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追想★★★

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「つぐない」の原作者イアン・マキューアンの傑作恋愛小説『初夜』を、主演に「つぐない」のシアーシャ・ローナンを迎え、マキューアン自ら脚本を手がけて映画化した切なくも心に沁みる感動作。社会的にも文化的にもいまだ保守的な1962年の英国を舞台に、結婚式を無事に終え、新婚旅行先の海辺のホテルで初夜を迎えようとしていた若いカップルが、互いに愛し合いながらも幼さゆえの行き違いへと発展していくまでの揺れる心の軌跡を、回想シーンを織り交ぜつつ緊迫感溢れる筆致で繊細に綴る。共演は「ベロニカとの記憶」のビリー・ハウル。監督は舞台を中心に活躍し、TV「ホロウ・クラウン/嘆きの王冠」でも高い評価を受けたドミニク・クック。本作が長編映画監督デビューとなる。

あらすじ:1962年、夏。バイオリニストとしての野心を秘めたフローレンスと歴史学者を目指すエドワード。偶然の出会いをきっかけに一瞬で恋に落ちた2人は、対照的な家庭環境などさまざまな困難を乗り越え、ついに結婚式の日を迎えた。式を終えた2人が新婚旅行へと向かった先は風光明媚なドーセット州のチェジル・ビーチ。幸せいっぱいでホテルにチェックインした2人の心に、数時間後に迫る初夜を上手く終えられるか、という不安が次第に重くのしかかっていくのだったが…。

<感想>原題が「初夜」で、邦題が「追想」、回想シーンが多いので邦題がぴったりときますね。原作者が「つぐない」のイアン・マキューアンの傑作恋愛小説なので、主演にシアーシャ・ローナンなのが納得でした。だいぶ大人になり演技も巧いし、美しい女優なので、あわよくば将来は大女優のメリル・ストリープのように成ってほしいです。

フローレンスの母親に、エミリー・ワトソンが、シアーシャの恋人のエドワードには、「ベロニカとの記憶」で若き日のトニーを演じていた、ビリー・ハウルが。結婚初夜のホテルでの数時間の物語に、回想シーンを挟みつつも、ラストは数十年後へ。

華奢なシアーシャ・ローナンの今時感がゼロな個性が、1962年の保守的なイギリスの背景と、作品のビタースウィート性を見事に織り上げていた。フローレンスの父親は上流社会の実力者であり、エドワードは庶民の息子。結婚後には、フローレンスの父親の会社で働くことが決まるも、エドワードには納得が出来ないのだ。

それ以上に、ドラマの前提となる社会の保守性と、自尊心が高く皮肉屋で本心を言わない人物らに共感ができないのだ。

結婚をして初夜を迎える本作の若い男女も、英国式の複雑な性格の人たちのようだった。ホテルの一室と浜辺で愛し合う二人の関係が、どんどんと崩れて行き演劇的な場面が多いし、とても観ていられなかった。

核心はホテルでもほんの短い時間だが、回想を織り交ぜながら数十年後を描くこの映画、男女の感情をはっきりと表現する手法が、監督のドミニク・クックがもともと舞台演出家だけあってか演劇的でもあったのが残念。

シアーシャ演じるフローレンスの言動は、エドワードのプライドをズタズタに砕く威力があり、物語を主導するのだ。初夜の性的な問題が、原因で別れた男女。

女性の方が結婚に夢見る夢子さんで、聡明ゆえの潔癖さと融通がきかなさを漂わせるフローレンスと、女心が絶望的にわからない新郎のエドワード、男性の方がどうやら童貞で奥手の男の子なので、キモさと情けなさが胸を打ちます。

彼の母親が事故で頭を打ち、認知症のようになり、裸で平気な日常の状態の母親の世話を、嫁になる上流社会育ちのフローレンスには無理なこと。初々しくも不器用な2人の姿に、不思議な余韻と切なさが込み上げてきます。

離婚後のエドワードは、その後も独身を続けて、小さな中古のレコード店を経営している。未だにきっと、フローレンスを愛している様子が見えるエドワードの姿に、純情青年の後ろ姿が出て気の毒にと思いましたね。

ラストでは、フローレンスが年をとってから念願のホールでの5重奏の演奏会が描かれており、あの若き頃にフローレンスと一緒に演奏していた男が夫になっていたという。その演奏会を観に行くエドワードが、彼女の見事な演奏ぶりに拍手をし、彼女を讃える姿に胸が締め付けられるようで、予想外にも泣けて来きました。

終盤には、母親の誕生日のプレゼントにと、幼い少女がクラシックしか聞かない母親に、大好きなポップな曲のレコードを買いに来るシーン、映画オリジナルのエピソ-ドも見られるが、その翻案の仕方は男性監督ゆえの甘さとしか言いようがない。それでも、若い恋愛時代の2人だけでなく、以後の時代もしっかりと見据える構成が良かった。

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