第二次世界大戦下のベルリンでナチスの迫害を逃れ終戦まで生き延びたユダヤ人たちの驚きの実話を、実際の4人の生還者たちへの取材をもとに再現した実録サバイバル・ドラマ。監督はドキュメンタリーを中心に活躍するクラウス・レーフレ。
あらすじ:1943年6月、ナチスの宣伝相ゲッベルスは、ベルリンからユダヤ人を一掃したと宣言した。しかし実際は約7000人のユダヤ人がベルリン各地に潜伏しており、そのうち約1500人が終戦まで生き延びた。そんな中、ユダヤ人の青年ツィオマは、咄嗟の機転で収容所行きを免れる。そして潜伏生活を送りながら、ユダヤ人のために身分証の偽造に精を出す。その他ドイツ軍将校のメイドに雇われた女性ルート、ヒトラー青少年団の制服で素性を隠し、反ナチスのビラ作りを手伝うオイゲン、髪を金髪に染めて監視の目を逃れるハンニを加えた4人のユダヤ人に焦点を当て、彼らがいかにしてホロコーストを生き延びることが出来たのか、その過酷なサバイバルの行方を、本人たちのインタビューを織り交ぜ解き明かしていく。
<感想>1933年、442万人の人口を抱える大都市ベルリンには、16万人ものユダヤ人が暮らしていた。ヒトラー政権の誕生により、ユダヤ人は職業や住居などを奪われ、やがては強制収容所へと移送されて生存権まで剥奪されてしまう。
第二次大戦のベルリン。そこで身分を偽って潜伏生活を送るユダヤ人の心情からとらえられた街並みの映像が美しい。暗くて、閉鎖的だが、どこか艶っぽくて現実感を欠いた世界観がそこにはある。本作では実際に生き延びることができた4人がカメラの前で語り、その真実を俳優たちがドキュメンタリー・ドラマになっている。
ドキュメンタリー監督にとって、最大のジレンマは過去の出来事を自分のカメラで撮影できないことだ。本作の監督はTVドキュメンタリー畑の人らしい。ベルリンの潜伏して生き延びたユダヤ人へのインタビュー部分と、劇映画のパートを組み合わせた大胆な構成にしている。
そうすれば、過去の事象を微細なディテールに至るまで映像で表現できるからだ。とはいえ、TVの再現ドラマを見慣れていることもあってか、特に斬新な手法にも感じられなかったのは、観る側がそういう映画に麻痺しているからなのか、とも思った。
この映画が描く、ユダヤ人が戦時下のベルリンに潜伏して生き延びた事実も、今まで知らなかったことで、実際に生き延びた人たちに敬意を払いたいです。
当事者が語る極限化での生存は、存在すること自体が許されなかった事実を併せて、今更ながらに戦慄します。
語りべと、再現ドラマで構成しており解りやすいのですが、語りべだけで通した方が、むしろ生存者の本質に触れたのではないかと思ったのだが、・・・。
両親を病気で亡くし、一人っ子だったため孤児となるが、ゲシュタボの手から逃れたの彼女を救ったのは、かつての母親の友人だったドイツ人女性であり、髪の毛を金髪に染め、名前を変えて生きるための手筈をしてくれた。次に出征を間近に控えた青年との出会いがあり、それによって青年の母親との接点ができ、この家族の元へ引き取られることになる。そして、彼女と青年の母親は、いつしか本当の母娘のような絆で結ばれてゆく。
彼女がホロコーストを体験せずに済んだのは、幸運だったと統治を振り返る。そしてまた逆に、もし両親が生きていたら、私は今ここにいなかっただろうとも。彼女の周りのユダヤ人は、みな虐殺されたのだから。その言葉の意味は重いと感じた。
そのころのユダヤ人の女性たちは、ドイツ人の戦争未亡人を装って映画館に出かけるのだが、中には、ドイツ国防軍の将校にメイドとして雇われることも。
ラストのソ連兵に攻め込まれることは、彼らにとって救いであると同時に、痛みを伴うこと。自分たちの町でありながら、憧れの場所を舞台としたスリリングなサスペンス映画における、キーアイテムは身分証でもあるのですね。
潜伏中の少年がその偽造に生きるモチベーションを見出すエピソードを始め、命を脅かすそれが別の誰かを助けるお守りにもなるのだと、感じました。
本作の何よりも貴重なことは、生還者たちの生の声や、記憶をひもときながら見せる微細な表情を克明に収録できていることにある。終戦から73年もが経過した今、ナチスの時代、ホロコーストの記憶を語る生き証人は年々減少してきて、存命の方々もかなり高齢になっていた。
映画を観て、知らなかったことを教わる場合が多いのですが、ここ数年、続々と公開されるナチス・ヒトラーを扱った作品からは、とりわけ多くを教わったと思いますね。
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