Quantcast
Channel: パピとママ映画のblog
Viewing all articles
Browse latest Browse all 2328

判決、ふたつの希望★★★★

$
0
0

アカデミー賞でレバノン作品として初の外国語映画賞にノミネートされたヒューマン・ドラマ。宗教や政治が複雑に絡まりあったパレスチナ情勢を背景に、最初は個人と個人のささいな諍いだったはずが、いつしか国中を巻き込んだ泥沼の法廷闘争へと発展していくさまを描き出す。主演はアデル・カラムとカメル・エル・バシャ。監督はレバノン出身のジアド・ドゥエイリ。

あらすじ:レバノンの首都ベイルート。パレスチナ難民でイスラム教徒のヤーセルは現場監督として住宅の補修作業にあたっていた。するとアパートの住人でキリスト教徒のトニーとトラブルになってしまう。翌日、ヤーセルは上司に伴われ、トニーのもとへと謝罪に赴く。神妙なヤーセルだったが、トニーの放ったある一言に感情を抑えられず、思わず手を上げてしまう。ついに2人の対立は法廷へと持ち込まれるが、弁護士同士の激論は火に油を注ぐ結果に。そこにメディアが飛びつき、事態はトニーとヤーセルの思惑を超えてレバノン全土を巻き込んだ巨大な政治問題へと発展してしまうだったが…。

<感想>ただ、謝罪だけが欲しかった。ごく平凡な市民たちが、小さな口論からいがみ合い、法廷で争うまでに……一体なぜ?・・・「自分も“主人公”になっていたかもしれない……」、徹底した本作のリアリティは、見る者にそんな戦慄を抱かせる。

小さなアパートに暮らす男と、そこにやってきた工事の現場監督。ささいな“水漏れ”が呼び込んだ2人の口論は暴力沙汰へと変わり、国を巻き込む大裁判へともつれ込んでいく。

誰にでも起こりうる“始まり”から、事が雪だるま式に膨れ上がり、やがて驚きの“結末”を迎えるまで――。これは、遠い異国の他人事ではない。見る者に突き刺さる、私たち自身の“あるかもしれない”物語なのだ。

妻とささやかな生活を送っていたトニーだったが、ある日穏やかな幸せは終わりを告げる。自宅で休んでいるときに来客が現れ、不遜(ふそん)な態度をとったら、あなたはどう感じるだろうか? 事件の発端は、私たちの誰もが経験しうるような小さなご近所トラブル。ごく普通の市民トニー(アデル・カラム)は、自宅をいきなり訪問し、「ベランダの排水を確認したい」と言う作業員を拒否する。だが……ただの不寛容が、積み重なって大事になっていく――そんな経験は、誰しもにあるはずだ

一生懸命、仕事にいそしむ日常に突如、見ず知らずの他人から悪意を向けられたらどうする? 実直な現場監督ヤーセル(カメル・エル・バシャ)は、工事現場であるアパートに暮らすトニーに、いきなり水をかけられたばかりか、せっかく取り付けた排水管まで破壊されてしまう。そして、あなただったら、ヤーセルと同じ行動をとってしまうだろうか?

周囲の言葉に耳を貸さず、互いを傷つけあうトニーとヤーセル。なぜそこまでするのか?・・・口論の結果ヤーセルに殴られ、入院するほどの怪我を負ったトニー。怒りが収まらない彼は、ヤーセルと裁判で争う決断をする――。

ヤーセルも一切謝罪せず、2人は徹底抗戦! 「自分がもし同じ目にあったら、きっと同じことをするに違いない」、そう思わされてしまうだけの“説得力”が、本作には充満している!2人の衝突は巨大なうねりとなり、民衆や政治家を巻き込んで予想も付かない事態に変化していくのだった。

隣人同士、隣国同士、近くて遠い者たちのいがみあいは、残念ながらどこにでも見られる月並みな事柄であります。アカデミー賞外国語映画賞にノミネートされた本作は、そんな普遍的な問題に、イスラエル、レバノン、パレスチナというアラブ諸国の火薬庫の歴史を絡めて、法廷劇という骨格を用いながらひねりの利いた極上のサスペンスに仕立て上げられていた。

些細なことで口論になった工事人のヤーセルと、近所の住人トニー。どちらも頑固なうえに、トニーがキリスト教徒のレバノン人であり、ヤーセルがパレスチナ人であるという出身の違いが、火に油を注ぐ結果になるわけ。

つまり、レバノンのパレスチナ難民が国籍を持たないがために、安価な労働力として使われたり、雇用主の都合で解雇されたりということはいかにもありそうだ。

ついに争いは法廷に持ち込まれるが、そこで二人の過去が明らかになってくるあたりから、映画はより一層の面白さを加速させていくのですね。

やがて裁判は、マスコミの報道によって、国中を揺さぶる大問題に発展する。民族の歴史がいかに個人に降りかかってくるのかというテーマは、日本人にとっても、とても他人事とは思えませんね。

ヴェネチア映画祭で男優賞を受賞した、ヤーセルに扮するカメル・エル=パシャの怒りを溜め込む演技も印象的ならば、いかにも傲慢な嫌な奴からしだいに変化を見せるトニー役のアデル・カラムの好演も忘れ難いですね。

対照的な二人がラストシーンで交わす視線が、心に沁みる余韻を残します。

2018年劇場鑑賞作品・・・214  アクション・アドベンチャーランキング

 

 「映画に夢中

 トラックバック専用ブログとして、エキサイトブログ版へ

トラックバックURL : https://koronnmama.exblog.jp/tb/30143991

 


Viewing all articles
Browse latest Browse all 2328

Trending Articles