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斬、★★★

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「鉄男」「野火」の塚本晋也監督が初の時代劇に挑んだ作品。江戸末期を舞台に、人を斬ることに疑問を持つようになってしまった若い浪人の葛藤を通して、暴力の本質に鋭く迫っていく。主演は「愛の渦」「映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ」の池松壮亮、共演に蒼井優、中村達也、前田隆成。また塚本監督もメインキャラクターの一人として出演し、迫力の殺陣を披露している。

あらすじ:開国か否かで大きく揺れる江戸時代末期。若い侍・杢之進は喰うために藩を離れ、農村で農家の手伝いをして糊口を凌いでいた。武士としての本分を果たしたいと思いながらも、隣人のゆうやその弟・市助らと穏やかな日々を送る杢之進。そんなある日、剣の達人である澤村が村にやって来る。仲間を集めて京都の動乱への参戦を目論む澤村に腕を見込まれ、一緒に行こうと誘われる杢之進だったが…。

<感想>池松壮亮くんの演じた本作品は、時代劇でもあり、戦争ものでもあり、現代劇でもある。都築杢之進を演じた池松壮亮くんは、浪人で農家の手伝いをしていて、日々の食事を賄われているのだ。250年続いた徳川幕府には大きな変化が訪れており、倒幕か佐幕か、都築杢之進のいる山間部もまた、いやおうなくその波に飲み込まれていく。

浪人や百姓の身分から京に上って、一旗揚げようと目論む青年たちの姿には、浪人澤村次郎左衛門が田舎に来て、倒幕のため、京都の動乱への参戦を持ち掛けるためであり、時代的な背景はあまりはっきりとは描いていないのだ。

 冒頭でのまだ戦乱の匂いがしない穏やかな田園風景に、蒼井優演じる農民の娘が、弟の一助を「ごはんよ」と呼ぶ声が普段の、のんびりとした日々のことのように聞こえた。

この映画の監督である塚本晋也監督が、今回も脚本・制作・撮影に、浪人澤村次郎左衛門という役者としても出演しているのだ。「沈黙 サイレンス」(17)で、モキチの役をした素晴らしい役者でもあります。もっとも驚いたのは監督・制作・脚本・撮影・出演の「野火」(15)で、戦地の中で幽霊のように彷徨う田村を演じた、塚本晋也監督の渾身の演技には驚いた。

この映画の中でも、やはり塚本晋也監督が扮している浪人の澤村次郎左衛門という人物が、池松壮亮演じる都築杢之進と出会い、青年のボクトツとした性格と戦い方における凄まじさに惚れて、京へ一緒に向かおうと誘うのだ。

だから、始終、杢之進の傍に付ききりで彼を絶対に京へ連れて行こうと熱心に問うのだが、本人は木刀での試合には飛び切り立派な侍としての刀の殺陣を見せつけるのだが、本心は良く分からないのだ。

蒼井優ちゃんが、田舎の百姓の娘で、弟が杢之進に剣術の稽古をしてもらい、侍のように京け上がって活躍したいと願っているのを知っている。だが、村の百姓の男たちよりもかっこいいからなのか、若い浪人の杢之進にも惚れているのがよくわかる。

だが、確かにその内面では複雑であり、シーンごとに感情をむき出しにして、杢之進と唇を重ねるシーンでは、ゆうは杢之進の指を噛んで首を絞めるという不思議な行動をとる。それと、浪人集団に強姦されるシーンでも、泥にまみれてエロイが、杢之進が私を助けてくれると信じている女心もいじらしい。

そして、杢之進は刀を手にして、研磨を積むも「果たしてそれで本当に人を殺めることができるのか」と苦悩する。

だから、村に無頼の浪人集団に襲われるシーンでは、村の人たちや娘たちに乱暴を働く男たち。復讐をしてくれと頼まれるも、それに対しても、その荒くれものたちを、木の切れっぱしで倒してしまうのだ。情けないやら、観ていて歯がゆくなってくる。

浪人集団に立ち向かう百姓の一助が、暴行され大けがを負う。そこで、あてにしていた杢之進がさっぱり動かないので、村次郎左衛門が一人で斬って斬りまくり殺してしまい、村の英雄になってしまう。だが、すぐさま浪人集団は他にも大勢いたので、舞い戻るのだった。

一助と両親を殺されたゆうは、「仇をとって、あなたがやって下さい」と頼む。今度ばかりは杢之進が助けてくれると信じていたのに、非暴力主義者というのか、真剣勝負というか、刀で人を殺すということが出来ない杢之進は臆病者なのかも。しかし、実際にはやはり人を殺すという行為に迷いながら、自分も身体を相手に切られて傷を負ってしまう。

ゆうが、その乱暴男たちにレイプされるのを見ても、助けようともしない。澤村次郎左衛門一人ではどうにもならないし、「なぜ、人は人を斬るのか!」、悩む浪人杢之進は、自我を奮い立たせようと刀を見つめて自慰行為をするというシーンもある。実際には見せてはいないが、あれはきっとそうだと思う。

「誰かを殺せば、また誰かが仕返しに来る」そんなことの繰り返しではないのかと、問いかけるのだ。確かに復讐の連鎖は、止まることはないのだが。

澤村次郎左衛門が人を刀で殺した死体が転がり、鮮血と肉片が飛び散っているグロイシーン。何をしている杢之進よ、目には目だろうが、自分も斬られているのに、それでは無駄死にだろうが、せい一杯戦って死ぬのならば男として立派だと思うのだが。

魂を抜かれたような杢之進は、幽霊のような身体で澤村に言う言葉が「私も人を斬れるようになりたい」と叫ぶ。そして、森の中へと消えてゆく杢之進の後ろ姿は、非暴力主義者である続けることの困難さを突き付けているようだった。

 

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