ロバート・C・オブライエンの『死の影の谷間』をマーゴット・ロビー、キウェテル・イジョフォー、クリス・パインの共演で映画化したSFドラマ。近未来を舞台に、放射能汚染を免れた谷間でたった一人生き残った女性と、そこに現われた2人の男が織りなす緊迫の心理劇をスリリングに描き出す。監督は「コンプライアンス 服従の心理」のクレイグ・ゾベル。
あらすじ:世界中が死の灰に覆われる中、放射能汚染から奇跡的に逃れた谷間に、愛犬とともにたった一人で生きる女性、アン・バーデン。農場を一人で管理し、生存者を探しに谷を出た家族の帰りを待ち続ける彼女は、強い信仰心を支えに孤独な日々を耐えてきた。そんなある日、安全な場所を求めて放浪していた科学者の黒人男性ジョン・ルーミスが姿を現わす。2人は互いに性別や人種、宗教観もまったく異なる相手に警戒心を抱きつつも、協力して共同生活を送っていく。やがて、そんな彼らの前に、謎めいたもう一人の生存者、ケイレブが現われるのだったが…。
<感想>核汚染の末に生き残った1人の女と2人の男――人間の本性をえぐり出す衝撃のSFサスペンス。面白かったですね。何しろ、主人公がマーゴット・ロビー、そこへやって来た始めの一人、キウェテル・イジョフォー、そして、もう一人の男がクリス・パインという、3人しか登場しないのですが、だからこそおもしろいと思える作品となっています。
チェルノブイリか福島第一原発の事故のような、人の気配が途絶え、荒廃した風景から始まるこの映画。放射能汚染の末に生き残った人間のディストピア系のSF映画と思いきや、女性一人が犬と暮らす谷間の村にやって来た男性2人、3人のベタな恋愛劇であったのが惜しいところ。
世界が放射能に汚染され、映画の舞台となる谷間にある村だけが、奇跡的に助かったのなら、一瞬だけ外の世界を見せたほうが説得力があったのではないかと思いました。最後まで、外の世界は見せません。
信仰心の厚い白人女性と、科学者の黒人男性が生き残り、対立しつつも惹かれ合う設定が良かった。だが、そこへ3人目の生存者であるケイレブが2人の前に現れたことからその生活は一変していく。
始めは人里離れたところに、美女が一人で住んでいるいて、そこへ成人男性が現れたら、何も起きないわけがない。それなのに、黒人の男は言い訳ばかりしていつまでも煮え切らない態度なのには、何とも不可解だった。
そんな状態のところへ第3の男、白人でイケメンで体格もいい男が登場する。もう悲劇は約束されてようなもの。どうみてもクリス・パインの最期が気の毒でならない。
黒人の科学者ジョンは、頭がいいから教会を壊して、その木材を使い水車を作り発電装置を作るのであります。始めは、女性のアンが、教会は父親が村人たちのために創ったものであり、壊したくはないと信仰心があついのだ。
食事の前の祈りもかかさないし、黒人のジョンは無・信仰で、教会には興味がない。それに、男女のことにしても、ジョンは白人の女性に対して敬うように直ぐには手を出さなかった。キウェテル・イジョフォーが汚染されている川に泳ぐ姿、筋肉バリバリで良かったのに、放射能汚染の川で泳いだので直ぐに気分が悪くなり、その後はアンがジョンの看護をすることになる。
しかし、そこへ白人の男が現れて、始めは黒人のジョンが自分の身を一歩引くように、アンに対して「君の好きなようにすればいい」と。男二人で野鳥を獲りに森へと行く。何を賭けるというクリス・パインに対して、ジョンは答えが出来ない。するとクリス・パインは、アンを賭けようと言うのだ。
野鳥を猟銃で撃ち落としたのは、ジョンの方であり、食事をしてその後に、お酒が入り、ダンスを踊る。どうしても若いので、もやもやとしてきて、ベッドインということになるわけ。
というか、アンも始めは黒人のジョンでもいいと思っていたはずなのに、ぐずぐずとしているうちに、白人の男が現れて、横からかっさらって行くみたいに、アンが白人のクリス・パインの部屋へ誘いに行ったような感じ。
次の朝からは、どうみても白人の男女が出来上がっていて、黒人のジョンがここを出て行かなければならないような、気まずい雰囲気になる。
だが、そこが科学者のジョン、滝を利用して水車を回して、発電装置を作るのですから、それに、小屋にあった耕運機も修理をして動かすようになるし、今まで女一人で、心細い毎日を送ってきたアンには、快適な生活になる。
しかし、男2人の間に少しづつ不安な空気が漂いつつ、水車を作る段階で、滝の上はまだ放射能汚染区域であり、防護服を着ての崖をよじ登り、上でロープを持ち引っ張り上げるという作業で、その時、アンの恋人になった白人のクリス・パインが、足を滑らせて崖下へ落ちそうになるのを、ジョンが満身の力で助け上げるのだが、その時にジョンの脳裏に浮かぶ悪魔の声が、ロープの手を放してしまう。すなわち、白人の男が滝つぼへ真っ逆さまに落ちて行ったような。そのまま、クリス・パインは帰らなかった。
ジョンがどうしてアンを抱いてやらなかったのかには、それには訳があったのです。つまり、アンの弟をジョンが殺してしまい、弟が放射能を防護するための小さな箱の車も、食料もジョンが奪いとり殺してしまったことを、最後にアンに告白する。
原作では登場人物が男女2人だったのを、映画では3人にした理由がここにあったのかと、3人の俳優の役柄への誠実な取り組みは評価できる反面、絶対に一人の男がいらなくなるはず。ということは、この展開がスリリングでサスペンスフルな殺し合いが起きるのですね。
男女の三角関係の心理劇になるのは残念なかぎりです。設定をいかしたプロットにできたのではないかしらね。
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