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ソウル・ステーション/パンデミック★★

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実写長編デビュー作「新感染 ファイナル・エクスプレス」が世界的に大きな話題となったヨン・サンホ監督が、その前日譚として描く長編アニメーション。ソウル駅周辺から始まった恐るべき感染パニック拡大の恐怖を、ヒモ男に裏切られた元風俗嬢の決死のサバイバルを軸に、社会派の視点を織り交ぜつつ衝撃的に描き出す。

あらすじ:ある夏の夜。ひとりの年老いたホームレスがきっかけとなり、ソウル駅周辺で謎の感染爆発が発生する。たちまち凶暴化した感染者による無差別襲撃事件が頻発、街中にパニックが拡がっていく。その頃、場末の安宿にいた元風俗嬢ヘスンは、勝手に自分の写真を出会い系サイトにアップしたヒモの恋人キウンに怒り、街へと飛び出していく。一方、キウンはサイトを見て連絡してきた中年男性と落ち合うが、彼はヘスンを捜していた父親だった。キウンを捕まえ、2人でヘスンの帰りを待とうとするが、感染者の襲撃を受け、事情も分からぬまま、キウンと一緒に逃げまどうハメに。そんな中、宛てもなく街をさまよっていたヘスンもまた、恐ろしい感染者と遭遇してしまうのだったが…。

<感想>2016年の韓国興収1位の実写映画「新感染 ファイナル・エクスプレス」の序章にあたるアニメーション。またもや人を噛むゾンビの群が大増殖。実写化の方が、アニメより人間の表情に多様性がありゾンビも生き生きとして良かった。だが、アニメの方は主人公ヘスンの哀切の表情が、美人でもなく何ともやりきれないものがある。他の人間ものっぺらとした表情で、ゾンビに至っては真っ黒いだけで無表情。
ソウル駅は今度も呪われた場所で、ソウル駅周辺という開放された空間が舞台でもあり、同じことをやっても仕方がないと、実写版では列車の中に絞ったのも良かった。

両方の作品ともに、父親と娘の関係がテーマの一つとなっているが、“泣き”に寄せた実写版の「新感染 ファイナル・エクスプレス」とは、真逆の殺戮差を極めた上に、ヒネリを加えたものとなっていた。しかし、父親でもない男が嘘をついて、彼氏とヘスンを探すところ、そして、出会うシーンでは、ヘスンが父親ではない、この男は風俗嬢斡旋の元締めであり、ヘスンから借金を取り立てるために追いかけてきたことが分る。

ゾンビが蔓延して、いつ襲われて感染するか分からない事態に、金、金と責め立てる男も何だかなぁ~、金がないなら体で払へと襲い掛かるのも、人間としてのモラルがないのか嫌な感じがした。

それに、ホームレスや社会的弱者がゾンビ同様に排除の対象になってしまうのも。彼らを差別する市民とか、警察、軍隊がそれぞれの立場から、駅を取り巻き、パニック状態をつくっているのだ。

国家権力が市民に銃を向け、もはや帰るべき家も祖国も失われている地獄。問題意識はすごく理解できるし、語りもさすがに上手いのだが、人物の反応や動き出しが微妙に遅く感じられストレスが溜まる上に、イマージネーションの広がりも、動きの魅力も乏しいのが難点。
カット繋ぎもダイナミックさが不足気味なので、視覚的に単調に感じてしまう。それに、何よりもまず空間演出の冴えがまるで見当たらなかったのも残念。

ラストも、主人公のヘスンが助かるのかと期待したら、彼女も感染しており最後はゾンビになってしまうという終わり方も、魅力がなかった。
ですが、何かと体制や社会へのレイジ・アゲインストが込められている点は良かったです。つまり、監督のヨン・サンホには怨みの思想があり、「国家は何もしてくれなかった」というセリフや、生き延びたヘスンの彼氏と父親が、富豪用のマンションを荒らす場面では、怒りと不満を爆発させていた。だが、実写映画でこそ開花する才能だったということが分って、このアニメはDVDでも良かったのではないかと思った。

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