アイドルグループ「KAT-TUN」の亀梨和也が主演を務め、星野智幸の小説を、『インスタント沼』などの三木聡がメガホンを取った異色作。代わり映えのしない日々に悩む主人公が、出来心で罪を犯したことをきっかけに33人もの自分が増殖していく恐怖をユーモラスに描く。内田有紀や加瀬亮をはじめ、ふせえりや岩松了ら三木監督作品の常連俳優たちも共演。さまざまな自分を演じ分けた亀梨の熱演はもとより、小説とは異なるオリジナルの結末にうなる。
あらすじ:家電量販店で働く均(亀梨和也)は、何の変哲もない郊外の街で平穏に暮らしている。彼の悩みは、実家の団地に顔を出した際に母親に文句を言われたり、職場で上司のタジマ(加瀬亮)にいびられたりすることぐらいだった。平凡な日々に飽き飽きとしていたある日、ひょんなことでオレオレ詐欺を行った均の前にもう一人の自分が現われ……。
<感想>地方では29日から上映された。別に亀梨くんのファンではないのだが、最近、年寄が騙され続けている“オレオレ詐欺”と何等かの関係があるのだろうか、それが気になって観てしまった。まず冒頭のオレオレ詐欺のくだりから飲み込みづらい。オレオレ詐欺で悪銭を手にした若者が陥る、悪夢の世界と割り切って観ればいいのだが、・・・。
きっかけがきっかけだから「なりすました」人物に自分がなっちゃう、というのが始まりとは言え、見る間に話が別方向へとズレていく。一言でいえば「世界中がオレ」になるということ。そこがキモなのだが、この逸脱、ダメな人にはダメらしく、私にはケタタマシいだけで、途中で飽きてしまった。お客さんもまばらだし、笑いもなし。
つい犯してしまったオレオレ詐欺がきっかけで「俺」が増殖し、やがて俺同志の争いが起きて、という筋だけ見ると不条理劇はなはだしく、ドタバタ劇になっている。三木聡監督の映画やTVドラマはほとんど観ていません。だからという分けではないが、どうも「俺俺」は飲み込みずらかった。
殺人犯かもしれない男と東京を歩く「転々」は鑑賞したが、これら三木聡監督作品も、ナンセンスな小ネタが散りばめられて、それだけで出来上がっているようにも見えても、当然ながらサスペンス、謎解き、あるいはホラー的な物語を進める動力は備わっていると思う。
しかしだ、「俺俺」では、誰が俺を削除しようとしているのか?、という幹のサスペンス部分が太すぎて、ナンセンスの枝葉をたっぷりと楽しめなかったのが残念。アクション満載の逃走シーンも、そんなに楽しめるわけでもなく、何かとの妥協なのか、知る由もない。
冒頭の団地が出て来るあたり、団地は同じ顔の部屋が並ぶ。ある種異様な建物ですよね。SF的世界観の中で不条理な出来事を起こすのではなくて、団地という日常のリアルを感じさせる空間の中に設定を持ち込み、合成技術を駆使して人間の増殖を描いているようでもある。主人公の均は、「俺」と同じ顔の大樹やナオと出会い、後に“俺山“と呼ばれる亀梨和也の人格が33人に分裂ならぬ増殖した自分が集まる部屋で過ごし始める。
まぁ、亀梨ファンなら、女装姿や全身入れ墨などの33擬態は、新手のワンマン・ムービーとして楽しめるのだろうが、いかにもネット世代に媚びた発想で薄っぺらに思えた。
また妄想の異界に彷徨いこんだ主人公が家へ帰ると、そこには大樹の母、高橋恵子がいて、彼を自然に大樹として迎え入れる場面がある。ここから均は一気に不条理な世界へ引き込まれていくのだが、この時の高橋恵子の圧倒的な存在感も印象的である。
それでも、岩松了、ふせえり、松重豊、森下能幸など三木映画常連役者の共演、変な髪形のまったく二枚目でない加瀬亮も怪しかったし、いい感じにくたびれてきた内田有紀さんも、肌の露出こそなかったがエロかったし、沈みそうで沈まない携帯電話、声の小さい悪役など、三木監督ならではの細かい仕掛けもあちこちに用意してある。キャラクターの違う亀梨がいっぱい出て来るぶん、亀梨ファンには楽しめる映画じゃないですか。
2013年劇場鑑賞作品・・・219 映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング
あらすじ:家電量販店で働く均(亀梨和也)は、何の変哲もない郊外の街で平穏に暮らしている。彼の悩みは、実家の団地に顔を出した際に母親に文句を言われたり、職場で上司のタジマ(加瀬亮)にいびられたりすることぐらいだった。平凡な日々に飽き飽きとしていたある日、ひょんなことでオレオレ詐欺を行った均の前にもう一人の自分が現われ……。
<感想>地方では29日から上映された。別に亀梨くんのファンではないのだが、最近、年寄が騙され続けている“オレオレ詐欺”と何等かの関係があるのだろうか、それが気になって観てしまった。まず冒頭のオレオレ詐欺のくだりから飲み込みづらい。オレオレ詐欺で悪銭を手にした若者が陥る、悪夢の世界と割り切って観ればいいのだが、・・・。
きっかけがきっかけだから「なりすました」人物に自分がなっちゃう、というのが始まりとは言え、見る間に話が別方向へとズレていく。一言でいえば「世界中がオレ」になるということ。そこがキモなのだが、この逸脱、ダメな人にはダメらしく、私にはケタタマシいだけで、途中で飽きてしまった。お客さんもまばらだし、笑いもなし。
つい犯してしまったオレオレ詐欺がきっかけで「俺」が増殖し、やがて俺同志の争いが起きて、という筋だけ見ると不条理劇はなはだしく、ドタバタ劇になっている。三木聡監督の映画やTVドラマはほとんど観ていません。だからという分けではないが、どうも「俺俺」は飲み込みずらかった。
殺人犯かもしれない男と東京を歩く「転々」は鑑賞したが、これら三木聡監督作品も、ナンセンスな小ネタが散りばめられて、それだけで出来上がっているようにも見えても、当然ながらサスペンス、謎解き、あるいはホラー的な物語を進める動力は備わっていると思う。
しかしだ、「俺俺」では、誰が俺を削除しようとしているのか?、という幹のサスペンス部分が太すぎて、ナンセンスの枝葉をたっぷりと楽しめなかったのが残念。アクション満載の逃走シーンも、そんなに楽しめるわけでもなく、何かとの妥協なのか、知る由もない。
冒頭の団地が出て来るあたり、団地は同じ顔の部屋が並ぶ。ある種異様な建物ですよね。SF的世界観の中で不条理な出来事を起こすのではなくて、団地という日常のリアルを感じさせる空間の中に設定を持ち込み、合成技術を駆使して人間の増殖を描いているようでもある。主人公の均は、「俺」と同じ顔の大樹やナオと出会い、後に“俺山“と呼ばれる亀梨和也の人格が33人に分裂ならぬ増殖した自分が集まる部屋で過ごし始める。
まぁ、亀梨ファンなら、女装姿や全身入れ墨などの33擬態は、新手のワンマン・ムービーとして楽しめるのだろうが、いかにもネット世代に媚びた発想で薄っぺらに思えた。
また妄想の異界に彷徨いこんだ主人公が家へ帰ると、そこには大樹の母、高橋恵子がいて、彼を自然に大樹として迎え入れる場面がある。ここから均は一気に不条理な世界へ引き込まれていくのだが、この時の高橋恵子の圧倒的な存在感も印象的である。
それでも、岩松了、ふせえり、松重豊、森下能幸など三木映画常連役者の共演、変な髪形のまったく二枚目でない加瀬亮も怪しかったし、いい感じにくたびれてきた内田有紀さんも、肌の露出こそなかったがエロかったし、沈みそうで沈まない携帯電話、声の小さい悪役など、三木監督ならではの細かい仕掛けもあちこちに用意してある。キャラクターの違う亀梨がいっぱい出て来るぶん、亀梨ファンには楽しめる映画じゃないですか。
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