『人生はビギナーズ』などのマイク・ミルズ監督が、自身の母親をテーマに撮ったヒューマンドラマ。1970年代末の南カリフォルニアを舞台に、3人の女性とのさまざまな経験を経て大人へと成長していく少年のひと夏を描く。思春期を迎えた息子を持つシングルマザーを『キッズ・オールライト』などのアネット・ベニングが演じるほか、『フランシス・ハ』などのグレタ・ガーウィグ、『SOMEWHERE』などのエル・ファニングらが共演。
あらすじ:1979年のカリフォルニア州サンタバーバラ、自由奔放なシングルマザーのドロシア(アネット・ベニング)は、15歳の息子ジェイミー(ルーカス・ジェイド・ズマン)の教育に頭を悩ませていた。そこで、ルームシェアしているパンクな写真家のアビー(グレタ・ガーウィグ)と、近所に暮らすジェイミーの幼なじみジュリー(エル・ファニング)に相談する。
<感想>前作の「人生はビギナーズ」では自分の父親をモデルにして物語を構築したマイク・ミルズ監督が、今度は自身の母親の想い出と自分の話であり、筋立てとしては如何にもこの監督らしいセラピー映画になっている。ですが、正直に言うと、CM的と呼ぶしかないスタイリッシュな画面作りがあまり興味が湧かないのだ。
何といっても、母親のアネット・ベニングが最高の出来で、ついつい彼女ばかりに目がいってしまう。彼女を囲んで同居している写真家のアビーに扮したグレタ・ガーウィグ、彼女は『フランシス・ハ』で有名になった女優さん。それに、「夜に生きる」で演技に芽生えた幼なじみジュリー役のエル・ファニング。
大統領がジミー・カーターで最後の年。翌年からは強いアメリカをスローガンに掲げたロナルド・レーガンが政権を握り、現在の格差社会が生まれる前兆が見え始める。この年は、現在に繋がる最初の年でもあり、パンクロックやニューウェーブが席巻した時代でもあった。
1970年代の後半、この母親は大恐慌時代の生き残りと、思春期の息子に言われているが、当時としては先進的なシングルマザーでもあるのだ。
主人公が55歳の働くシングルマザーのドロシア。15歳の息子ジェイミー(ルーカス・ジェイド・ズマン)と暮らしていた。抵当流れの物件を安く手に入れた屋敷は、二人で暮らすには広すぎなので、20代半ばの写真家のアビーと、元ヒッピーの便利屋ウィリアムが間借りしている。
40歳でジェイミーを生み、ほどなくして離婚。女手一つで育ててくれた母親を大事に思うものの、頑固すぎて気持ちがかみ合わなくて、ズレてしまうのだ。55歳のドロシアは更年期障害なのか、15歳の息子が反抗期ということもあり、昔のようには母親に接してくれない。それで、息子の将来を案じたドロシーは、2人の女性に自分の息子の助けになって欲しいと頼み込むんですね。
男の子だったら、同居人の男で便利屋ウィリアムがいるのに、どうして女性2人に任せるのだろう。そこが私には分かりませんでした。つまり、15歳なら女性に目覚めて、姉のような存在で年上のアビーに任せればOKではと、パンク・ロックで一緒に踊ったりクラブに連れて行ってくれるなど、大人の世界を覗かせてくれるから。
それとも同じ年頃といっても近所に住む2歳年上の、17歳のジュリーなら、遅かれ早かれセックスに興味を持っているころだし、相手には丁度いいと思っての事なのか。ところが毎晩のように息子の部屋に忍び込み、ですが、一緒に寝るだけでそれ以上は拒否。「セックスをすれば友情は終わる」と言われて悶々とする息子のジェイミー。
「ネオン・デーモン」でも新たな演技を見せてくれるエルちゃんだが、今回も17歳と実年齢に近い役ながら、こじらせ系の女の子を絶妙な感覚で演じきっている。ジェイミーとはセックスはダメと断っても、他の男とは寝ていて、妊娠したかもしれないと、検査器を買ってきて調べる二人。
もう一方のアビーは、子宮に異常があり検査の結果妊娠しない体にと。私には彼女たちの生き方に共感はできないが、それぞれ観客の女性には理解できる人もいるのではないかと。
監督はゲイをカミングアウトした父親と、その息子の物語を描いた「人生はビギナーズ」。本作では自身の母親を題材に「母と息子」のドラマを創造。深い愛情と自由な精神を持っていた母親の姿を、物語に投影しながら、迷いながらも成長していく息子の姿をリアルに描いており、共感と感動を誘います。ちなみに、アビーのモデルは、姉たちであり、ジュリーのモデルは複数のガールフレンドたちだとか。
母親を含め三世代を代表する3人の魅力的な、年上の女性が息子にほどこす男性教育が映画の主題となっているのも事実である。この時代にもかかわらず、男性がみなフェミニストで、マッチョな男が出てこないのも珍しいですよね。
ラストがいいですよね。あんなに息子を溺愛していたドロシーなのに、母親を卒業して若い頃にパイロットになりたかった夢を実現するべく、実業家と再婚して夢を叶えるのだ。それに、アビーも便利屋のウィリアムと恋仲になっていたこともよかった。
ナイーブでミニマムに見えたその世界観だったが、彼を取り巻く人々や、彼自身の身に起こった出来事は、ADHDや同性愛など、いわゆる世間のステレオタイプから外れており、必然的にマイノリティへの考えとなる。それは作品を重ねるごとに、描く対象を女性にフォーカスした本作では、彼女たちに向けた眼差しが、ジェンダーフリー的な女性観となって力強いメッセージを放っているといっていい。
2017年劇場鑑賞作品・・・132映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング/
あらすじ:1979年のカリフォルニア州サンタバーバラ、自由奔放なシングルマザーのドロシア(アネット・ベニング)は、15歳の息子ジェイミー(ルーカス・ジェイド・ズマン)の教育に頭を悩ませていた。そこで、ルームシェアしているパンクな写真家のアビー(グレタ・ガーウィグ)と、近所に暮らすジェイミーの幼なじみジュリー(エル・ファニング)に相談する。
<感想>前作の「人生はビギナーズ」では自分の父親をモデルにして物語を構築したマイク・ミルズ監督が、今度は自身の母親の想い出と自分の話であり、筋立てとしては如何にもこの監督らしいセラピー映画になっている。ですが、正直に言うと、CM的と呼ぶしかないスタイリッシュな画面作りがあまり興味が湧かないのだ。
何といっても、母親のアネット・ベニングが最高の出来で、ついつい彼女ばかりに目がいってしまう。彼女を囲んで同居している写真家のアビーに扮したグレタ・ガーウィグ、彼女は『フランシス・ハ』で有名になった女優さん。それに、「夜に生きる」で演技に芽生えた幼なじみジュリー役のエル・ファニング。
大統領がジミー・カーターで最後の年。翌年からは強いアメリカをスローガンに掲げたロナルド・レーガンが政権を握り、現在の格差社会が生まれる前兆が見え始める。この年は、現在に繋がる最初の年でもあり、パンクロックやニューウェーブが席巻した時代でもあった。
1970年代の後半、この母親は大恐慌時代の生き残りと、思春期の息子に言われているが、当時としては先進的なシングルマザーでもあるのだ。
主人公が55歳の働くシングルマザーのドロシア。15歳の息子ジェイミー(ルーカス・ジェイド・ズマン)と暮らしていた。抵当流れの物件を安く手に入れた屋敷は、二人で暮らすには広すぎなので、20代半ばの写真家のアビーと、元ヒッピーの便利屋ウィリアムが間借りしている。
40歳でジェイミーを生み、ほどなくして離婚。女手一つで育ててくれた母親を大事に思うものの、頑固すぎて気持ちがかみ合わなくて、ズレてしまうのだ。55歳のドロシアは更年期障害なのか、15歳の息子が反抗期ということもあり、昔のようには母親に接してくれない。それで、息子の将来を案じたドロシーは、2人の女性に自分の息子の助けになって欲しいと頼み込むんですね。
男の子だったら、同居人の男で便利屋ウィリアムがいるのに、どうして女性2人に任せるのだろう。そこが私には分かりませんでした。つまり、15歳なら女性に目覚めて、姉のような存在で年上のアビーに任せればOKではと、パンク・ロックで一緒に踊ったりクラブに連れて行ってくれるなど、大人の世界を覗かせてくれるから。
それとも同じ年頃といっても近所に住む2歳年上の、17歳のジュリーなら、遅かれ早かれセックスに興味を持っているころだし、相手には丁度いいと思っての事なのか。ところが毎晩のように息子の部屋に忍び込み、ですが、一緒に寝るだけでそれ以上は拒否。「セックスをすれば友情は終わる」と言われて悶々とする息子のジェイミー。
「ネオン・デーモン」でも新たな演技を見せてくれるエルちゃんだが、今回も17歳と実年齢に近い役ながら、こじらせ系の女の子を絶妙な感覚で演じきっている。ジェイミーとはセックスはダメと断っても、他の男とは寝ていて、妊娠したかもしれないと、検査器を買ってきて調べる二人。
もう一方のアビーは、子宮に異常があり検査の結果妊娠しない体にと。私には彼女たちの生き方に共感はできないが、それぞれ観客の女性には理解できる人もいるのではないかと。
監督はゲイをカミングアウトした父親と、その息子の物語を描いた「人生はビギナーズ」。本作では自身の母親を題材に「母と息子」のドラマを創造。深い愛情と自由な精神を持っていた母親の姿を、物語に投影しながら、迷いながらも成長していく息子の姿をリアルに描いており、共感と感動を誘います。ちなみに、アビーのモデルは、姉たちであり、ジュリーのモデルは複数のガールフレンドたちだとか。
母親を含め三世代を代表する3人の魅力的な、年上の女性が息子にほどこす男性教育が映画の主題となっているのも事実である。この時代にもかかわらず、男性がみなフェミニストで、マッチョな男が出てこないのも珍しいですよね。
ラストがいいですよね。あんなに息子を溺愛していたドロシーなのに、母親を卒業して若い頃にパイロットになりたかった夢を実現するべく、実業家と再婚して夢を叶えるのだ。それに、アビーも便利屋のウィリアムと恋仲になっていたこともよかった。
ナイーブでミニマムに見えたその世界観だったが、彼を取り巻く人々や、彼自身の身に起こった出来事は、ADHDや同性愛など、いわゆる世間のステレオタイプから外れており、必然的にマイノリティへの考えとなる。それは作品を重ねるごとに、描く対象を女性にフォーカスした本作では、彼女たちに向けた眼差しが、ジェンダーフリー的な女性観となって力強いメッセージを放っているといっていい。
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