作者スティーグ・ラーソンの死後に発表され、日本を含む世界中でセンセーションを巻き起こした北欧発の一大ベストセラー『ミレニアム』3部作。本作は新たな作者を迎え、その続編として発表されたシリーズ第4弾『ミレニアム4 蜘蛛の巣を払う女』を、ハリウッド版「ドラゴン・タトゥーの女」の製作陣が映画化したサスペンス・アクション。主演のリスベット役は新たに「ブレス しあわせの呼吸」のクレア・フォイ、共演にスベリル・グドナソン。監督は「死霊のはらわた」「ドント・ブリーズ」のフェデ・アルバレス。
<感想>スウェーデン発の人気ミステリー小説「ミレニアム」シリーズの第四作目である。前作「「ドラゴン・タトゥーの女」の監督デビッド・フィンチャーが製作総指揮に回り「ドント・プリーズ」で世界中を恐怖に陥れた、新鋭フェデ・アルバレスに監督を任せた。サム・ライミなど大物監督がその才能を惜しみなく絶賛している。
今回リスベット・サランデル役に抜擢されたのは、TV「ザ・クラウン」でエミー賞とゴールデングローブ賞をW受賞した「ブレス しあわせの呼吸」のクレア・フォイデアル。ミカエル役には「ボルグ/マッケンロー氷の男と炎の男」で注目されたスベリル・グドナソンが演じている。前作でのミカエルよりも若々しく、頼りなげだがそれなりに頑張っていた。
今回の悪役には、「ザ・スクエア/思いやりの聖域」に主演していたクレス・バングが、一転して“スパイダーズ”の殺し屋に挑戦していた。
その他、「ブレードランナー2049」のシルヴィア・フークスが、真っ赤なコートにドレス姿で、双子の妹カミラに扮していて、犯罪組織のボスだった父親の後を継ぎ、組織“スパイダーズ”を率いている。
「ゲット・アウト」のラキース・スタンフィールドは、NSAのスペシャリストのエド・ニーダムに扮して、リスベットの不正侵入に気づき、ストックホルムへプログラムを奪還しにやって来る。
物語は、人里離れた雪に囲まれた邸宅で幼い姉妹がチェスをしている。父親が声をかけるが、姉のリスベットは双子の妹カミラの目の前で、窓から身を投げ、降り積もる雪の中を逃げ去ったのである。
16年後に、ストックホルムで、“女性を傷つける男を罰する“行為を繰り返しているリスベットは、ハッカーとしての新しい仕事の依頼を受ける。天才ハッカー、リスベットが依頼されたのは、人工知能(AI)研究の世界的権威であるフランス・バルデル博士から、ある依頼が舞い込む。それは、彼が開発した核攻撃プログラムを、米国家安全保障局(NSA)へのハッキング。取り戻して欲しいというものだった。彼女にとってそれは簡単な仕事のはずだった。謎の一味が介入してこなければ。
無事に任務に成功するが、NSA側も不正侵入に気づき、スペシャリストのニーダム(スタンフィールド)がストックホルムにやってくる。だが、謎の一味がリスベットを襲い、プログラムは奪われた。リスベットは旧友のミカエルを頼り、襲撃者の素性を調べる。そして判明したのは、敵の組織のリーダーが妹のカミラ(シルヴィア)だということが分かった。
やはり、ノオミ・ラパス、ルーニー・マーラの歴代リスベットに比べると、今回のクレア・フォイはあまりに健康優良女すぎるようだ。アクションよりの内容であるので、危機また危機を乗り越え姿に説得力は生まれているが、明らかにミス・キャストだろう。ついつい、期待したので、ちとがっかりでした。
北欧の寒々しい舞台背景で、シリーズの新しい面を鋭角的に演出しているのは良かった。がしかし、ヒロインのリスベット役のクレア・フォイが、黒いシンプルな意匠を身に着けて、にこりともせずに貧相であり、対してシルヴィア・フークスがカミラという双子の妹役で、真っ赤なスーツを着て仁王立ちして凶凶として登場する。二人の家庭の事情(幼児性の虐待)が恐ろしくて気の毒と思っても、アクションが激しいので、リスベットが依頼された大きな仕事が霞んでしまって見えた。まったくもって惜しいです。
ITガジェット、天才的ハッカーとしてのスキル、レズ、そうは思えぬ身体能力をフルに動員し、連携させた活躍ぶりは痛快ではあるが、目視できぬ標的を捕捉できる対物ライフルが出て来るクライマックスでは、SF映画の域で、さすがにないわという感じがしました。
それでも素晴らしいのがストックホルム市街と森林地帯を駆け巡り、息つく暇なく事態が変転した先に、どんな地点に辿り着くかは予想どうりだったけれども、そこで展開される対決場面の衝撃は、リスベットとミカエルの重い痛みを感じさせており、ずっしりと心に刻み込まれた。
元々の原作者であるスティーグ・ラーソンは3作目を書いた後2004年に心臓発作で亡くなったが、出版者の意向で、ダヴィド・ラーゲルクランツが、この映画の原作である第4作と第5作を書いている。
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