Quantcast
Channel: パピとママ映画のblog
Viewing all articles
Browse latest Browse all 2328

1987、ある闘いの真実★★★★

$
0
0

1987年の軍事政権下の韓国で実際に起きた、民主化運動の転換点となった大学生拷問致死事件の真相を、隠蔽に奔走する警察関係者とその動きに疑問を抱いた検事をはじめ、記者や看守、学生など事件に関わる様々な立場の人々の緊迫の人間ドラマを通してサスペンスフルに描き出した衝撃の実録群像劇。出演はキム・ユンソク、ハ・ジョンウ、ユ・ヘジン、キム・テリ、ソル・ギョング。監督は「ファイ 悪魔に育てられた少年」のチャン・ジュナン。

あらすじ:1987年1月14日。軍事政権の圧政に反発する学生の民主化デモが激化する中、ソウル大学の学生が、警察の取り調べ中に死亡する。報せを受けたパク所長は、すぐさま部下に遺体の火葬を命じる。一方、警察からの申請書の内容を不審に思ったチェ検事は、上司の忠告を無視して司法解剖を強行し、やがて拷問致死が裏付けられる。それでも警察上層部は拷問を否定するも、チェ検事に接触した東亜日報のユン記者によって死因が暴露されると、今度はパク所長の部下2人の逮捕で事件の幕引きを図ろうとするのだったが…。

<感想>「ファイ 悪魔に育てられた少年」も面白かったが、そのチャン・ジュナン監督が凄い映画を撮りあげていた。全体に強めの演技を採用して、膨大な数の登場人物の人物像を観客の頭に次々と叩き込むと言う。

ソウル中心部、取調室、新聞社の編集部など主要な舞台の作り込みだけでなく、事件の真相を伝えるメモや速報を報じる新聞、重要なモチーフとなる運動靴に至るまで、考古学的ともいえるほどのこだわりぶりなのだが、そこには表現上の問題だけでない、社会的な理由もあるのだろう。

作品は韓国でも最も権威のある文化賞の一つ「百想芸術大賞」映画部門の最高賞に輝いているが、同時に最優秀男優賞を受賞したキム・ユンソクの存在感は尋常ではない。パク所長として、反体制分子排除のためなら手段を選ばない非情さと暴力性を演じ、典型的な悪役を演じており、しかも「脱北者」で富裕層に生まれながら家族を殺され、反共思想の鬼となったと言う設定も興味深い。

 

監獄から命がけで重要書類を届けようとする看守のユ・ヘジンも良かった。「タクシー運転手」でも高く評価されたが、権力側でありながら民主化に協力しようとする微妙な立場を、持ち前の表情で演じていた。

警察に対峙するチェ検事のハ・ジョンウの飄々たる感じの表面の下にある、鋼のような意志も印象的でした。この3人の役柄が示しているのは、それぞれ現実に翻弄される複雑なパーソナリティである。

それぞれの死闘を通して、紋切り型の勧善懲悪で割り切ることのできない人間を描くことに徹したと言えるだろう。韓国映画界の人気俳優たちは、それをストーリーに自然に溶け込ませる、その実力の高さを示して余すところがない。

エスカレートする警察の暴力と上層部との駆け引きは、まるで暗黒街の抗争を描いたサスペンスのようで、とにかく息もつかせずに展開する。だが、場面ごとに日付と時間と場所が示されて、アクションが史実通りに進んでいることには、驚かざるを得ません。

そこに束の間のラブストーリーが入り込む。看守の姪と抵抗運動に身を投じる大学生との恋は、始めはドラマ的な味付けのようにも感じられたが、実は一番重要な部分を担っていることが最後に分るのが素晴らしい。

姪を演じるキム・テリ、延世大学校の学生イ・ハニョルを演じるカン・ドンウォンは、1987年当時の学生として、その時代に生きた普通の若者がどんな格好をして、どんな音楽を聞き、どんな顔していたかを通して、今日の人々に繋がるからである。

 

実はこの事件にかかわる資料が保存されているからであり、水攻めで拷問死したパク・ジョンチルは記念館があり、遺品とともに当時の写真も展示されている。イ・ハニョルも同様で彼が履いていたスニーカーも大切に保存されている。

彼らは「烈士」と呼ばれる人々を木ねんした施設は、大学はもとより中学生や高校生に、事件と抗争の詳細を伝えるためにも利用されており、社会的記憶の共有の場として機能しているのだ。作品に登場した「その日が来れば」は、知らぬ者のない抵抗歌として受け継がれている。

2018年劇場鑑賞作品・・・204  アクション・アドベンチャーランキング

 

 「映画に夢中

 トラックバック専用ブログとして、エキサイトブログ版へ

トラックバックURL : https://koronnmama.exblog.jp/tb/30114522



Viewing all articles
Browse latest Browse all 2328

Trending Articles