ジョージ・クルーニーの監督作で、1950年代に実際に起きた人種差別暴動をモチーフに、アメリカンドリームを絵に描いたような町サバービコンで巻き起こる奇妙な事件をサスペンスタッチに描いたドラマ。脚本をクルーニーとジョエル&イーサン・コーエン兄弟が共同で手がけ、クルーニーと親交の深いマット・デイモンが主演を務めた。
あらすじ:笑顔があふれる町サバービコンに暮らすロッジ家の生活は、ある時、強盗に入られたことで一変。一家の幼い息子ニッキーの運命は思いがけない方向へと転じていく。一方、時を同じくして町に引っ越してきた黒人一家の存在が、町の住人たちのどす黒い本性をあぶりだしていく。
<感想>何とも一風変わった味わいの犯罪映画でした。ジョエル&イーサンのコーエン兄弟が脚本を書いて、ジョージ・クルーニーが監督という豪華版、本人は出ていませんね。本当は保険調査員のクーパー役にジョージ・クルーニーだったのだが、年齢的に合わないと思いオスカー・アイザックにしたというのだ。その調査員も絡む、ある一家を襲った悲劇の物語と、白人だけの街に越して来た黒人一家を巡る物語が並行して描かれている。
クルーニー監督作品を振り返ってみるとロマコメが1本ある以外は、実は問題意識を持った硬派な作品ばかりなんですね。不正や不平等を憎む姿勢が根底にある。そこが彼の持ち味なのかもしれません。
一見、アメリカの理想を具現化したかのようなキラキラした街も、実際は偽善の塊だったってこと。人種差別問題だけではなく、どこにでもあるような幸せな一家にも向けられている。子供どうしでは、隣の家の子供と仲良くキャッチボールをして遊んでいるのに、親同士では、絶対にダメだと言われるのだ。
押し込み強盗によって母親を殺された、幼い息子の目を通して描かれる家族の悲劇は、ヒッチコック・スタイルでもありとてもスリリングでした。本当は、父親が殺し屋を頼んで、高額の保険金をかけた母親を殺そうと企んだこと。このあたりが、いかにもコーエン兄弟ふうで、残酷な場面もあって怖いのだけど、思わず笑ってしまうようなユーモアも忘れてはいない。
警察に捕まってしまう泥棒の2人。面透視をするガードナーだが、そこにはいないと証言するのに、息子が一番端っこにいるじゃないかと言う。父親はどうして息子を警察に連れてきたと怒る。
それに、事件の陰には様々な思惑を持った人々がいて、そんな悪党どもの欲望が絡み合って自滅への道を歩んでいく、というコーエン兄弟お得意のストーリーでもあります。
何といっても、家長のガードナーを演じるマット・デイモンの嫌な父親。とても「ジェイソン・ボーン」シリーズでクールなアクションヒーローを演じた人と同一人物とは思えません。体型もでっぷりと太っているし、表情も冴えないおっさん。人間のスケールの小ささが滲み出て来るような情けなさが可笑しい。
ラストでは息子の前で、マーガレットが息子を殺そうと思って作った、毒入りのジャムサンドを美味しそうにパクつく姿に、やったーと思いましたよ。
ジュリアン・ムーアは、母親のローズとマーガレットの双子の姉妹を演じ分けていて、さすがにオスカー女優だけあると、これもお見事でした。
中盤から登場してくる保険調査員にオスカー・アイザックは、若いころのジョージ・クルーニーが演じていたら、場をさらったこと確実の美味しい役でした。マーガレットが毒を入れたコーヒーを飲ませて殺してしまう。
それに、子役のノア・ジュープも凄かったです。前半では彼の視線が観客の目にもなる重要な役どころ。100人を超えるオーディションで選ばれたそうだけど、イギリス人なのにアメリカ訛りを完璧にこなしていた。実は彼がこの映画を支えているといってもいいんじゃないかと思っています。
映画の後半では、黒人一家の周りを高い塀で囲んでしまう人々の姿が描かれている。もちろんこれは「国境に壁を作ってしまおう」と主張する某国大統領に対する皮肉なわけでもあり、このあたりもクルーニー監督の姿勢は一貫としているようですね。
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