16世紀の英国を舞台に、従姉妹でありながらそれぞれスコットランドとイングランドの女王として対峙していくメアリー・スチュアートとエリザベスI世の数奇な運命を「レディ・バード」のシアーシャ・ローナンと「アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル」のマーゴット・ロビーの主演で映画化した歴史ドラマ。共演はジャック・ロウデン、ジョー・アルウィン、デヴィッド・テナント、ガイ・ピアース。監督は英国演劇界を代表する女性演出家の一人で本作が長編映画監督デビューとなるジョーシー・ルーク。
あらすじ:スコットランドに生まれたカトリックのメアリー・スチュアートは、0歳でスコットランド女王になるも、イングランドの王位継承権を持つ彼女を警戒し、その命を狙うイングランドから逃れるため、幼くしてフランスへ渡る。やがて16歳でフランス王妃となったメアリーだったが、18歳で未亡人となり、スコットランドへ帰国する。しかしスコットランドではプロテスタントが勢力を拡大させており、メアリーの周囲にも常に不穏な空気が漂っていた。一方、隣国イングランドでは、エリザベスI世が25歳で即位していた。未だ世継ぎのいないエリザベスI世とその側近たちは、次第にメアリーの動向に神経を尖らせていくのだったが…。
<感想>「女王陛下のお気にいり」で、オリヴィア・コールマンがアン女王を迫力満点で演じるのを観たばかりだが、この作品でのメアリーとエリザベスを競演するシアーシャ・ローナンと、マーゴット・ロビーの関係も凄かった。
女王役は女優たちの演技意欲をそそるのですね。ですが、女王は私ひとりだけ。2人の女性が主人公となり、16世紀最大の英国の宮廷バトルを繰り広げる映画はなかなかない。この時点で、本作が「他の映画とは違う」特別な一本であることは明白であります。クライマックスでの直接対決はもとより、そこに至るまでの「結婚」や「出産」さえも“駒”として戦う女王たちに圧倒されます。
史実はともかくとして、これを現代の観客に向けて解りやすく描くのは至難の業に違いない。賢明な女性監督ジョージー・ルークはそのあたりを考慮して複雑怪奇な宮廷劇に、ある仕掛けを施すのである。
一歩のスコットランド女王メアリー、そしてのう一方にイングランド女王エリザベス1世。従姉妹同士のその2人は、王位継承権をめぐり火花を散らすが、実は互いに恐れながらも惹かれあう何ともいびつな関係にあったという解釈をしていた。
最大の見どころが、2人の架空の対決シーンだろう。饒舌鋭く相手を射すくめるようなメアリーに対して、それを静かに受け止めて自らを顧みるエリザベス1世。
特異な髪型やメイクに目を奪われ、煌びやかな衣裳にも目を奪われこともあってか、丁々発止なセリフのやり取りは、最後まで飽きさせない。だが、やはりこれまでの抑制された演技の殻を破るようなローナンの感情剥き出しの演技には、一目置かざるを得ないと思う。また一皮むけたと言っても過言ではない。
製作陣とジョージー・ルーク監督が本作でことさらこだわったのは、“その地”で撮影すること! 特に困難を極めたのは、スコットランド全土を旅したメアリー(ローナン)の半生の再現。大勢のクルーや馬と共に幾度も大移動を重ね、撮り上げたというその成果は、画面にしかと映し出されているのも評価したい。
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