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その夜の侍 ★★

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堺雅人と山田孝之の初共演で、2007年に初演された劇団「THE SHAMPOO HAT」の同名戯曲を映画化。「THE SHAMPOO HAT」で作・演出・出演を手がける赤堀雅秋が、岸田國士戯曲賞にノミネートされた同戯曲を映画用に自ら脚色し、メガホンもとった。
鉄工所を営む中村は、5年前に妻をひき逃げ事件で失って以来、無気力な日々を送っていた。一方、ひき逃げ犯の木島は刑期を終え出所したが、しばらくすると匿名の脅迫状が届くようになる。中村の妻の命日に2人はついに対峙することになるが……。(作品資料より)

<感想>やっと今年になってミニシアターで上映された、ふしぎなタイトルと堺雅人が出ているので鑑賞した。それと、脇役たち、でんでんに三谷昇、新井浩文、田口トモロヲとユニークな顔ぶれなのだ。堺正人と共演しているのは山田孝之で、二人は初共演だという。

物語は、東京のはずれで(どうやら川越みたい)小さな鉄工所を営む中村健一(堺雅人)は、5年前にトラック運転手に最愛の妻(坂井真紀)をひき逃げされている。冒頭でその事故のシーンを映しているが、トラック運転手の木島(山田孝之)がふいに自転車で出てきた女を車で轢き、横たわっている女を見て血が出てないし動かないのでそのままにして車を出してしまう。つまり轢逃げ犯人なわけで、助手席に乗っていた男が警察に自首をして木島は2年の服役をしたのである。まぁ、飲酒運転ではないので、2年という軽い刑ですんだのだろう。

妻に死なれた中村は、死んだ妻が忘れられず、テーブルの上には妻の遺骨が埋葬もせずに乗っているし、それに留守番電話に遺された妻の声を延々と再生しながら、好きなプリンを食べている。彼は糖尿病気味なのに、遺された留守電にも、妻が「プリンばっかし食べてないで」と言い残しているのに。大好きなプリンを食べている。
一方、轢逃げした犯人の木島は、2年の服役後、その時トラックに乗っていた仲間の家に転がり込んでおり、相変わらず破天荒な生活を送っているのだ。
ある日、轢逃げの事故現場に出かけた木島は、その場所が工事をしており、そこにいた警備員の女に言いがかりをつけ、その挙句に犯してしまう。木島とはそんなメチャクチャな男なのだ。

そんな木島のもとに、「お前を殺して俺も死ぬ。決行日まであと○日」といった脅迫状が届く。無記名の脅迫状は連日執拗に送られてくる。脅迫状を送り続けているのは、妻をひき逃げされた中村なのだ。彼は鉄工所の仕事の合間に、包丁を忍ばせた袋を手に、憑かれたように木島の動向をマークしているのだった。
鉄工所を営みつつ妻をひき逃げした木島を追う、堺雅人は分厚いレンズのメガネをかけ、汚れた作業服にぼさぼさ髪の冴えない中年男に扮しているが、その存在感は妙に魅力的である。いつもズボンのポケットに妻のブラジャーを隠して、時には取り出して匂いを嗅ぐ。どうみてもひ弱な感じで、復讐に燃える鬼には見えない。
妻の弟も亡くなって5年も経つのに、義兄の身の上を心配して見合いの話を持ってくる。それに、兄が木島に脅迫状を送っていることも知り、金で示談に済ませようと話をつけるも、木島は根っからの悪人で、義弟に乱暴して100万円で示談にしてやるからと。その金を持って来ない弟を、穴を掘り生き埋めにしようと企む。その場所にいた木島の友達2人も、木島が怖くて何もできず情けない。

木島に扮した山田孝之は、その目に狂気を宿しやさぐれた風体で、堺雅人と渡り合っているのだが、どうみても山田孝之の方が演技が上で勝っている感じがした。
今の世の中どこかで展開していそうなストーリーで、コミック的な面白さがある。
クライマックスは、二人が夜の人気の消えたどしゃ降りのグランドで対峙する、取っ組み合いの揉みあいのシーンである。
泥だらけになり揉みあう中で、中村が黒い手帳を取り出して木島に叫ぶ言葉が「お前なんか僕らの人生に関わるに値しないんだ」と泣きながらいう言葉。そんな中村の叫びも届かないどうしようもない木島っていう男の存在。
そのことにだいぶ前から中村が気付いていたのなら、木島を殺す計画など考えなくても良かったのでは。こんな悪な男は、その内事故か、社会的制裁を受けるかで死んでしまうに違いない。中村には、復讐心の怒りを抑えるよう、違った生き方も出来たはずなのに。
最後に、泥だらけになり揉みあう中で「他愛のない話がしたいんだ」と中村が叫んだ言葉が、憎しみが消えかけた中村の心の叫びのように聞こえ、妙に耳に残る。

それにしても、中村が5年目の妻の命日にあたる日を、復讐の日に決めて、木島を殺そうと必死になるも、映像の中の中村の風情からはその気迫が感じられない。というのは、その決行の日だと思うが、ホテルで性交渉をしようと売春婦を呼ぶも、男として役に立たなかった。その売春婦に安藤サクラが扮して、やっぱ歌が上手いのに感心した。
そして、木島と決闘をするも殺すことはできず、自分も死ぬこともできず、妻の声が録音されている留守電を消却し、大好きなプリンを頭にぐしゃっと押し付け、顔にもプリンを塗ったっくるしで、復讐から解放されたようなそんな状態を表している最後だった。大好きなプリンを止めるのに、プリンをそんな形で使うなよ!
それにしても、タイトルの「その夜の侍」って、グランドで闘う二人のことなの?・・・役者の二人が良くも悪くも、芸達者だけに上手く収めていたと思った。
2013年劇場鑑賞作品・・・2  映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキングへ


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