職していたそうで、退職後もオバマ大統領の就任時に、ある名誉を授かった人物。
実話の映画化ではないからといって、黒人問題を訴えて大統領を動かしたとか、キューバ危機を止めた影の立役者というような過度な装飾はされてはいない。
本作で大統領執事を務めるセシル・ゲインズをフォレスト・ウィテカー、静かなる男が品格と才覚で、世の中をサバイバルしていくリアルなストーリーである。彼は、大統領執事を務める上で、「見ざる聞かざるで給仕しろ」という上役の言いつけ通り、模範的な執事ぶりを見せるだけ。
キューバ危機、ケネディ暗殺、ベトナム戦争とアメリカが大きく揺れ動いていた時代。歴史の荒波に直面するのは彼の息子たちなのだ。白熱する親子間での思想的対立。父親は「政治には興味がない」というノンポリの態度を表面的に貫き、体制の中枢に居続けるのだが、その根っ子には小さい頃南部で奴隷として育ち、ある出来事で、綿の花畑で自分の父親が白人の主人に射殺されたトラウマがある。
やがて、ホテルのベルボーイにまで出世し、遂にはホワイトハウスからスカウトされる幸運を掴むのだ。ここまでこられたのは、路頭に迷った時に助けてくれた黒人の「2つの顔を持て」という言葉を胸に秘めていたからなのだ。白人たちに向けた顔と、黒人たちへの顔。息子たちが、それぞれの顔を持って戦う中で、セシルもホワイトハウスの中で白人に向けた顔をしながら、静かに戦っているのだ。同僚の黒人たちの昇進昇給を長らく求めていたというわけだ。
しかし、父親の働きで裕福な生活を得た長男のルイスは、大学まで進むインテリとなり日和見主義にしか見えない父親を批判して、公民権運動に参加し、何度も逮捕されて父親を悩ませる。アラバマでKKKに襲撃され、やがてはキング牧師との出逢い、ブラック・パンサー党への参加など、黒人版フォレスト・ガンプのようなアメリカ現代史を体験する。
そして次男は、国家のためにベトナム戦地へと赴くが、戦死してしまう。それに、妻はセシルが仕事に没頭するあまりに、寂しくてアル中気味である。
息子たちとは対照的に、セシルは最高権力者の姿を静かに見つめるだけだった。長男はそんな父親を嫌って、キング牧師に、父は白人に媚びていると告げ口する。しかし、キング牧師は言う、「執事は従属的と言われるが、人種間の憎しみを溶かす戦士なのだ」と。情勢の荒波が家族を翻弄していく様は痛々しいが、その絆の回復には時代の希望も宿っているようでもある。
共演陣では、ロビン・ウィリアムズのアイゼンハワー、ジョン・キューザックのニクソン、アラン・リックマンのレーガンなど歴代大統領の意外な配役も楽しいが、ナンシー・レーガンを演じた、かつての戦う女優、ジェーン・フォンダが円熟の味わいで演じているのも印象深いもんです。それに、幼少時代でのセシルの母親にマライア・キャリーが出ていて、ほんのちょっとだけなのでお見逃しなきよう。
「プレシャス」や「ペーパーボーイ/真夏の引力」と話題作が続くリー・ダニエルズ監督。彼はアフリカ系アメリカ人だが、本作では国家と家族、白人と黒人、父と子を対比させて、自らのアイデンティティに通じる物語を力強く描き出していると思う。
2014年劇場鑑賞作品・・・39 映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング
あらすじ:綿花畑で働く奴隷の息子に生まれた黒人、セシル・ゲインズ(フォレスト・ウィテカー)。ホテルのボーイとなって懸命に働き、ホワイトハウスの執事へと抜てきされる。アイゼンハワー、ケネディ、ジョンソン、フォードなど、歴代の大統領に仕えながら、キューバ危機、ケネディ暗殺、ベトナム戦争といったアメリカの国家的大局を目の当たりにしてきたセシル。その一方で、白人の従者である父親を恥じる長男との衝突をはじめ、彼とその家族もさまざまな荒波にもまれる。
<感想>本作は1950年代のアイゼンハワーから80年代のレーガンまで、ホワイトハウスで7人の大統領に仕えた、ユージン・アレンをモデルにしたフィクションである。実際のユージン・アレンは、トルーマン時代から在職していたそうで、退職後もオバマ大統領の就任時に、ある名誉を授かった人物。
実話の映画化ではないからといって、黒人問題を訴えて大統領を動かしたとか、キューバ危機を止めた影の立役者というような過度な装飾はされてはいない。
本作で大統領執事を務めるセシル・ゲインズをフォレスト・ウィテカー、静かなる男が品格と才覚で、世の中をサバイバルしていくリアルなストーリーである。彼は、大統領執事を務める上で、「見ざる聞かざるで給仕しろ」という上役の言いつけ通り、模範的な執事ぶりを見せるだけ。
キューバ危機、ケネディ暗殺、ベトナム戦争とアメリカが大きく揺れ動いていた時代。歴史の荒波に直面するのは彼の息子たちなのだ。白熱する親子間での思想的対立。父親は「政治には興味がない」というノンポリの態度を表面的に貫き、体制の中枢に居続けるのだが、その根っ子には小さい頃南部で奴隷として育ち、ある出来事で、綿の花畑で自分の父親が白人の主人に射殺されたトラウマがある。
やがて、ホテルのベルボーイにまで出世し、遂にはホワイトハウスからスカウトされる幸運を掴むのだ。ここまでこられたのは、路頭に迷った時に助けてくれた黒人の「2つの顔を持て」という言葉を胸に秘めていたからなのだ。白人たちに向けた顔と、黒人たちへの顔。息子たちが、それぞれの顔を持って戦う中で、セシルもホワイトハウスの中で白人に向けた顔をしながら、静かに戦っているのだ。同僚の黒人たちの昇進昇給を長らく求めていたというわけだ。
しかし、父親の働きで裕福な生活を得た長男のルイスは、大学まで進むインテリとなり日和見主義にしか見えない父親を批判して、公民権運動に参加し、何度も逮捕されて父親を悩ませる。アラバマでKKKに襲撃され、やがてはキング牧師との出逢い、ブラック・パンサー党への参加など、黒人版フォレスト・ガンプのようなアメリカ現代史を体験する。
そして次男は、国家のためにベトナム戦地へと赴くが、戦死してしまう。それに、妻はセシルが仕事に没頭するあまりに、寂しくてアル中気味である。
息子たちとは対照的に、セシルは最高権力者の姿を静かに見つめるだけだった。長男はそんな父親を嫌って、キング牧師に、父は白人に媚びていると告げ口する。しかし、キング牧師は言う、「執事は従属的と言われるが、人種間の憎しみを溶かす戦士なのだ」と。情勢の荒波が家族を翻弄していく様は痛々しいが、その絆の回復には時代の希望も宿っているようでもある。
共演陣では、ロビン・ウィリアムズのアイゼンハワー、ジョン・キューザックのニクソン、アラン・リックマンのレーガンなど歴代大統領の意外な配役も楽しいが、ナンシー・レーガンを演じた、かつての戦う女優、ジェーン・フォンダが円熟の味わいで演じているのも印象深いもんです。それに、幼少時代でのセシルの母親にマライア・キャリーが出ていて、ほんのちょっとだけなのでお見逃しなきよう。
「プレシャス」や「ペーパーボーイ/真夏の引力」と話題作が続くリー・ダニエルズ監督。彼はアフリカ系アメリカ人だが、本作では国家と家族、白人と黒人、父と子を対比させて、自らのアイデンティティに通じる物語を力強く描き出していると思う。
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