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LION/ライオン ~25年目のただいま~★★★★・5

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『英国王のスピーチ』などのプロデューサー、イアン・カニングが製作に名を連ねた実録ドラマ。幼少時にインドで迷子になり、オーストラリアで育った青年が Google Earth を頼りに自分の家を捜す姿を追う。メガホンを取るのは、テレビシリーズや短編などを手掛けてきたガース・デイヴィス。『スラムドッグ$ミリオネア』などのデヴ・パテル、『ドラゴン・タトゥーの女』などのルーニー・マーラ、名女優のニコール・キッドマンらが顔をそろえる。

<感想>実話を基にした映画は数多く制作され、そんな「ありえない実話」の傑作映画といえば、アカデミー賞監督ダニー・ボイルが、手首を岩に挟まれた登山者の極限のサバイバルを描いた「127時間」を思い出すのだが、そんな実話の映画が毎年賞レースを賑わせているが、ここまで驚きに満ちた物語は、それほど多くはないかもしれない。何しろ主人公はインドの貧しい家庭に生まれた5歳のサルー。大好きな母親の為に手伝いに精を出す、健気な男の子だ。

幼いサルーに抜擢されたのは、数千人から発掘されたサニー・パワール。初演技とは思えない圧倒的な存在感に注目です。

青年期のサルーには、「スラムドッグ$ミリオネア」のデブ・パテルが演じているほか、彼の聡明な恋人を「キャロル」のルーニー・マーラが好演。

ある過去を抱えながら(夫婦で子供を持たないで、恵まれない子供たちを引き取って育てようと)運命に導かれるように養母となったスーを、自身も養子を育てているニコール・キッドマンが演じて、養父にはデヴィッド・ウェンハムが扮している。
兄の仕事について行ったある日のこと、貨物列車の石炭を盗み、それを持って街へ行きビニール袋に入った牛乳2つと交換。それを家へ持っていき、母親に渡しての食事だ。小さな妹もいる。そんな貧しい家庭の子共はインド、バングラデッシュ、アフリカなど世界中にいるのだ。

そのインドの5歳の男の子サルーの物語。兄に置いて行かれて回想列車に潜り込み寝込んでしまう。知らぬ間に大都市のコルカタへとたどり着き、迷子になってしまう。うろうろしていると、路上生活をしているガード下に、段ボールに包まっている孤児たちと出会う。

そこへ福祉施設の人たちが来て、子供たちを車に乗せて孤児院へと入れられてしまう。施設に入ったサルーは、夜な夜な職員の男が大きい少年を連れて何処かへ行く、つまり小児虐待です。大人が子供を相手に自分の欲求を満たすために、夜な夜な性の奴隷として連れて行くわけ。その他にも、里子に向かない大きい子供とかは、臓器売買で殺されてしまうのだろう。

サルーは、まだ幼いために里子として、オーストラリアのタスマニアの元へと引き取られる。ラッキーボーイであるサルー。優しい養父母のもとで何不自由なく暮らしながらも、そこへ施設でいつも壁に頭を打ち付けていた問題児の兄も引き取られる。

それからの養父母は、その精神的にダメージを受けている兄に振り回されながらも、サルーは大学へ入りそして、その毎日で埋められない喪失感を抱え初め、わずかに残る記憶を頼りにGoogle Earth を駆使して生家を探し始める。
冒頭でのシークエンスが圧巻であり、幼いサルーが眠っている間に、列車で遠くまで運ばれ、言葉も分からないまま知らない人ばかりの街で、一人彷徨う長いシークエンスでは、セリフもなく雑然としている背景音はあるものの演出としてはサイレント映画のよう。不安と恐怖と痛いけなさと同時に、発奮する勇敢さを体の動き全体と、表情で見せきった子役の力が凄いと感じた。

あまりにも愛らしい幼いサルーのインドでのサバイバルと、母と兄が残っているであろう故郷を思うあまり、葛藤を抱えて悩み苦しむ現在の姿。その両方を行きつ戻りつしながら、ルーツ探しの旅、彼のアイデンティティ探究をダイナミックに、かつ繊細に描写しているのが良かった。
時には、取り憑かれたようになりながらも欠けたピースを求めて、旅立った主人公が最後に見つけたもの、そしてタイトルにもある“ライオン”の意味が分かるラストには感動をより大きなものにしている。タイトルの”ライオン”とは、サルーが自分の名前を忘れてしまっていたことが、ヒントです。

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