名作「さらば冬のかもめ」の原作者ダリル・ポニックサンが2005年に発表した小説を「恋人までの距離(ディスタンス)」「6才のボクが、大人になるまで。」のリチャード・リンクレイター監督が映画化した感動のロード・ムービー。イラク戦争で息子を失った仲間のために30年ぶりに再会したベトナム戦争の戦友3人が、遺体を連れ帰る旅の中で悪友時代の固い絆を取り戻し、喪失の悲しみを乗り越えていく姿を、ペーソスとユーモアを織り交ぜ描き出す。主演はスティーヴ・カレル、ブライアン・クランストン、ローレンス・フィッシュバーン。
あらすじ:ベトナム戦争を経験した元軍人のドクは、1年前に妻に先立たれた上、2日前には一人息子をイラク戦争で亡くしてしまう。悲しみに暮れる彼が頼ったのはベトナム戦争を共に戦った旧友サルとミューラーだった。バーを営むサルと牧師となったミューラーは、30年間音信不通だったドクの突然の訪問に戸惑いつつも、彼の頼みを聞き入れ、息子の軍葬に立ち会うべく3人で旅に出るのだったが…。
<感想>退役軍人3人の友情が胸に迫るロードム-ビー。最愛の妻に先立たれた上に、イラク戦争に出征した一人息子までも亡くしたドク。そんな失意の中年男がかつてベトナム戦争の仲間だった旧友二人のもとを訪ね、彼らと共に息子の遺体を引き取る旅に出る。
「6才のボクが、大人になるまで。」のリチャード・リンクレイター監督が、スティーヴ・カレル、ブライアン・クランストン、ローレンス・フィッシュバーンというベテラン俳優3人を迎えたヒューマンドラマ。30年ぶりに再会した男たちが車や鉄道で移動しながら旧友を温めるロードムービーの形式をとり、人生の哀しみや歓びを味わい深く炙り出してゆく。
登場人物が抱える癒しがたい孤独感や、悲しみ、それは30年前にベトナム戦争へ出征し、命からがら帰って来た戦友なのだ。ドクが一人息子をイラク戦争で亡くしたのだが、それは戦地でコーラを買いに行く時に、それがドクの息子が本当は買いにいくのではなかった。それが僕が行くと言ってみんなの分も含めてコーラを買いに行った時に、敵兵のスナイパーによる銃撃で頭を撃たれ死んでしまったのだ。その息子の遺体と対面する哀しみに耐えられずに、ベトナムの戦友であるサルとリチャードに同行を依頼したことから物語が始まる。主演トリオが魅せる絶妙な掛け合いが見事でした。
最大の見どころは、主演俳優3人の親密でコミカルな掛け合いだ。彼らの交流からこぼれ落ちるユーモア、そして友情の尊さがじんわりと胸に沁みる一作です。劇中ではヴァージニア州のデラウェアの基地からNYなどを経由した、ニューハンプシャー州ポーツマスの自宅まで、息子の遺体を運ぶまでの旅が描かれている。
基本的には3人の男と、「エブリバディ・ウォンツ・サム!!」(16)に出ていた黒人の男の子、ワシントン(J・クイントン・ジョンソン)の旅なわけですけれども、実はそこに死者もはりついている。30年前に死んだ戦友も、その30年後に死んだ息子もそこにいる。30年前と今とが重なり合っているのだ。
監督と主演トリオは撮影前に、LAで3週間のリハーサルを実施。喜劇俳優のスティーヴ・カレルが寡黙な中年男になり切るなど、個性豊かな主人公3人の関係性を、生き生きと体現しているのが良かった。
「どの世代にもその世代の戦争がある」との名セリフもあり、それはベトナムとイラクという二つの大義なき戦争によって刻まれた、アメリカの喪失感をめぐる物語でもある。そして、二つの戦争の間に湾岸戦争が起こったことも忘れさせない。それだけに、息子の遺体に軍服を着せ、棺に国旗で覆う息子の葬儀に愛国心を謳う意図があると思う。リヴォン・ヘルムの哀切な歌声と、B・ディランの歌詞が胸に刺さります。
2018年劇場鑑賞作品・・・116アクション・アドベンチャーランキング
「映画に夢中」
トラックバック専用ブログとして、エキサイトブログ版へ
トラックバックURL : https://koronnmama.exblog.jp/tb/29888142