人気エッセイストの森下典子が、茶道教室に通う日々の中で体験したいくつもの気づきや感動を綴った『日日是好日 「お茶」が教えてくれた15のしあわせ』を黒木華、樹木希林、多部未華子の共演で映画化した人生ドラマ。人生に迷っていた主人公が、茶道教室で出会ったお茶の先生との触れ合いを通して、季節を五感で味わうことの素晴らしさや、生きる歓びを少しずつ実感していく姿を瑞々しいタッチで綴る。監督は「まほろ駅前多田便利軒」「さよなら渓谷」の大森立嗣。
あらすじ:真面目で、理屈っぽくて、おっちょこちょいの二十歳の大学生・典子は、母から勧められて同い年の従姉妹・美智子と一緒にお茶を習うことに。稽古初日、茶道教室にやって来た2人は、“タダモノじゃない”と噂の武田先生に迎えられ、さっそく稽古を始める。しかし、意味も理由も分からない所作の数々に、ただ戸惑うばかり。大学卒業後、就職した美智子がお茶から離れてしまう一方、就職につまずいた典子は出版社でアルバイトをしながらお茶に通い続けるのだったが…。
<感想>先行上映にて鑑賞。私も丁度19歳のころに茶道と華道を習い始めました。近所のお婆さんが教えていた裏千家の茶道でしたが、2年くらいで止めてしまいましたが、一応お道具だけは揃えて置きました。今でも何かあると道具を取り出しては、お点前を立てて無心に帰ります。不思議と作法は覚えているもんですね。
ところでこの作品のいいところはたくさんあります。特に女性たちにお勧めしたいですね。先日亡くなりました樹木希林さんは素晴らしい方でした。どんな役柄でも、その役になり切っていて、観ている私たちに感動を与えてくれる素晴らしい俳優さんでした。一番に思い出すのは、『わが母の記』そして、『あん』それに、『モリのいる場所』ですかね。その他にも、殆ど出演作は鑑賞してます。
この作品での核といいましょうか、習い事というと堅苦しく考えがちですが、自分が出来ないことを師匠と仰ぐ方に習うということは、とてもいいことで、どの先生でも生きてきた道が見えるような、茶道家にはその佇まいに出来ているし、教えを乞うこととは、先生の一言、一言が胸に染みてくるわけで。
武田先生は、「いつやめてもいいのよ、ただ美味しいお茶を飲みにくる、それでいい」と優しく諭すように言うのだ。茶室の掛け軸の「日日是好日」という書に、難しく考えることはない、「今」を大切に生ければ自ずと拓けていくのだと、そう教わった気がしました。
まるで季節のように生きているかのように、庭には四季折々の草花に、茶室には掛け軸とお花がいけてある。そして、出される茶菓子も季節ごとに違うし、自然とお茶を嗜むことが楽しいような、心が清々しくなるような気がする。
樹木希林さんが扮する武田先生は「お茶はね、まず形なのよ。初めに形を作っておいて後から心が入るものなのね」といった茶道の教えのほかに、「わたし、最近思うんですよ。こうして毎年同じことができるってことが幸せなんだなって」など人生の師としても名言多数あります。
ベテラン女優の樹木さんが、茶道の先生で良かったと思う安心感と、映画の中で映し出される茶室の蹲(つくばい)、掛け軸、柄杓(ひしゃく)鉄の茶釜、なつめなどの茶道具も印象的で、茶道の奥深さ、豊かな世界を感じさせる映像となっているのも素晴らしかった。茶碗の中に茶筅で優しく最後にのの字を描くようにと、そういえばコーヒーを淹れる時も、お湯を注ぐ時にのの字でしたね。
共演の黒木華と多部未華子の娘たちが、初めて習う茶道教室に戸惑いながらも、素直に教えを聞きながら覚えていく姿も愛い愛いしくて、着物姿の二人の綺麗なことといったらなかった。
二人の恋愛話に、大学を卒業してからの就職のこととか、黒木華扮する典子が出版社へ就職試験にいき、採用試験に落ちてしまったこと。
帰りに茶道教室へいき、先生に「お茶を頂きに上がりました」と茶室に行くと、そこには、だるまの絵が描かれた掛け軸が、先生は「だるまさんの大きな目で睨んでもらおうと思って」という。その意味は「必勝、七転び八起」とか、先生が典子の気持ちを汲んで掛け軸を選んで掛けていたのですね。
正月の初釜の行事も、みんな他の生徒さんたちと並んで、濃茶を頂く所作も素晴らしかった。つい20歳の自分を思い出してしまう。1月のお茶碗には、その年の干支が描かれた茶碗を使用するという凝りようで、お茶碗や、その他のお道具全てが全部素晴らしくて、あの頃に時間が戻った感じがして、この映画を観て本当に良かったです。
ラスト近くで父親が亡くなって、典子は亡き父親にお茶を点ててあげたのでしょうかね。就職のことも、結婚のことも両親は心配していたでしょうに。早速、家に帰って夫に、薄茶でも点てましょう。
2018年劇場鑑賞作品・・・198 アクション・アドベンチャーランキング
「映画に夢中」
トラックバック専用ブログとして、エキサイトブログ版へ
トラックバックURL : https://koronnmama.exblog.jp/tb/30095379