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罪の声★★★★

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実際にあった昭和最大の未解決事件をモチーフに過去の事件に翻弄される2人の男の姿を描き、第7回山田風太郎賞を受賞するなど高い評価を得た塩田武士のミステリー小説「罪の声」を、小栗旬と星野源の初共演で映画化。新聞記者の阿久津を小栗、もう1人の主人公となる曽根を星野が演じる。監督は「麒麟の翼 劇場版・新参者」「映画 ビリギャル」の土井裕泰、脚本はドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」「アンナチュラル」などで知られる野木亜紀子。

あらすじ:平成が終わろうとしている頃、新聞記者の阿久津英士は、昭和最大の未解決事件を追う特別企画班に選ばれ、30年以上前の事件の真相を求めて、残された証拠をもとに取材を重ねる日々を送っていた。その事件では犯行グループが脅迫テープに3人の子どもの声を使用しており、阿久津はそのことがどうしても気になっていた。一方、京都でテーラーを営む曽根俊也は、父の遺品の中にカセットテープを見つける。なんとなく気になりテープを再生してみると、幼いころの自分の声が聞こえてくる。そしてその声は、30年以上前に複数の企業を脅迫して日本中を震撼させた、昭和最大の未解決人で犯行グループが使用した脅迫テープの声と同じものだった。

<感想>未解決事件の果てに、1984年から1985年にかけて、食品会社6社を標的にした企業脅迫事件が起こった。あの衝撃のギンガ・萬堂事件(グリコ、森永)のことは未だに未解決事件であり、既に公訴時効が成立している。犯人グループは、誘拐や身代金要求、商品の中に毒物を混入させ、バラまくなどして脅迫を繰り返し、卑劣な犯罪を繰り返す一方で、警察やマスコミをあざ笑うかのように挑発し続けた犯人グループは、忽然と姿を消してしまった。

警察は総力を挙げて犯人を追ったが、犯人と思われる人物を目撃し、多くの遺留品を入手しながらも検挙することができず、2000年に時効を迎え未解決事件となった。

この事件には子供の声が使われるといった不気味な一面があったが、本編ではここに着目して「子供を巻き込んだ事件」という視点で塩田武士の小説「罪の声」を映画化したものである。

原作が描く「子供を犯罪に巻き込めば社会から希望が奪われる」という、スピリットを作品の中心に据えた社会派ミステリーに仕上がっている。

主人公の新聞記者阿久津英士を演じた小栗旬。現在は文化部に所属し、令和を目前にして昭和の未解決事件を再検証する特集記事のために、かつていた社会部へとかり出される。部外者の立場から事件に関わっていくことになる。

当時の事件のことはまったく知らなかった小栗旬は、実際の事件でヤマ場となった1984年11月14日の、大津の攻防戦(犯人グループと警察の現金引き渡しに関するやり取り)を追取材するうちに、原作ではキツネ目の男が二人いたんじゃないかと気づく瞬間がある。

事件の時に金の引き渡し場所まで誘導する声が録音されて、犯行に使われた3人の子供たちはいったい、その後どこでどうしていて、もしかしたら彼らに辿り着けると、この事件は広がりを持つのじゃないかと阿久津が気づくというシーン。

事件に使われた3人の子供の声、これがタイトルにもなっている「罪の声」につながるのだが、3人の子供のうち、一人が星野源が演じている曽根俊也である。彼が幼いころに声を利用されただけなのに、罪の意識を感じているさまを、目のあたりにする新聞記者阿久津英士。この事件で曽根俊也のように、事件のことを抱えこみ心の痛みに対して、何とかしてあげたいと思った彼だからこそ、ある結論に辿り着けたと思うんです。

今は京都で小さなテーラーを経営している曽根俊也と、阿久津は映画が始まって約1時間、まったく別々に事件を追っていく。やがて二人は協力して真相に近づいていくのだが、映画では原作以上に彼らのバディ感が強められている感じがした。

二人は同世代だから、車で移動しながら好きな漫画や音楽の話で盛り上がるが、ただ事件に対する二人の立場は微妙に違っていた。新聞記者として真相に近づき、それを世間に公表したい阿久津と、自分も事件に関わった一人として罪の意識を感じ、公表されればマスコミの目にさらされることへの恐れがある曽根。そんな二人の想いを語り合うシーンがある。

果たして曽根俊也をこの記事に使うべきなのかと、二人がどうバディとして絆を深めていくかは映画を観ていただくとして、小栗旬の阿久津が、関西弁と英語をマスターして台詞回しが実に巧い。それが人間的な温かみを増した感じがした。劇中で、阿久津と曽根が様々な人間に取材を重ねていくうちに、ある人物に出会う。日陰の人生を歩むことになったこの人物を、宇野祥平が演じていた。

世代的には身近な事件ではない題材だが、そういえばこのような事件があったと思いを馳せ、ここに出て来る人間たちが、本当の事件関係者じゃないないと思うが、ある事件によって当たり前に生きている人間と、そうでない人生を送った人間がいることを。その違いを生んだラインはどこで生まれるのだろうか。曽根俊也は何も知らずに30年以上、当たり前の人生を送ってきたけれど、ある日、自分の声が事件に使われたことを知った時、どんな気持ちだったのだろうか。実際に声を使われた子供たちも、おそらくはご存命でしょうから、そのことを思い馳せると複雑な気持ちになりますね。

 

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