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告白小説、その結末★★★★

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戦場のピアニスト」「おとなのけんか」の名匠ロマン・ポランスキー監督がデルフィーヌ・ド・ヴィガンの『デルフィーヌの友情』を映画化したミステリー・サスペンス。スランプ中の女性作家と彼女の前に現われた大ファンだという謎の女性がたどる予測不能の運命を、不穏かつ緊張感あふれる筆致でミステリアスに描き出す。主演はエマニュエル・セニエとエヴァ・グリーン、共演にヴァンサン・ペレーズ。

あらすじ:心を病んで自殺した母のことを綴った小説がベストセラーとなった女流作家デルフィーヌ。しかし次回作が1行も書けず完全なスランプに陥っていた。そんな中、サイン会で出会った熱狂的ファンだという美女エルとひょんな成り行きから親しくなり、ついには一緒に暮らすまでに。その一方でエルと親密になっていくのと軌を一にするように、周りで次々と奇妙なことが起こり、神経をすり減らしていくデルフィーヌだったが…。

<感想>ご贔屓、ポランスキーの新作。しかも脚本がアサイヤスときてる。両者お好みの不条理サスペンスもの。オリビエ・アサイヤス脚本・監督作品の「アクトレス 女たちの舞台」や「パーソナル・ショッパー」などがあるが、まず彼自身の監督作では書かない類の緻密さであります。

名匠監督が、楽しそうに最古サスペンスを演出して、人気作家、同居人、ゴーストライター、入れ替わり殺意の匂いがする。エル役のエヴァ・グリーンが主人公のデルフィーヌのクライアントや、大切な友人たちにまで、断りのメールを勝手に送りつけてしまうのだ。

つまり、秘書兼お手伝い兼、ゴーストライターと言う、主人公に成りすまして講演会にまで行くという厚かましさ。じわじわと女主人公を追い詰めていく、その手つき、息づかいに、この監督の熟練の巧さを感じて、ぞくぞくする感じが面白い。

だけれども、この種の映画に付きものの、モヤモヤとした感覚。それが観念すぎというか胸にこないのだ。少し型にはまった物足りなさもあって、どうもこの監督には、奥方が主演だと一味落ちるような感じもした。

ヒロインがスランプに陥り、同居人のエルのことを小説に書こうとするも、エルの方が一枚上手であり、強引に主人公の屋敷に同居して身の回りの世話を始めたことから、事件が起き始まる。

階段から落ちて左足を骨折するも、エルに主人公がクローゼットや地下室に閉じ込められるのでは?・・・と勝手に身構えたことも含めて、無論ポランスキーは原作以上に、ダイナミックに期待に応えてくれる。だから、孤独な極限状態下の緊張を、鮮烈に描いてくれるのだ。

同じ毒を盛るのでも、「ファントム・スレッド」ならば、甘美な愛の行為だが、本作のそれは、かまいたち現象の如き妖しさである。食事の中に何度もネズミ捕りの殺虫剤を入れて食べさせるとはね。ここまでくれば、誰でもが気づくであろうデルフィーヌの、被害妄想の人物がエルなのである。つまり、主人公とエルは同一人物であることですね。

オープニングと、ラストシーンのサイン会の対比が面白い。第三者用のサインを求める客が目立つ冒頭からして、自分の為に列をなすラストへと、洗練された構成にも納得がいく。「ゴーストライター」「おとなのけんか」「毛皮のビーナス」と近年のポランスキー作品はいずれも、小振りながら熟成された芳醇なワインのようにすこぶる余韻が残る作品ばかりだった。

今作もそれに連なる好きな作品だが、気になるのが結末主義のところ。それは、このクラスでは決して上等な話法でもないが、衝撃的結末で観客の度肝を抜くのも映画の魅力としてみれば、まぁ上等な方でしょう。

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