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スリー・ビルボード★★★★

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「ファーゴ」のフランシス・マクドーマンドが娘を殺された母親の怒りと悲しみを体現して絶賛された衝撃のサスペンス・ドラマ。アメリカの田舎町を舞台に、主人公がいつまでも犯人を捕まえられない警察に怒りの看板広告を掲げたことをきっかけに、町の住人それぞれが抱える怒りや葛藤が剥き出しになっていくさまを、ダークなユーモアを織り交ぜつつ、予測不能のストーリー展開でスリリングに描き出す。共演はウディ・ハレルソン、サム・ロックウェル。監督は「ヒットマンズ・レクイエム」「セブン・サイコパス」のマーティン・マクドナー。

あらすじ:アメリカ、ミズーリ州の田舎町エビング。ある日、道路脇に立つ3枚の立て看板に、地元警察への辛辣な抗議メッセージが出現する。それは、娘を殺されたミルドレッド・ヘイズ(フランシス・マクドーマンド)が、7ヵ月たっても一向に進展しない捜査に業を煮やして掲げたものだった。名指しされた署長のウィロビー(ウディ・ハレルソン)は困惑しながらも冷静に理解を得ようとする一方、部下のディクソン(サム・ロックウェル)巡査はミルドレッドへの怒りを露わにする。さらに署長を敬愛する町の人々も広告に憤慨し、掲載を取り止めるようミルドレッドに忠告するのだったが…。

<感想>アメリカの平穏な田舎町に、悲劇の母親が掲げた3枚の看板広告。そこに書かれていたのは、娘を何者かに殺された母親から犯人を見つけられない警察署長への、痛烈なメッセージだった・・・。一見すると、悲劇に見舞われた母親が怠慢な警察に立ち向かう物語に思えるのだが、現実の世の中と動揺にそう単純なものではない。舞台である田舎町の住人たちが、ままならない現実を目の当たりにして葛藤したり、対立したりする姿を通じて、喜怒哀楽すべての感情が呼び覚まされる群像劇に仕上がっている。

時にやるせなく、時には激しく、時におかしくて展開の予想がまったくできないのだ。人生の苦みが詰まった傑作だけに、アカデミー賞の中心となることは間違いなさそうだ。ミルドレッドの掲げた批判広告を見て、警察署長のウィロビーは彼女の家を訪問するのだが、努力していると自負する彼は、捜査状況を丁寧に説明し看板を下ろすように説得するのだが、納得しない彼女に追い返されてしまうのだった。

これだけ聞くと、この肝っ玉母さんが、最終的には犯人を見つけて、ささやかな達成感を得るドラマを想像するだろうが、そこをゴールとしていないのが本作の醍醐味。

ミルドレッドの衣装はずっと青いつなぎだ。そのブルーカラーの作業衣姿で、彼女は常に怒り、暴力さえ厭わない。物言いは裏も表もなくストレートで、主張キャラクターそのものになっている。こんな女がこれまで映画で描かれることがあっただろうか。いつもなら、父親が娘の仇を取るのが普通だから。

強い女なら露出度の高い衣服を着て戦闘するか、若しくは知的な中年女になって嫌われでもしなければエンターテインメント的に許されないと思っていた。

そしてまもなくして、警察署長のウィロビーが膵臓癌の末期と分かり、悲観にくれて自宅で拳銃自殺をしてしまう。署長のウディ・ハレルソンの二重三重構造キャラの壮絶さといったら、あまりにも見事で息を飲んでしまった。

その後、広告看板を誰かに燃やされてしまうという事件が勃発し、息子と必死になって消化するも丸焦げになってしまった。きっと警察署長を守る人たちだろう。それに対して、彼女は火炎瓶を警察署に投げて火事騒ぎを起こすのだ。しかし、警察署の中には、部下のディクソンが手紙を取りに来ていて大やけどを負ってしまう。

そして広告の看板は、張るポスターが残っており、またその看板に新しく張り替えてくれた。しかし、誰がいったい看板に火を付けたのだろう。それがまさかの、元亭主だったとは、呆れてモノが言えない。

娘が殺される前の日に、父親に電話があり厳しい母親から父親の所へ移ってきたいというのだ。19歳の若い女と一緒に暮らしている父親は、断ってしまったのだ。娘の暴行シーンとか、その後に燃やされて真っ黒焦げの遺体は見せないが、娘は反抗期のようであり、厳しい母親に叱り飛ばされていた。

個人的に好きな作品で「月に囚われた男」(09)のサム・ロックウェルが今回、最高のゲス野郎を演じ切ってくれていて、最後には、本当に嬉しく愛おしさでいっぱいになってしまった。火事の中で署長からの手紙を読むシーンや、オレンジジュースの場面は思い出すたびに泣けてしまう。人間の本質は簡単に理解できるものではないし、変わっていくことも出来るという希望をしっかりと呈示しているのも良かった。

それでも、物語は悲しみに直面してはいるが、ユーモアを持って絶望と向き合い、葛藤しているというようだ。殺伐としたミズリー州の空気と四面楚歌のヒロイン、愚かな人間同士が傷つけ合い赦し合う物語。

ラストで、真犯人と思うよそ者が町に来て、酒場で9年まえの話をしているのを聞いたディクソンが、その男のDNAを取りたくて喧嘩をしかけて殴られてしまう。そのDNAを警察へ持っていき、鑑識で調べてもらうと、その男はどうやら傭兵のような仕事をしておりその時期には外国へ行っていたと言うのだ。

だが、どうしても腑に落ちないディクソンはミルドレッドを誘って、真犯人と思しき人物を追いかけて行くところで終わるのも良かったですね。

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