『orange－オレンジ－』などの山崎賢人と『L－エル－』などの広瀬アリスを主演に迎え、小説家の米澤穂信の処女作を映画化した学園ドラマ。何事にも深入りしない省エネ男子と、何かといろいろなことに首を突っ込みたがる女子のコンビが、学園に隠された謎を解明していく姿を描写する。監督と脚本を担当するのは、『リアル鬼ごっこ』シリーズなどの安里麻里。テレビアニメ化もされた人気作を、安里監督がどのように撮り上げるのかに注目。
あらすじ：神山高校に入学した折木奉太郎（山崎賢人）は、「やらなくてもいいことなら、やらない」を信条とする。姉の指示で渋々廃部の危機にある古典部に入部する。もともと必要最低限のことしかやらない“省エネ主義”の彼は、ここで誰よりも好奇心旺盛な千反田える（広瀬アリス）と知り合う。さらに折木と中学校時代から付き合いがある福部里志と伊原摩耶花も入部してきて……。
好奇心のかたまりのような彼女の行動に巻き込まれ、学園内で起こる不思議な出来事を持ち前の推理力で次々と解き明かしていく。そんなある日、えるは奉太郎に「10年前に失踪した伯父が残した言葉を思い出させてほしい」という奇妙な依頼をする。
＜感想＞好奇心ＭＡＸのお嬢様 × ＩＱ未知数の省エネ男子、謎解きは手短に。
一冊の文集「氷菓」が導く、学園史から消された事件の結末とは？＿＿。
原作は読んでませんが推理ドラマというので興味津々でした。主役の折木奉太郎を演じている山崎賢人くんは、ここのところ高校生役で上手いので文句のつけようがありませんが、他の女子高生の美少女・千反田えるに広瀬アリスが扮していて、ちょっと高校生には見えないので不満です。
「やらなくてもいいことなら、やらない」を信条とする折木奉太郎。古典部室の鍵についての他愛のない推理から始まり、その鍵について謎解きをするのが、不愛想な顔の山崎賢人くんです。先輩たちが作った文集を探し出し、そこから１９６７年の学園祭の謎に行き当たるまでは、その先がどう話が進んでいくのかと、期待を込めて見ていました。
ところが、行き着いた先が、一人の学生に事件のことを全部なすりつけて退学処分にするとは、それも本当の指導者を見つけ出さないで。その彼のその後の人生が、生きながら死んでいるようなものって、なんという酷い仕打ちなんだろう。高校生の事件とは思えない。
折木奉太郎が、文集のタイトルに「氷菓」と付けたいきさつを推理すると、“アイ・スクリーム”ということで、関谷の無念さが言葉はなくてもあの叫び声が伝わってきて胸が痛みました。「氷菓」は関谷の心の叫びを表しているというのだ。
つまり、学校の騒動で授業をボイコットし、花火をしたり焚火をして騒ぎ、その火の不始末で飛び火して、武道室に燃え移り、そこに女子高生が残っており、その女子高生を助けた英雄の関谷が、暴動の主犯となって学校を退学処分になるという。理不尽な学校側の処罰と、その暴動を起こした主犯の生徒が名乗り出ないで、関谷は女子高生を助けただけなのに、犯人にさせられてしまうとは。
その彼が、千反田えるの叔父さんであり、失踪してから１０年経った今、葬式を挙げるということに。まだインドで生きているのだが、その彼は、若き青春時代の仕打ちに耐えられなくて、外国で生きているということになっていた。
えるの叔父・関谷純役の本郷奏多が、一人で校庭で絶叫するシーンも含めて、さらにはアクションシーンにも挑むさまも確認でき、映画の見せ場となるシーンがたっぷりと収められていた。
その他には、小島藤子、岡山天音扮する古典部員を交え、4人が事件の手がかりを探すシーンが明かされる。ミステリアスな図書室の女性に斎藤由貴さんが扮していて、謎解きのヒントを教えてくれるのかと思いきや、全然知らぬ存ぜぬふりして、後で明かされる３３年前の悲劇のヒロインであり、それを助けた学生が関谷さんだというのだ。
１９６０年代の学生運動の回想劇まで取り入れるなどして、撮影の趣向に目がいくのだが、参照する紙ベース資料が少ないうえに、ネットにも頼らず付け焼刃の知識と、直感で推理するのが気になって仕方なかった。
それでも、図表にまとめながら読み解く作りはジュブナイル的な高揚感があり、ワクワク感もある。しかし、バラ色の高校生生活といいながら、自分は灰色の高校生生活と言って暗い性格の主人公が、古典部に入りみんな仲良く謎解きをしていくところは、中々良かったです。
２０１７年劇場鑑賞作品・・・２５９
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