「男たちの挽歌」「レッドクリフ」のジョン・ウー監督が西村寿行原作、高倉健主演の日本映画「君よ憤怒の河を渉れ」をリメイクしたサスペンス・アクション大作。無実の罪を着せられ逃亡を余儀なくされた弁護士と、彼を追う孤高の刑事が辿る壮絶な運命を迫力のアクション満載に描き出す。主演は「戦場のレクイエム」のチャン・ハンユーと「そして父になる」の福山雅治。共演にチー・ウェイ、ハ・ジウォン、國村隼。
あらすじ:酒井社長率いる天神製薬の顧問弁護士ドゥ・チウがある朝目覚めると、ベッドに社長秘書・希子の死体が横たわっていた。何者かの罠と気づき、その場から逃亡を図るドゥ・チウ。大阪府警の敏腕刑事・矢村は、新人の部下・里香を従え、独自の捜査でドゥ・チウの行方を追っていく。しかし捜査を進めるうちに、次第にドゥ・チウ犯人説への違和感を募らせていく矢村だったが…。
<感想>高倉健主演で1976年に映画化された西村寿行の小説「君よ憤怒の河を渉れ」をリメイクしたものであり、中国の鬼才ジョン・ウー監督が再映画化したもの。今作のテーマは“友情”に焦点を当てており、どちらかというと、「狼/男たちの挽歌・最終章」に近い物語だそうです。
そして、チャン・ハンユーが、異邦人でありながらも有能さを買われて、天神製薬の顧問弁護士のドゥに。殺人のぬれぎぬを着せられ、慣れない異国で必死に逃亡する。
大阪府警のやり手の刑部矢村には、福山雅治が扮しており、ぶっきらぼうで人付き合いは悪いが、正義感は強いときてる。妻子と死別をした過去を隠して仕事に尽力を尽くす。
遠波真由美にチー・ウェイが扮して、女手一つで牧場を経営。天神製薬に勤務していた婚約者を殺された過去を持ち、弁護士ドゥに協力をして過去の事件の真相に迫る。
それに、天神製薬の社長に雇われている凄腕の女殺し屋であるレイン。ハ・ジウォンが扮しており、かつて弁護士のドゥと偶然会ったことがあり、彼の優しさに心惹かれている。
目立ったのが、大阪に拠点を置く天神製薬の社長に国村隼が、今回は多めに出番があり、その息子に池内博之が悪の貫禄充分。
そして、ジョン・ウー監督の愛娘アンジェルス・ウーが、冒頭での居酒屋で、女殺し屋の1人を演じているのですが、ポッチャリの方ですから。
もう一人の殺し屋がハ・ジウォンで、それでも2人揃って見た目からは想像できないほど機敏で、驚きました。
冒頭での居酒屋アクションでまず、度肝を抜かれ、バックミュージックに「君よ憤怒の河を渉れ」のテーマ曲が流れ、日本映画に対するリスペクトが入っていると言う監督。
それから、繁華街でのカーチェイスや爆破シーンはないけれども、大阪の堂島川での水上バイク・チェイスシーン、ここでの見せ場はチャン・ハンユーが逃げるのに、福山雅治がバイクに飛び乗るシーンとか、刑事の福山が全弾撃ち尽くした後に、敵の銃を奪い取り、手錠でドゥと福山が繋がれたままに、福山が右手に、ドゥが左手で2人・二挺拳銃をやったりするシーンとか。本来の主役である二人が、いつの間にか友情をはぐくんだのか、さっぱり印象に残ってない始末。
いかにもフィルム・ノワール的な無実の罪で逃げ続ける弁護士ドゥは、いつも薄汚いパーカー姿でお気の毒といっていいのか、一方の刑事福山は、スーツ姿でバッチリ決めポーズで吹っ切れたように銃を撃ちまくるし。
「男たちの挽歌」や「レッドクリフ」などで世界を熱狂させるジョン・ウー監督のトレードマークと言うべき描写はここでも健在であります。と言えば、必ず出て来る二挺拳銃のガンファイトに、平和の象徴である白い鳩が舞うシーンはもちろん、主演俳優の横っ飛びとか、そしてスローモーションなど、やっぱり見慣れているシーンが満載であり、銃撃戦の中で日本刀で振り回すシーンの見せ場もありますから。
71歳の倉田保昭の存在感、60~70年代の香港映画に出ていた彼も、監督のご贔屓で、短い出番ながらアクションも抜群でした。
何よりも、すべてのアクションシーンが、登場人物の心情に裏打ちされている点は見逃せません。結婚式場やヒロインの屋敷に暗殺者があらわれる場面場面で、無関係の人たちが巻き込まれていく血みどろな世界観の容赦なさも健在。
良かったのが、鳩小屋に車が突っ込むシーンで、倒れ込む福山雅治の目の前を、鳩がかすめるように横切る。反射的に福山がそちらへと顔を向けて間一髪で、石に頭を強打せずにすむ印象的なシーンに驚きました。セルフオマージュなのか、こうした監督の思い入れや遊び心をうかがわせる仕掛けに気づいてニヤリとさせられる。
若気のいたりにも思える話の盛り方、どこかノスタルジックな活劇調のテイストもあり、ジョン・ウーの一番変わらない芯の部分なのに違いない。物語の大枠をふまえつつ、新しい要素をがふんだんに盛り込まれて、問答無用のジョン・ウー映画に仕上がっていた。
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