アメリカとメキシコの国境をはさんで繰り広げられる壮絶な麻薬戦争の実態を描き、アカデミー賞3部門にノミネートされたクライム・アクション「ボーダーライン」の続編。前作でベニチオ・デル・トロとジョシュ・ブローリンが演じたアレハンドロとマットを主人公に、もはや一切のルールが無力化した国境麻薬戦争の泥沼を、予測不能の展開でスリリングに描き出す。共演はイザベラ・モナー、ジェフリー・ドノヴァン、キャサリン・キーナー。脚本は再び「ウインド・リバー」のテイラー・シェリダンが担当し、監督は新たに「暗黒街」のステファノ・ソッリマが務める。
あらすじ:アメリカ国内で自爆テロが発生し、犯人の不法入国にメキシコの麻薬カルテルが関わっていることを重く見たアメリカ政府は、CIA工作員マット・グレイヴァーにカルテル壊滅の極秘ミッションを命じる。マットは旧知の暗殺者アレハンドロに協力を仰ぎ、カルテル同士の戦争を誘発するために、敵対するカルテルの仕業と見せかけ麻薬王カルロスの娘イサベルを誘拐する非情な極秘作戦を決行するのだったが…。
麻薬王の娘イサベルを敵対組織を装って誘拐拉致し、一度アメリカ国内に戻った上で、麻薬取締局として彼女を救出する。メキシコ国内に送り届けるというのが作戦の内容だった。しかし、拉致、移送までは上手くいったが、メキシコに入ったところで麻薬王レイエスの息のかかったメキシコ警察の襲撃を受け、イサベルが行方をくらますのだ。アルハンドロは単身、イサベルを追って砂漠地帯に入り込み、さらに危険に見舞われてしまう。
<感想>このルール無き戦いに、終わりはあるのか――。緊迫化する国境麻薬戦争、極限の臨場感は次なる<境界(ボーダー)>へ。絶賛された前作の「ボーダーライン」から2年ぶりの続編である。
前作ではエミリー・ブラントが物語を進めていたが、今回はベニチオ・デル・トロ演じる屈折した過去を持つコロンビアの元検察官アレハンドロが新たな任務に就き、ジョシュ・ブローリン演じるCIA特別捜査官のマット・グレイヴァーが、タッグを組んで完全に軸となる物語。この2人の圧倒的な存在感がこの作品最大の魅力でもある。
その他、麻薬王の娘イサベル役をイザベラ・モナー「トランスフォーマー 最後の騎士王」、CIA副長官役をキャサリン・キーナー、マシュー・モディーンらが共演。
しかし、極秘作戦は敵の奇襲や米政府の無慈悲な方針変更によって想定外の事態を招き、メキシコで孤立を余儀なくされたアレハンドロは、任務、復讐、そして人質として保護する少女の命の狭間で、過酷なジレンマに直面する。兵士としての任務よりも私的人間関係を選び、国境を彷徨うデル・トロに感情移入してしまった。
メキシコ麻薬戦争を素材にしていて、監督は違うけれど、製作・脚本をお案軸する前作の「ボーダーライン」や、ドキュメンタリーの「カルテル・ランド」とともに、この作品も見応え十分でした。トランプ大統領が、今も解決できない問題なので、いろいろなアプローチもできる。
さらに麻薬戦争の渦中に飛び込むのではなくて、新たに戦争を勃発させる物語となっているので、前作のような深い淵を覗いてしまった恐怖も衝撃も、ドラマ性も薄くなっている。かといって、バイオレンスだけに徹してはおらず、デル・トロとカルテル首領の娘イサベルとの、殺伐としながらも意外と染みる国境越えの模様を用意していたりするのも良かった。
メキシコの麻薬カルテルの壊滅作戦に乗り出すことになるのだが。作戦の目的は、前作と同じなのだが、前作が組織の長を狙うものだったのに対して、今回は麻薬組織がテロとも絡み始めたため、数々の組織同士を抗争状態に追い込んで全体を弱体化させようと目論むもの。
イサベルがメキシコに送り届ける時の車両は、軍用の多目的装甲車である。後半にマットが乗るのは攻撃ヘリのブラックホーク。彼がCIAという設定なので軍用機材が登場するわけ。
前作がメキシコでの麻薬組織の凶悪化による社会不安という時事問題をベースに作り上げたアクション・ドラマだったのに対して、すでに完成した「ボーダーライン」の世界を力わざで発展させていくのが今作だった。
実際の事件をヒントにした傑作「ダーティハリー」と、その続編としてフィクションの事件を描き、今ではやはり名作と評価されている「ダーティハリー2」の関係にも似ているようだ。中東系のテロが、メキシコからアメリカ入りするアイデアは新鮮で中々いい感じだ。
後半部分で、デル・トロが頭を撃たれて気を失っていたのだろうか分からないが、死んだように動かないのに驚くとともに、ジョシュ・ブローリンが乗っているヘリが旋回して帰ると、動き出すデル・トロに驚かされる。生きているのだ。1年後に、メキシコのテロ組織の一員となった少年に会いにいくデル・トロがいる。
そして、音楽も前作のヨハンヨハンソンの曲が、重厚を帯びていて良かった。演出部の不注意だと思うような箇所が幾つか観られたのが惜しい。だが、制作陣の執念にただ脱帽した。
2018年劇場鑑賞作品・・・227 アクション・アドベンチャーランキング
「映画に夢中」
トラックバック専用ブログとして、エキサイトブログ版へ
トラックバックURL : https://koronnmama.exblog.jp/tb/30179181