北鎌倉の古書店を舞台に、本のことなら何でも知っている女店主とその助手を務めるバイトの青年が、古書にまつわる事件を解決していく三上延の大人気ミステリー・シリーズを黒木華と野村周平の主演で映画化した青春ミステリー。共演は成田凌、夏帆、東出昌大。監督は「繕い裁つ人」「幼な子われらに生まれ」の三島有紀子。
あらすじ:活字が苦手な体質で、体力だけが取り柄の青年・五浦大輔は、祖母・絹子が遺した夏目漱石の『それから』に書かれていた漱石のサインの真贋を確かめてもらうため、近所の古書店“ビブリア古書堂”へとやって来る。店主は意外にも篠川栞子という若くて美しい女性で、ちゃんと商売が出来るのかと心配になるほど極度の人見知りだったが、古書のことになると我を忘れて話し続けてしまうほど本への深い愛情と並外れた知識を持ち合わせていた。そんな栞子は、サインの謎を解き明かしたばかりか、絹子が家族にもひた隠しにしてきたある秘密をも指摘してしまう。このことが縁で大輔は古書堂で働くことになるのだったが…。
<感想>本がつなぐ《過去》と《今》心揺さぶる感動ミステリー。原作は未読ですが、どこがいいのか見当がつかない。ミステリーとして凄いわけでもなく、太宰治「晩年」の希少本を狙う男が誰かというのは、すぐに察しがつくのだから、謎解きにドキドキするというわけではありません。
主人公の祖母の秘めたる恋の話も、1964年当時の風俗を知っている者からすれば、衣裳を含めて古風すぎるし、まるで昭和の初期みたいだ。ですが、それらを重ねて話を運ぶ手際が、鮮やかなのは良かったですね。
野村周平のイノセントな青年と、メガネをかけた黒木華の、思慮深い女性の組み合わせも良かったせいか、何となくのめり込ませる気分にさせた。
だから、ミステリーとしては話が薄くて、古書のうんちくも弱いのが残念に思う。配役のゴージャスなのが救いなのにね。
説話的には現代篇と過去篇が交互に展開されており、共通する1人の女の秘密が暴かれる構成でもある。過去篇での五浦大輔の祖母・絹子役の夏帆は美しく撮れているが、時代の雰囲気がちょっと変だ。東京オリンピックの頃とは思えないのだから。夏目漱石の「それから」の中にあるような、人妻の夏帆に恋をする東出昌大との恋愛劇も悲恋に終わるが、お腹の子供はどうみても彼の子供ではないかと推測される。
それに、チープになりそうな過去篇を、東出昌大によって上手に演出しているのも良かった。ですが、火事とか危機のために本が犠牲になることへ、古書マニアのヒロインが悩む気配も見せないのが気になってしょうがなかった。
前作で恵まれた脚本に出会ってか、演出力を飛躍させた三島有紀子監督だけあって、ライトミステリーの理想的な形を見せていた。鎌倉ロケと古書堂セットも巧みに組み合わせて、主人公黒木華の化粧っけのない、線の細いヒロイン像も繊細な演技で上手い。
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