「嫌われ松子の一生」「告白」「渇き。」の中島哲也監督が、岡田准一を主演に迎え、「第22回日本ホラー大賞」で大賞に輝いた澤村伊智の小説「ぼぎわんが、来る」を映画化したホラー。黒木華、小松菜奈、松たか子、妻夫木聡らが顔をそろえる。
あらすじ:恋人の香奈との結婚式を終え、幸せな新婚生活を送る田原秀樹の会社に謎の来訪者が現れ、取り次いだ後輩に「知紗さんの件で」との伝言を残していく。知紗とは妊娠した香奈が名づけたばかりの娘の名前で、来訪者がその名を知っていたことに、秀樹は戦慄を覚える。そして来訪者が誰かわからぬまま、取り次いだ後輩が謎の死を遂げる。それから2年、秀樹の周囲で不可解な出来事が次々と起こり、不安になった秀樹は危険な目に遭うのを恐れ、オカルトライターの野崎(岡田准一)に相談して、霊媒師の血を引くキャバクラ嬢の真琴を紹介してもらう。
田原の身辺を調査すると、田原家は想像を絶するあるものに取り憑かれていることが分かった。一方、事態を知った田原の友人の、民俗学者、津田(青木崇高)によると、そのあるものとは、田原が生まれた故郷に古くから伝わる化け物ではないかと推測された。次々と田原家では惨事が相次ぎ、死者も出る中、得体の知れぬ強大な力を感じたキャバクラ嬢の真琴は、迫り来る謎の存在にカタをつけるため、国内一の霊媒師で真琴の姉・琴子をはじめ、全国から猛者たちを次々と召集するが……。
<感想>この映画は小説『ぼぎわんが、来る』を映画化したものです。“ぼぎわん”というのは、はるか昔から日本に存在した人を連れ去る“何か”であり、それを戦国時代に日本にやってきた宣教師が“ブギーマン”という名前を与え、それが訛ったものとなっています。原作小説は読んでいません。
しかし、実際には得体のしれない存在・怪物の名前です。映画はそれの正体についてはあまり深堀りしません。“ぼぎわん”でも“ブギーマン”でもない映画オリジナルの“それ”が少女とリンクする形で登場します。
まず、主人公の田原秀樹に妻夫木聡が扮しており、その妻には黒木華が扮して、そこに娘が生まれて、“知紗”という名前をつけます。その子供が実は、田原秀樹が実家の裏の山の中で、子供の頃に遊んでいた女の子が赤い運動靴を片方残して消えてしまう事件が起きます。人さらいというか、この村に言い伝わる「ぼぎわん」の仕業という説もあります。
その「ぼぎわん」という化け物が、田原家に生まれた女の子“知紗”に狙いをつけて化け物が現れるという、まるでお伽噺の世界のようなことが、現代でも起きるなんてことはあり得ないのですが、それがやってきて起きるのですね。
実際には、姿も現れなくて仰々しく恐ろしい風と音、いかにも化け物が来たよと言わんばかりの状態に陥れられます。それに、化け物が現れてと言っても、目には見えないので、急に人間の肩腕をもぎ取ってしまうのも何だかなぁ?、鮮血が飛び散る、ドバッと、それに毛虫がうようよと、これはダメだった。苦手の部類です。
普通のアパートに、その化け物が来るということは、考えられないことなのに、しかし、幼い娘の“知紗”にはその化け物の気配が感じるわけで、両親にそのことを伝えるのです。信じていいのか、しかし娘が怖がっているし、やっぱり本当なのかと思い、霊媒師に頼みお祓いをしてもらうことになります。
頼んだのが、田原の友人である民俗学者・津田、それからオカルト専門のライターである野崎に渡って、田原の故郷の民間伝承に由来する、「ぼぎわん」なるもののことを言い、お祓いでもした方がいいと。その民俗学者・津田には、青木崇高が扮しており、見せ場は最後の方で田原の妻である黒木華が鬱状態になり津田と不倫の中になってしまうのには驚いた。
「来る」が祟りや怨念のような心霊的なものなのか、超常現象なのかは分からないが、いずれにしても人智を超えた何かであることに人は恐怖し、信じていた者を信じられなくなっていく。その心が崩壊していく様こそが、何よりも恐ろしく映るのがこの映画の特徴でもある。
ホラーと言うよりも人間の心の闇を表しているような、完璧な夫、イクメンを目指す秀樹は、いかにも自分が子育てをしているようにブログにアップするのですが、実際には何もやっていません。
妻であり母でもある加奈は、育児ノイローゼのような、夫に対しての不満とか、自分が思っていたこととはズレが生じて、やがて家庭は崩壊していきます。
夫の田原秀樹・妻夫木聡が、始めはそんな化け物退治をすることを信じていなかったので、実際に出くわして娘を守ろうと必死に戦う姿にも驚き、あっという間に下半身が無くなっているのに気が付いた。
妻の黒木さんは、夫との関係と子育てへのストレスを抱える弱い女であり、子供が泣きだして怖がるのに対し、それに立ち向かうこともなく、夫が亡くなってからは、パートで働くも経済状態も良くなくて疲れ果ててしまい、心が寂しくなり、男と不倫をして自暴自棄になってしまう。
それに、キャバ嬢の真琴・小松菜奈さんは、弱音を吐くということはないのですが、悪霊を退治する力はないので、自分もその悪霊に染まっていくような弱い感じがした。それでも最後まで幼い“知紗”を守ろうとする優しさが生きる力を与えたのですね。
その姉の琴子、霊媒師を演じた松たか子さん、圧倒的に異様な空気をまとい、顔に傷があり巫女さんの衣装を着て現れると、それだけで迫力がありましたね。それに、物凄い力量で霊媒師を演じており、必死に戦うのだが、力が尽きてしまうという。人間には敵わないものがあることを映像で表現しているのも良かった。
霊媒師の中で、異様な顔をした柴田理恵さんが物凄く怖いイメージが強く、これではその化け物に勝つのでは、なんて思ってしまったのに。
うさんくさいオカルトライター業をしている野崎の岡田准一さん、ちょっとオカルトホラー作品には似つかわしくなく、汚れ役というかどこからともなくやってくる化け物に、立ち向かうのはいいのですが、いつもの力を発揮できなくて、あまりヒーローにはなれなかったのが残念です。
何だか、よく解らない化け物映画というよりも、相当に複雑で怪奇なことを撮っているのだなぁと、韓国の「哭声/コクソン」に偶然に構成が似ているようでもあります。
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