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運命は踊る★★★★

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「レバノン」のサミュエル・マオズ監督が、息子の戦死という誤報に翻弄されたある家族がたどる不条理な運命を描き、ヴェネチア国際映画祭で審査員グランプリに輝いたミステリー・ドラマ。主演は「オオカミは嘘をつく」のリオル・アシュケナージと「ジェリーフィッシュ」のサラ・アドラー。

あらすじ:ある日、ミハエルとダフナ夫妻のもとに、息子のヨナタンが戦死したとの知らせが届く。ダフナは気絶するほどショックを受け、気丈なミハエルも役人の対応にいら立ちを募らせていく。そんな中、やがて戦死したのは同姓同名の別人だったと訂正の知らせが届く。ダフネがほっと胸をなでおろすのとは対照的に、ミハエルは軍への不信感から激高し、息子をすぐに呼び戻すよう要求する。一方ヨナタンは、戦場の緊迫感からは程遠い閑散とした検問所で、仲間の兵士たちと一見おだやかな時間を過ごしていたのだったが…。

<感想>夫婦のもとに新たな知らせが届く。息子の戦死の報が誤りであったと。遠く離れたそれぞれの場所で、誤報をきっかけに3人の想いや過去、生と死が交錯していく物語。何やらギリシャ悲劇を彷彿とさせる格式張ったタイトルだが、原題に込められている哲学的な意味合いとは?・・・原題は「FOXTROT」(フォックスロット)は、1910年代に、アメリカで流行した社交ダンスのスタイルのひとつ。

銃を持った兵士がフォックスロットを踊るシーンもあり、軽やかなリズムでありながら不穏なムードも漂っている。どれだけステップを踏んで移動したとしても、もとの場所に戻ってくるダンスからは、運命に翻弄される人間の悲しみが浮かび上がって来る。

父親役のリオル・アシュケナージが披露するステップから「運命」という重い響きが伝わって来る。

本作が長篇2作目となるイスラエルのサミュエル・マオズ監督が、自身の日常的な体験をベースにして、人生の不条理を描きだしたもの。説明的なセリフではなく、観る者をぬかるみに引きずり込むような示唆的な映像で語られます。

中身はイスラエルを舞台にした正統派の人間喜劇であり、というよりもミステリー仕立ての人間の運命撃といったらいいかも。

そこで描かれるのは、いきなり正面から斬り込んで来るような鋭利な現代の寓話であり、より具体的にいえば、イスラエル兵が駐屯する検問所の事件であり、そこに詰める息子の生死に一喜一憂する父母ら、残された家族の崩壊撃であり、何より依然として戦争状態にあるイスラエルの厳しい現実であります。

物語の発端は息子の訃報。さらに続けて悲しむ家族のもとに届く残酷な誤報。検問所での事件を経て、息子と父母ら家族の運命が二転三転する。ミステリー撃というには残酷だが、人間の運命はどう転ぶかわからないのだ。果たして息子の運命やいかに、・・・。

息子の戦死をめぐる両親の感情的なドラマが語られる第1部から一転して、当の戦場でのぬるい光景が描かれる第2部では、その退屈さがいい仕事をしているようだった。被害者が他人だったら関係ないという、幸運の裏に宿る利己的な側面が生生しかった。

だが、国境の検問所に置かれる宿舎であるコンテナは、日に日に傾いて沈んでいく。食事も缶詰を温めて食べているだけ。心の拠り所は、雑誌や音楽など。それに、肝心の息子を返してくれと頼み、息子が迎えの車に乗り運転する兵士が、前からくるラクダに気を取られてハンドル操作を誤り、道の下へと転がり落ちて死んでしまうのだった。

生きていた息子が、運命なのか、帰りの車で死んでしまうなんてことが起きるとは。本作で重要なのは物語ではなく、ブラックな笑いで政治や社会を皮肉る寓意的な仕掛けなのだ。

下手をするとメロドラマへの道を転げ落ちてしまうところを、サミュエル・マオズ監督は、父母ら家族と息子の内面を丁寧に掘り下げて、運命に翻弄される一家族の崩壊過程を厳しい目で見つめるのである。

2018年劇場鑑賞作品・・・236  アクション・アドベンチャーランキング

 

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