2011年7月22日にノルウェーのウトヤ島で起きた戦慄の無差別乱射テロ事件を映画化した実録サスペンス・ドラマ。たった一人の極右の青年によって69人の若者が犠牲になった悪夢の惨劇を、標的となったサマーキャンプに参加していた一人の少女の視点から、ワンカットによる臨場感あふれる映像で描き出す。監督は「おやすみなさいを言いたくて」「ヒトラーに屈しなかった国王」のエリック・ポッペ。
あらすじ:2011年7月22日、ウトヤ島でノルウェー労働党青年部のサマーキャンプが行われていた。そこでは政治に関心のある数百人の若者たちが思い思いに国の未来について語り合っていた。そんな中、首都オスロの政府庁舎前で爆破テロ事件が発生したとのニュースが飛び込んでくる。妹と一緒に参加していた少女カヤも、不安を感じながらもオスロから40キロ離れたウトヤ島とは関係ない出来事と考えていた。ところが突然、銃声が鳴り響き、人々がパニックに陥る。カヤも何が起こったのかわからないまま、仲間たちと森へ逃げ込む。やがて鳴り止まない銃声に恐怖を覚えながらも、離ればなれとなった妹を必死で捜し始めるカヤだったが…。
<感想>冒頭では、ノルウェーの首都オスロの政府庁舎前で車に仕掛けられていた爆弾が爆発するところから始まった。世間が混乱する中、オスロから40キロ離れたウトヤ島で、今度は無差別銃乱射事件が起こり、同地でノルウェー労働党青年部のサマーキャンプに参加してた10~20代の若者たちが犠牲になったのである。犯人は32歳のノルウェー人のアンネシュ・ベーリング・ブレイビクという男だそうで、映像の中には一切出てきません。
テロ行為発生から終息までに実際にかかった時間は72分間だそうで、その72分間ワンカットで、逃げ惑う一人の女性にキャメラをぴたりと、寄り添いながら映像化したという、大胆な手法で挑んだ本作。ですが、以前に「カメラを止めるな!」という映画が大盛況で有名になりましたよね。
それと同じではありませんよ、ゾンビ映画ではなく本当にあった現実の銃乱射事件なんですから。物語は、ウトヤ島で若い男女がサマーキャンプで集まり楽しんでいるところへ、突然銃声が聞こえてきて、始めは何が起きているのか分かりませんでした。
ところが、みんなが銃声の後に驚き、始めはバーみたいな小屋にいたのですが、それから森の中へと逃げていく男女がたくさんいる。誰が、どういうわけで銃を乱射しているのかが把握できないままに、ただただ逃げるだけ。
それもどこへ逃げたら命が助かるのかがよく解らないのですから。ただただ、森の中を彷徨って走るだけです。テロのヤツラは全然映っていません、逃げ惑う若者たちだけが、とにかく悲鳴を上げて走る、走る。聞こえるのは銃声の発砲音だけ。ものすごい臨場感、限定されたアングルなので状況が良く見えない。それが怖さを増幅させるわけ。
しかし、そこで銃で撃たれた被害者の若い女の子が、倒れているのを見つける主人公の女性。肩から背中を撃たれ、傷跡が生々しくて出血がひどく動けない。主人公のカヤが、自分のブラウスを脱ぎ背中の傷跡に当てて、血止めをするのだが、彼女の声が聞こえなくなり静かになる。意識がなくなったらしい。このままでは死を待つのみ。誰も助けにこない島。
オスロから40kmも離れたウトヤ島なので、警察に電話をして救援を要請するしかないのに、電話も中々通じず、始めは主人公のカヤが、母親と楽しく会話をしていたのに。誰かが警察へ電話をしたらしいのだが、一向に救援部隊はこない。その内に、その襲撃をしている奴らがキャンプ場まで来ている。
発砲音が響き渡り、逃げ惑いながら悲鳴をあげる人々の声とか、逃げ惑う若者たちの中にも、負傷をしている者もいる。森の中へ隠れていた人たちが、海の方へと走り出す。カヤたちもそれぞれに海へと走るのだが、海岸ではテロに見つかってしまうし、岸壁の下を歩き隙間を見つけてはそこに隠れる人もいる。
そこに、崖の上にテロの犯人らしき人物が銃を持ち、発砲しながら崖下を見下ろしている。その姿が警察官の制服を着ているのだ。
監督は、モキュメンタリーではなくアクロバット的手法で、テロ体験の恐怖に主観性をまとわせようとするのだが、その果てしなく持続するワンカットを眺めている観客は、いつしかゲームの中にでもいるような錯覚を覚えるのだ。
しかし、犯人の姿は映さずに、銃撃戦パニックに陥った若者の姿にフォーカスすることで、突然犯罪に遭遇した人間の圧倒的な恐怖感や、絶望感を観客に体験させることには成功したようですね。
テロ事件の動機は、移民政策への反対思想。言うことを聞かないと、こんな目に遭うぞという脅し。むろん映画はそれに対して抗議をしているのだが、逆宣伝の危惧も感じる。ある意味フィクションの極地でもあります。
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