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Channel: パピとママ映画のblog
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ハッシュパピー バスタブ島の少女 ★★.5

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昨年のサンダンス映画祭で上映されて以来、新人ベン・ザイトリン監督によるこの低予算の映画は、数多くの賞賛を受けていた。サンダンスではグランプリと撮影賞を受賞。カンヌ国際映画祭にも招かれ、カメラドール、国際批評家連盟賞など四冠に輝き、もしかしてアカデミー賞でも波乱を起こすかも?・・・などと言われていたのだが。
しかもこれが演技初体験の少女クヮヴェンジャネ・ウォレスが、史上最年少の主演女優賞候補となり、一躍世界的に注目度がアップした。日本では、4月20日から公開が始まった本作はどんな映画なのか?・・・そしてクヮヴェンジャネのオスカー級の演技とは?・・・。

やっと地方でも上映されました。本日で終演というので鑑賞してきた。
舞台はこれがアメリカなの?・・・と疑ってしまうような南ルイジアナの架空の街で、“バスタブ島”と呼ばれる河川ぞいのコミュニティー。そこに住む人たちは誰もが貧しいけれど、生きる力に溢れている。6歳のハッシュパピーとその父親も二人きりで暮らしているが、父親は幼い娘に手を上げることもあるし、生活力はゼロ。その父親はサバイバル技術が異常に卓越した無職のホームレス。幼い娘に生きたカニを素手でちぎって食えと迫るは、酒を飲ませるわで、間違った生存スキルを戸塚ヨットスクール(だいぶ前に話題を呼んだ)並みに叩き込んでいく。

でもハッシュパピーは、過酷な環境をものともしないバイタリティーをもっている。モンスター級の強い魂を持った少女の不思議なサバイバルにして、スパイク・ジョーンズの「かいじゅうたちのいるところ」なんかより遥に好感が持てるモンスターをめぐる異形なる寓話にして、クライマックスにびっくりの巨大イノブタ軍団が突進してくる圧倒的なモンスター映画でもあった。

そんな彼女たちの“バスタブ島”が大嵐のために水没してしまう。家はなくなるし、動物は死んでしまう。一帯が強制避難区域にされてしまう。
しかも、ハッシュパピーの頑固な父親の具合がどうもよくない。だがこれだけの不運が続いても、ハッシュパピーは運命に流されるような、やわな子供ではなかった。

4000人もの候補者から奇跡的に見つかった撮影当時6歳のクヮヴェンジャネが、普通の子役と違うのは、彼女がこの映画で見せる個性が、あどけないとか可愛いとか、並みの大人以上にタフな姿勢とか、逆境を逆境とも思わないような根性といったものだから。これは演技経験ゼロの少女が演じたとは到底思えないほど自然に演じている。だからなのか、クヮヴェンジャネちゃんの奇跡的な輝きと存在感も相まって見るべき映画になっているようだ。

ただオリジナリティはまるで感じなかった、と言うよりは、少女の冒険と成長、洪水に代表される大自然の驚異、巨大生物(特にブタとイノシシ)へのこだわりなど、映像に込められたイメージのほとんどは、マジカル・リアリズムなんかではなく、「宮崎アニメ、もののけ姫」からの影響でしょう。これって、ほとんど宮崎アニメを描いてきたキーワード群を、アメリカン・ダーティに、そしてかなり表面的に描いた、悪意なき実写版パクリといってもいいと思う。
近未来シミレーション映画で、もちろんフィクション。しかし、それをドキュメンタリーのように撮る。それで見たこともないような映像ができあがる。
劇中で何度も現れる、バッファローまがいの長い角の野獣が、この映画のシンボルとなっているようだ。氷河期の動物オーロックスの造形が見事ですね。鼻息が聞こえてきそう。水と泥とのロケーションも、少女を中心にした配役もいいが、ひとつひっかると言えば、どこか寓話に逃げている部分があること。
映画自体も、生きることの厳しさを幻想と現実的なシーンを交えて描き、ファンタスティックでいて、リアルで厳格さもある不思議な味わいを感じさせる。
2013年劇場鑑賞作品・・・207  映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング

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