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南瓜とマヨネーズ★★★

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「パビリオン山椒魚」「乱暴と待機」の冨永昌敬監督が、魚喃キリコの名作マンガをヒロインに臼田あさ美を迎えて実写映画化した恋愛ドラマ。夢を追う恋人を健気に支え続けながらも、先の見えない関係に自分の気持ちさえも見失っていくヒロインの揺れる心模様を痛々しくも繊細に描き出す。臼田が主人公ツチダ役を演じるほか、オダギリジョー、太賀、清水くるみ、光石研らが出演。やくしまるえつこが音楽監修、劇中歌制作で参加。

あらすじ:売れないミュージシャンのせいいちと同棲中のツチダ。芽が出ないままずるずると夢を追い続けるせいいちとの生活を守るため、ライブハウスの仕事とは別に、内緒でキャバクラでも働き始めていた。やがてキャバクラの客からもっと稼げる仕事があると持ちかけられ愛人契約を結ぶ。ところが、そのことがせいいちにバレてしまう。するとせいいちは、ツチダが体で稼いだお金を拒絶し、自らバイトをするようになる。そんな矢先、ツチダは今でも忘れられないかつての恋人ハギオと偶然再会するのだったが…。


<感想>プロのミュージシャンを目指すメンバーと方針が合わず、バンドを脱退して、アパートでゴロゴロとしているせいいちと、同棲相手のツチダは、せいいちの成功を夢見てライブハウスで働く傍ら、秘密裏にキャバクラでも働き、家計を支えるが、それが露見して二人の間に亀裂が入る。効果音がドラム、ギター、そしてシャワーの流水といった“音”が印象的なシーンから始まるのも良かった。

この辺では、せいいちは、ツチダのひものような存在で、ツチダも部屋でなにもしないで、一日中ゴロゴロしている彼に不満があるのに言えない。ライブハウスの稼ぎでは足らずにキャバクラで働くも、客の誘いにのり愛人契約をして金を稼ぐツチダ。この客に光石研が演じている。ちょっと危ない少女趣味の男だ。

だから、この物語は、ツチダとせいいちの別れの予感に満ちたもので、同じアパートにいて、お互いに想いがあっても、向き合おうとしないまま進んでいく。

もうこの辺では、彼女は金が欲しくて自分がどうなってもいいとヤケになってしまっている。そのことで、彼に責められ、その彼との間もギクシャクし始めて、せいいちは部屋を出て行く。これが別れになるのだが、ツチダは追いかけないのだ。目線が交差する場面もなく、一方が一方を眺めたり、見つめたり、睨んだりしている。

そんな時に、昔の恋人のハギオと偶然再会して現実から逃避するように二人はくっついてしまう。狭いライブハウスのレジの裏で、セックスをする二人。せいいちとの関係がこじれて別れたせいもあるが、一番にツチダの弱い女の業でもあると思う。あっちがダメならこっちでもいい関係を作ろうとする、女の浅はかさが出ているようだ。

 

ハギオ役のオダギリジョーの“魔性の男”ぶりと言う、演技の巧さに酔いしれながら、ツチダがハギオとも一緒に暮らそうとする。ツチダの心の奥底に眠っていた“忘れられない恋”の存在。一流のヒモ男だから、ハギオはそれは嫌だと断るところがいい。ツチダの心の中がミエミエだったからだろう。

せいいちが働きだして、実家暮らしをし、それに曲まで作ってツチダに披露してくれる。これが思っていたよりも良かった。せいいちの太賀本人が歌っているのだから驚く。もしかして、自分が悪かったと、まだツチダを愛していると言っているようなそぶりをしていると思ったのだが。せいいちの心の中がはっきりと表せない人柄なのか、ツチダがあまりにもせっかちですぐに男と関係を持ってしまうフシダラナ性格なのも災いしているように思えた。

ラストはライブハウスでみんなが、また集まって歌うようになる。若者は夢を持ち、生活のために金を作り、関係がギクシャクとなり、また元に戻るという。これも若さだからゆえにだろう。

2017年劇場鑑賞作品・・・264アクション・アドベンチャーランキング

 


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