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パーソナル・ショッパー★★★

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「夏時間の庭」「カルロス」のオリヴィエ・アサイヤス監督が前作「アクトレス ~女たちの舞台~」に続いてクリステン・スチュワートを起用して贈る異色の心理ミステリー。忙しいセレブに代わり、洋服やアクセサリーを買い付ける“パーソナル・ショッパー”の女性を主人公に、兄を亡くしたばかりの深い喪失感の中で、不可思議な出来事に直面していくヒロインの揺れる心模様を大胆かつミステリアスな筆致で描き出す。カンヌ国際映画祭監督賞受賞作。

あらすじ:パリで働くモウリーンは、世界中を飛びまわる女優キーラをクライアントに持つパーソナル・ショッパー。キーラのわがままに振り回されながらも仕事を完璧にこなす彼女だったが、3ヵ月前に双子の兄が急死したばかりで、いまだその悲しみから立ち直れずにいた。兄と同様霊媒師としての能力を持つモウリーンは生前の約束通り、兄からのサインがあると信じてそれを待ち続けていた。そんな中、モウリーンの携帯に謎めいたメッセージが届き始める。まるで彼女を監視しているような内容に不安を募らせるモウリーンだったが…。

<感想>多忙なセレブのための衣装・宝飾品の買い出し代行業という珍妙な主人公像に加えて、降霊術やら殺人事件やら、ホラー映画まがいの取っ散らかった作品。冒頭には、怪奇現象の趣向があり、この監督にして怪談者とは珍しいと身を乗り出して見てしまった。

携帯を経由した謎のメッセージのやり取りなど、幽霊らしきものも登場、それに、亡くなった双子の兄の部屋で起こる心霊現象など、謎めいていてサイコスリラー的で、ゾクゾクさせられます。
だけど、見て行くうちに「エクソシスト」のようなホラーがただの道具立てとなって、生者と死者、自己と他者、その間で分裂し混乱する若い女性の精神状態を描いているようにも見えてきて、どうもそれが狙いのようで、ちょっとポランスキーの「反撥」を想起させるようだ。結果、場面場面の演出は凄く面白かったけど、考え過ぎて空転したようなモヤモヤ感があるのだ。
誰もいないキッチンで、ガラスコップが落ちて割れたりするのが何度も出て来るし、部屋の中で煙のような白いものが浮かび上がったりして、まるで悪魔憑きのような現象もあるのだから。モウリーンは、それが亡くなった

セレブの私生活に近いところで、仕事する若い娘の心の揺らぎを、スピリチュァルな視点で交えてサスペンスフルに描いているのがいい。危いほどに美しいクリステン・スチュワートの魅力を、監督のオリヴィエ・アサイヤスがとことん追求していくのだが、中盤では、彼女が禁じられた衣装をこっそりと試着して欲望を解放するシーンは、きわどいフェティシズムに溢れながらも、被写体への絶妙な距離感が保たれていて、上品なエロスを生んでいると思った。

鏡に映る自分の妖しいほどの肢体、キーラという女優のドレスを着て、それに、豪華なジュエリーなども、自分に似合っていると嬉しそうに身に着けるのだ。それから、急いで革ジャンのジーパン姿に戻り、バイクに乗って駅まで急ぐ。

そのキーラという女優は、もしかして「キーラ・ナイトレイ」かしらと想像してしまうほど、彼女に似合うドレスばかり選ぶ。それが、モデル・女優業のキーラには、ちょっとがっかりなノラ・フォン・ヴァルトシュテッテンが出演している。
クリステン・スチュワートが、思いがけずヌードも披露してくれた。小さな乳房に細身の身体に、綺麗なスパンコールのドレスを着る姿にうっとりして、本作でカンヌ国際映画祭の、監督賞をゲットしたそうですから。

ラストに、ドレスとジュエリーを届けにマンションに行くと、ベッドには真っ赤な血がべったりと、浴室にはそのキーラの死体が転がっていた。驚きすぐに警察に電話をするも、犯人はもしかして、キーラと付き合っていてフラれた男だろう。間違ってもモウリーンではないことは確かだ。
彼女にも恋人はいるのだが、遠く離れたアラビア半島の果てに棲んでいる。スカイプでしか繋がっていないが、彼の誘いで行ってみることにするのだ。だが、そこでもモウリーンは、兄の亡霊を見たりする。いつまでも兄の存在をぬぐい捨てることが出来ない彼女が、恋人と話すうちに少しづつ自分を取り戻していくようなそぶりを見せる。

女優に近づく監督のさじ加減ひとつで、カメラに自分をさらけ出す女優の度胸が洗練されていて、まさにこれが映画であると観た。監督がサスペンス要素を持ち込んだ理由は、彼女の苦しみや不安や、暴力的な感情を表現し、観客にそれを体感させるため。表層的ではなく、彼女が感じているものを、抽象的ではなく物理的に、ぐっと肉体的に感じてもらうために、ジャンルものの手法として使ったと言うのだから。
サスペンスものだけれども、クリステン・スチュワートの輝きを見たい方には絶対にお勧めの映画ですね。

2017年劇場鑑賞作品・・・146映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング/

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