『リップヴァンウィンクルの花嫁』などの岩井俊二によるドラマを基にした、『物語』シリーズなどの新房昭之が総監督を務めたアニメ。現代の要素を入れながら長編として再構築し、夏休みを過ごす中学生の男女を主人公に、何度も繰り返されるある1日を描く。脚本を、『モテキ』シリーズや『バクマン。』などの大根仁が担当。『ちはやふる』シリーズなどの広瀬すず、『共喰い』などの菅田将暉、人気声優の宮野真守らがボイスキャストとして出演する。
あらすじ:夏休みの登校日。中学生の典道と祐介は、なずなの前で競泳対決をすることに。典道は、競争のさなかに水中で不思議な玉を見つける。一方祐介は競争に勝ち、なずなに花火大会に誘われる。放課後、皆が打ち上げ花火のことで盛り上がっている中、なずなが母の再婚に悩んでいることを知る典道。どうすることもできない自分に典道はもどかしさを感じ、ふいに玉を投げると、なぜか競泳対決の最中に戻っていた。
<感想>本作を「もしも」をめぐる物語として再構成したことによる、93年にTVドラマで放映された「ifもしも」をシリアスに受け止め、舞台を「茂下(もしも)」町と名付けることで、例えば現実の飯岡灯台には、「茂下灯台」という虚構の名前が付けられている。だから、本作では「もしも」のただなかで動き回る「典道」と「なずな」の手探りの行動に立ち会うこととなる。
アニメに典型的なループ物語の趣向にはとどまらず、原作との隔たりを時間においても、表現媒体においても、主要人物の年齢が小学生から中学生に引き上げられているものの、前半はほぼ原作と同様に進行する。
ですが、「もしも玉」ギミックが全面的に展開され、列車が軸となる後半のシナリオは大きく異なっているのだ。つまりは、20年以上を隔てた「実写からアニメ」へという異例のアダプテーションにあたり、脚本を大根仁、そして制作スタジオであるシャフトの新房昭之総監督や武内宜之監督らが、本作を「もしも」をめぐる物語として明示しつつ再構築している。
なずなの母親の設定に於いても、再婚という実生活が幾ばくか反映されているように見えたり、なずなの装いには、「旧スクール水着」や「白いワンピース」「花柄の紺色の浴衣」といった典型的にオタクカルチャーに属するノスタルジーが散りばめられている。
打ち上げ花火を横から見たら、丸いか、平べったいか。二派に別れ激論する少年たちは、灯台の上から確かめようと勝負に出ることになる。灯台を目指して長い道程にいどんだ少年たちは、半分ヤケ気味で想い人の名を叫び始めると、ヒロインへの告白勝負を抜け駆けされた友人は、「俺は、及川なずなが好きだよ」と告白し、マセガキたちは、女教師の名前を口にして、お調子者は「観月ありさ」理系の男の子も仲間外れににはならないとばかりに、「セーラームーン」と叫ぶことで、「打ち上げ花火」は子供たちの今と生とを爆発させるのである。
特に良かったのが、列車内でなずなの声優を務める広瀬すずが響かせる、淡々としつつも透明感のある歌声で、松田聖子の「瑠璃色の地球」を歌い上げる場面が素敵でした。
それにアニメでしか観ることができない「夏の青い空」、「夕暮れの海」そしてクライマックスの非現実的なまでに美しい「打ち上げ花火」、そして断片的に現れる「もしも」駅のホームで、典道となずなの鮮烈なイメージを観ることになるだろう。
ヒロイン・なずなのあどけなさと、小悪魔的な魅力が同居していて、アニメならではの魅力的なキャラクターになっていた。ナズナの声を演じた広瀬すずの、見事なハマリ具合や、典道役の菅田将暉のボクトツとしたぶっきらぼうなセリフも良かった。
なずなが母親に連れ戻されるシーンは、実写オリジナルそのままであり、幸福な結末を求めて、「もしも」を繰り返す幻想的な電車の旅は、岩井俊二が当初のモチーフとした「銀河鉄道の夜」をイメージしたはず。
中学生の多感な時期は、女の子の方が精神的に大人ですし、男の子はまだ幼稚であり、すぐドキドキして声をあげるのに、かっこつけたいという感じですかね。映像を観てロマンチックで、ファンタジックな演出もふんだんに入っていて、思春期特有の好奇心や衝動が描かれており、大人のラブストーリーの要素を想像以上に強く感じる展開となっていました。
2017年劇場鑑賞作品・・・191アクション・アドベンチャーランキング
あらすじ:夏休みの登校日。中学生の典道と祐介は、なずなの前で競泳対決をすることに。典道は、競争のさなかに水中で不思議な玉を見つける。一方祐介は競争に勝ち、なずなに花火大会に誘われる。放課後、皆が打ち上げ花火のことで盛り上がっている中、なずなが母の再婚に悩んでいることを知る典道。どうすることもできない自分に典道はもどかしさを感じ、ふいに玉を投げると、なぜか競泳対決の最中に戻っていた。
<感想>本作を「もしも」をめぐる物語として再構成したことによる、93年にTVドラマで放映された「ifもしも」をシリアスに受け止め、舞台を「茂下(もしも)」町と名付けることで、例えば現実の飯岡灯台には、「茂下灯台」という虚構の名前が付けられている。だから、本作では「もしも」のただなかで動き回る「典道」と「なずな」の手探りの行動に立ち会うこととなる。
アニメに典型的なループ物語の趣向にはとどまらず、原作との隔たりを時間においても、表現媒体においても、主要人物の年齢が小学生から中学生に引き上げられているものの、前半はほぼ原作と同様に進行する。
ですが、「もしも玉」ギミックが全面的に展開され、列車が軸となる後半のシナリオは大きく異なっているのだ。つまりは、20年以上を隔てた「実写からアニメ」へという異例のアダプテーションにあたり、脚本を大根仁、そして制作スタジオであるシャフトの新房昭之総監督や武内宜之監督らが、本作を「もしも」をめぐる物語として明示しつつ再構築している。
なずなの母親の設定に於いても、再婚という実生活が幾ばくか反映されているように見えたり、なずなの装いには、「旧スクール水着」や「白いワンピース」「花柄の紺色の浴衣」といった典型的にオタクカルチャーに属するノスタルジーが散りばめられている。
打ち上げ花火を横から見たら、丸いか、平べったいか。二派に別れ激論する少年たちは、灯台の上から確かめようと勝負に出ることになる。灯台を目指して長い道程にいどんだ少年たちは、半分ヤケ気味で想い人の名を叫び始めると、ヒロインへの告白勝負を抜け駆けされた友人は、「俺は、及川なずなが好きだよ」と告白し、マセガキたちは、女教師の名前を口にして、お調子者は「観月ありさ」理系の男の子も仲間外れににはならないとばかりに、「セーラームーン」と叫ぶことで、「打ち上げ花火」は子供たちの今と生とを爆発させるのである。
特に良かったのが、列車内でなずなの声優を務める広瀬すずが響かせる、淡々としつつも透明感のある歌声で、松田聖子の「瑠璃色の地球」を歌い上げる場面が素敵でした。
それにアニメでしか観ることができない「夏の青い空」、「夕暮れの海」そしてクライマックスの非現実的なまでに美しい「打ち上げ花火」、そして断片的に現れる「もしも」駅のホームで、典道となずなの鮮烈なイメージを観ることになるだろう。
ヒロイン・なずなのあどけなさと、小悪魔的な魅力が同居していて、アニメならではの魅力的なキャラクターになっていた。ナズナの声を演じた広瀬すずの、見事なハマリ具合や、典道役の菅田将暉のボクトツとしたぶっきらぼうなセリフも良かった。
なずなが母親に連れ戻されるシーンは、実写オリジナルそのままであり、幸福な結末を求めて、「もしも」を繰り返す幻想的な電車の旅は、岩井俊二が当初のモチーフとした「銀河鉄道の夜」をイメージしたはず。
中学生の多感な時期は、女の子の方が精神的に大人ですし、男の子はまだ幼稚であり、すぐドキドキして声をあげるのに、かっこつけたいという感じですかね。映像を観てロマンチックで、ファンタジックな演出もふんだんに入っていて、思春期特有の好奇心や衝動が描かれており、大人のラブストーリーの要素を想像以上に強く感じる展開となっていました。
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