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ハイ・ライフ★★

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「パリ、18区、夜。」「ガーゴイル」のクレール・ドゥニ監督が自身初の英語作品で挑んだSFサスペンス。主演は「トワイライト」シリーズのロバート・パティンソン。共演に「アクトレス 女たちの舞台」のジュリエット・ビノシュ、リメイク版「サスペリア」のミア・ゴス。

あらすじ:太陽系を遥かに超えて宇宙へと突き進む宇宙船「7」には、モンテや幼なじみの少女ボイジーら9人の元死刑囚がクルーとして乗り込んでいた。彼らは極刑の免除と引き換えに、同乗する女性科学者ディブスが指揮する実験に参加することになったのだ。やがて、目標地であるブラックホールが少しずつ迫り……。漆黒の宇宙を漂う一隻の宇宙船。その中には一人の男モンテと、なぜか生まれて間もない赤ん坊の2人だけがいた――。かつて宇宙船にはモンテをはじめ9人の乗組員がいた。彼らはいずれも死刑や終身刑を言い渡された重犯罪人たちだった。彼らは科学者のディブス医師が行うある実験に参加するためこの宇宙船に乗っていたのだったが…。

<感想>究極の密室、目覚める欲望。宇宙船内に作られた人工の居住区と監獄、監獄とはいわば罪を犯した人々を集めて作られたコロニーのようなものですね。本作『ハイ・ライフ』は言葉を極力省き、抽象的でシンプルな映像で人の真理を模索するSFドラマとなっています。映画冒頭は青々とみずみずしい植物を覆う水滴、生々しいほどまでに艶めいて、息吹をあげる様が何とも官能的です。

反して暗闇ばかりが広がる宇宙空間の不気味さ、くすんだオレンジ色の囚人服に身を包んだキャラクターたち、アイボリー色の船内と審美的な造形が不穏さをますます募らせてゆきます。

そして監獄とは、都市国家が形成されて以来、人類の歴史の中に存在してきたものです。それは、都市国家の規則に従って生きることができない人々をその内部に設置された外部、つまり別の場所に追いやろうという考えから生まれました。牢獄や受刑者たちが集まるコロニー、処刑場、死刑制度などには、同じアイディアがその背後に存在します。そこは、都市国家の中で暮らす私たちの想像を超える場所なのです。

オンボロな宇宙船を修復しつつ、赤ん坊と共に何とか暮らす男が一人。他の乗組員は死んでおり、宇宙服を着させて船外に送り出すというオープニング。

その後細かいフラッシュバックを差し込みながらも赤ん坊との生活が映し出されていき、やっと過去の太陽系の外に出て3年という件になり、何があったのかをみせていく展開になったと思ったらここでも結構時間軸をいじったり差し込んだりと。

女性医師ディブスは人工生殖に固執し、自分が媒介となって囚人たちを妊娠させると言う“タブー”を破った行為、実験に挑み続けています。欲望も管理されて身も心も限界となり暴力に走り壊れてゆく囚人たち、究極の密室内での悲劇は地獄そのものです。

しかし反してロバート・パティンソン演じるモンテと、不本意ながら彼の娘として誕生したウィローの間に流れる空気は平穏でありふれた温かいもの。愛のない生殖から誕生した生命が愛によって育まれていく、混沌状態の物語はタブーを破る“愛”によって収束してゆきます。

パイロットであるナンセンはブラックホールに一人向かうことを志願します。しかし小型ロケットに乗り込んだのはナンセンではなくボイジー。ボイジーは彼女をシャベルで殴り殺しロケットに乗り込み、ホールの分子雲の間を通って進みますが、スパゲッティ化現象の効果で爆発してしまいます。

ミンクはディブスを襲い殺そうとしますが駆けつけたモンテにより殺され、自分は長くないことを悟ったディブスは子供が彼の子供であることを告げます。

モンテの唯一の話相手だったチャーニーも庭に自分自身を埋めて自死。一人残されたモンテは低温チャンバー内の乗組員たちの遺体を宇宙に処分します。

モンテはウィローと名付けた赤ちゃんと一緒に時を過ごしました。彼女が10代になると、彼らの舟に別の舟が近づいてきました。

そこには人間は見当たらず、犬たちのみ。いよいよブラックホールに近づき、モンテはウィローの説得により脱出ポッドに乗り込んでそこを通ることに決めました。ブラックホールに入ると、辺り一面黄金の光と線が広がります。モンテはウィローの手を強く握りました。

本作で描かれているブラックホールは、金色の光の粒が辺りに散らばり線が続いて、光さえも飲み込んでしまうとは思えないほど美しく神秘的です。

モンテとウィローが最後入っていく瞬間は、まるで生まれる前の胎児の頃の記憶を呼び戻すかのような究極のノスタルジー、安心感を感じさせる所が本作の魅力の一つでもあります。

生命の誕生というのは、世界の最大の神秘の一つですが、人間ひとり一人の血や鼓動も宇宙と呼応していて、やがては皆出発点である無へ帰してゆくのだから。最後ブラックホールの中で微笑み合う親子のように、人間は「ここが最果てだ」と思った瞬間に、初めてその奥へ旅立つことができるのかもしれません。

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