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9人の翻訳家 囚われたベストセラー★★★・5

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世界的ベストセラー「ダ・ヴィンチ・コード」をはじめとするダン・ブラウンの小説「ロバート・ラングドン」シリーズの出版秘話をもとにしたミステリー映画。シリーズ4作目「インフェルノ」出版時、違法流出防止のため各国の翻訳家たちを秘密の地下室に隔離して翻訳を行ったという前代未聞のエピソードを題材に描く。

あらすじ:フランスの人里離れた村にある洋館。全世界待望のミステリー小説「デダリュス」完結編の各国同時発売に向けて、9人の翻訳家が集められた。翻訳家たちは外部との接触を一切禁止され、毎日20ページずつ渡される原稿を翻訳していく。しかしある夜、出版社社長のもとに「冒頭10ページをネットに公開した。24時間以内に500万ユーロを支払わなければ、次の100ページも公開する。要求を拒めば全ページを流出させる」という脅迫メールが届く。社長役に「神々と男たち」のランベール・ウィルソン、翻訳家役に「007 慰めの報酬」のオルガ・キュリレンコ、「イミテーション・ゲーム エニグマと天才数学者の秘密」のアレックス・ロウザー。「タイピスト!」のレジス・ロワンサルが監督・脚本を手がけた。

<感想>世界的ベストセラーミステリー三部作の完結編「デダリュス」を世界同時発売するために、9か国の翻訳者たちが集められる。彼らは情報漏洩を防ぐためという理由で、洋館の地下室に完全に閉じ込められが、冒頭の10ページが流出する。SNSも禁止されている中で、出版社社長のもとに、”500万ユーロ”をし支払わなければ、全ページが流出すると、メールが届く。

このユニークなプロットのミステリーは、なんと「ダ・ヴィンチ・コード」シリーズの第4作目「インフェルノ」出版の際に、さまざまな国の翻訳者たちが隔離されて作業をした、実話からアイディアを得たものだというのだ。誰が犯人で、どんな手口を使って原稿を流出させたのか。時系列を組み替えて、ドンデン返しで驚きと興奮を感じさせてくれる極上のミステリーになっていた。

出版社社長をカリスマ性たっぷりに演じたは、仏国の名優、ランベール・ウィルソン。集められた翻訳者たちには、各国の有能だが曲者ぞろいの翻訳家たちであり、起こる事件も「ベストセラー小説の流出」というのは、かなり捻りがあって面白いし、真相から逆算して考えると少々無理があるお話も、構成的なギミックや、現実から巧妙にずらされた独自の空気感によって、ある種のパラレルワールドで起こっている物語として、楽しめるように計算されている演出もお見事。

小説のヒロインと同じコスチュームでないと仕事ができない、ロシア語担当のオルガ・キュレンコ、かと思えば給料の支払いがままならないというギリシャ語の担当者。危機的な状況にあった国の経済政策への批判もチクリ。等々、会話はかなり意味深だ。そして、エドゥアルド・ノリエガなど、個性豊かな俳優たちが集結していた。各々が怪しい雰囲気を醸し出し、最後まで真犯人が分からないミステリーに仕上がっていた。

監督と脚本は「タイピスト!」で注目を集めたレジス・ロワンサル監督。実話から着想を得て、数々の傑作にインスパイアされて脚本を書いたと語っている。「めまい」「レベッカ」をはじめとするヒッチコック作品のようなサスペンス、「オーシャンズ11」の爽快感、「ユージアル・サスペクツ」のドンデン返しなど、全編に名作への想いが散りばめられている。

物語は、謎に包まれた作家、オスカル・ブラックの空前の人気ミステリー三部作「デダリュス」の第3部作の刊行をめぐるもの。「デダリゥス」を独占的に出版して、一財を成した出版社社長アングストロームは、9名による各国翻訳者チームを結成させて、24時間監視体制の中で翻訳作業を進行させるという。

しかし、何故か新作の原稿の身代金の要求がアングストロームのもとに届き、要求に応えなければ、さらなる原稿の公開を続けるという脅迫を突き付けられる。アングストロームは事態の収拾に対応しつつも、翻訳チームに疑惑の目を向けて、翻訳者チームの中でも誰が犯人なのかという疑心暗鬼が繰り広げられる。地下室の拷問部屋のようなところで、一人ずつアングストロームが拷問をしては、脅し虐めつける。一番若いアレックスに目を付けたアングストロームが、じわじわとアレックスをなぶり拷問するさまが恐ろしかった。

序盤から細かい伏線も張り巡らされているので、観る側にも犯人捜しに追い立てられることになるが、中盤でなんとなく犯人が分かる。冒頭で新作の「デダリュス」を書いた若い作者が、先生と呼ぶ老小説家に自分の名前を出さないようにと頼むのだ。その若い作者が翻訳者の中にいた彼であり、「ベストセラー小説の流出」というのも彼の仕業だから。

ですので、ことごとくにこちら側の予想が裏切られていくところが、何処までも痛快であります。「タイピスト!」で注目された監督・脚本のレジス・ロワンサルの緻密な構成と、現代的な意匠を凝らしながら、映画では難しいと思われるミスリードの繰り返しで観客を驚かせていくところも。

終わってみれば、「なんだ、そういうことだったのか」と、ちょっぴり拍子抜け感もあるとはいえ、ラストに至るまでの密室会話劇としてみれば、集められた9か国の翻訳者たちのキャラが面白かった。

 

 

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